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No. 00016
DATE: 2000/01/04 04:52:14
NAME: レオン、エーベン、スカイアー、リヴァース
SUBJECT: 地底の闇に息づく恐怖【下水道調査二日目(1)】
下水道探査の二日目。
暗闇のなか、ピチョピチョと何処かで水の滴る音が、鮮やかに全員の耳に届く。
四人は、迷宮の入り口である、脇に疎水が流れるトンネルを再びくぐっていた。
レオン、エーベン、リヴァース、スカイアー。事情があって、二日目の探索を共にすることになった面々である。
「は……お懐かしい匂いだ」眉を寄せ、精霊使いのリヴァースはそう皮肉った。
「仕方あるまい。一晩か二晩で、馴れるものではなかろう」
渋面を作りながらも、黙々と歩を進めるのは、これは傭兵のスカイアー。
「まぁ、じきに麻痺してくる。昨日と同じく」
「はは、早く下水を抜けて地下の街に入ろうぜ。少しはましになるから」
戦士のレオンが、前列から振り向いて歯を見せて笑った。
歩き続ける彼らの頭上に、リヴァースの召喚した光の精霊、ウィル・オー・ウィスプが輝く尾を引きながら、悠々と飛んでおり、周囲を明るく照らしている。一行が進む端から、光球の光は前方の、遙かに続く闇をかき分けていく。
一日目の探査は役に立っていた。書き留めた地図に沿って、一行は、迷うことなく闇の奥へ進んでいく。
冷たい湿りを含んだ空気が臭い匂いを混ぜこんで、一行の肌にまつわりついたが、リヴァースやスカイアーと比べ、前の二人はまだ、不快そうな色が少なかった。
「でも信じられますか、こんな地下に人が住んでいるんですよ」
レオンの隣を歩くラーダ神官、エーベンが口を開く。
「噂どおり、古代都市の廃墟が地中に没しているなんて。このオランの隠された秘密を見聞する機会に恵まれ、私は本当に幸いでしたよぉ」
まだそれを眼にしていない二人に話すのが楽しいのだろう、両手を組み合わせ、感動をその瞳で現しながらエーベンは語る。
「ああ……むしろこれは俺達による、歴史的発見?」
「お前ら二人がいかに大発見をしたとしても、フェリアス師に報告もできず、金にならないんだろう」
リヴァースがジトッとした視線を送る。
レオンとエーベンは、顔を見合わせて苦笑した。
彼らは一日目の探索で、思いがけなく地下の都市を発見し、そこに住んでいる住民と接触した。 そして、都市の集落を悩ます怪生命体の退治と引き替えに、暗黒神官リーフの根城を教えて貰うという、約束をかわしていた。レオンとエーベンはその仕事をやり遂げるには自分たちだけでは困難と判断して、別組のリヴァースとスカイアーに協力を求めたのだ。
これでうまくいけば目指す敵への道が開けることになる。
だが、もうひとつの目的である学院の下水調査について、住民たちは、自分たちの住処を調べられ、地図に載せられることを拒んだ。レオン達が都市のことを報告に持ち帰らないことも、取り交わした話の上に含まれた。
「地図に空白地帯が出来ては、つじつま合わせが面倒臭いぞ。住民に黙って、こっそりやればいい気がする」
「いや〜それは、やっぱり、仁義にもとるじゃないか。これは犬の皮をかぶった爺さんから、よくよくにって言われてるんだ」
レオンは右肩を上げ、手をかるく振って否定する。
「犬皮を被った老人?」
リヴァースは、顎に手をやって、何か考え込むような様子を見せたが、特に聞き返す事なくそのまま黙りこんだ。スカイアーが一歩進み出て、
「依頼主は、事情を話して判らぬ人物でもあるまい。その住民の意向も、我々が得た成果と合わせて、彼に報せればいい。それより今は、敵である怪物の強さの話をしたい」
話題をそこで切ってみせた。
「同感です。私からフェリアス師にはよく言い含めておきますよ」
エーベンがそう受けた。
地下の集落を恐怖に陥れている怪物の正体は、エーベンの知識を持ってしても、完全に明白にすることは出来なかった。
住民の語るところでは、ひとを殺して身体に取り憑き、その人物に成り代わるもの、という表現しかなされなかった。首を失った腐乱死体が断続的に集落内で発見されており、また高速で移動する人の生首のようなものを見た、という証言がちらほらと見られるようになって怪物の存在が確信されるようになってきたらしい。
そして、殺された者の知り合いが口をそろえて、最近その者の様子がおかしく、身体を病んだような風であった事を語っている。
エーベンは前日、そういった話を聞いて思考を巡らせていた。
怪物は何を目的として乗っ取り行為をするのか。その行為が、個体の生存に必要な習性である可能性は、怪物が棲む地下の状況から見て考えにくい。又、人の中に隠れて快適に暮らすために身体を奪う、というものでもないだろう。乗っ取ったとしても、その身体はほどなく腐り始めるらしく、長時間を潜伏する事は出来ないだろうから。
しかし人の生首の怪物というのは、あまりにも、人を殺してそれに成り代わるということのために特化しすぎた姿といえる。カストゥール時代の魔術師の所業を知るエーベンは、過去、彼らによって殺人の嗜好性を植え付けられ、創り出された存在なのではないか、という方向に想像が働いた。彼らは自らの意図する様々な、自分勝手の目的のために、不浄な生命をいくつも産み落としているのだ。 露骨に多くの人間、蛮族を殺すための存在、というものまでも、創られていた可能性はある。彼らの為した業が暗黒の神もかくや、というごとくに狂気を孕んでいたこと、いまの学院の中では後世までの反省事であり、教訓にされているという。
エーベンは、昨日遅くまで神殿付きの図書館で、魔法生物に関する文献をあさっていた。だが、一日では該当する箇所を見つける事が、ついに出来なかった。
「どれほどの力を持っているのかなど、一切は謎で」
エーベンは困りましたよという風に両手を広げ、肩をすくめて見せる。
「お前な……」
「おそらく、高い知性はあるでしょう。それを人間の身体を乗っ取る事に注いでいるような、強い殺人衝動のある、とても危険な怪物です」
「そんな事は最初の説明で判る……」
リヴァースに指摘されてエーベンはいじけた。
「油断は出来んな」
「まあまあ。人垣に隠れてこそこそ襲って来るような奴、弱いに決まってるよ」
皆の視線を受けて、レオンは明るく続ける。
「要は化け物を見分けられるかどうか、なんだから」
「おめでたいなー、お前は。頭の中、レプラコーンが踊ってるのが見えるようだ?」
「ああ、だからリヴァース、そういうのがわかるんだろ? これは尚更、心配無用だ」
彼は悪びれずに言い放ち、精霊使いは、見習いたいよ、と独りごちた。
地上の時間になおせば、鐘ひとつ分ほどの間だったろう、一行は程なくして、目指す地底の街に到着した。
下水道から出たところが、どこか古代の街の家屋の中だった。その家を出ると、廃墟となった町並みの一部が目の前に続いて、迷宮のような様相を呈していた。
ウイスプの光に依らずと、そこには薄明があった。仰ぎ見れば、すぐ上には岩盤があるのみであったが、その天井の端々に溝穴が開けられ、そこから光が導き込まれている。恐らく地上近くから、何枚も鏡を使ってこの地下まで届かせているのであろう。
「この先にある建物の中は、広々としているぜ」
言って、勝手知ったるようにレオン・エーベンは道案内をしていく。
地元の住民が「大神殿」と呼ぶ古代の伽藍の中、そこに住民の代表がいるのだ。
「お前か」
交渉役として出てきた、薄汚れた風体の犬の頭皮を被った老人を見て、リヴァースは細い眉を寄せながら呟いた。
「え、知り合いなのか、リヴァース?」
犬の頭の後ろを掻きながら、犬頭巾という名の老人は言った。
「こいつぁ……へっへ。旦那、奇縁ですねぇ」
かつて、地上の乞食街で犬頭巾が情報屋として活動していた時、進んで情報を買っていたのがリヴァースだった。591年の春から夏にかけて起こった、麻薬ペネロペを巡る事件。その、情報戦のときに交渉をもったのを最後に、犬頭巾はリヴァースの前からも姿を眩ましていたのだが……。
「なんでこんな所にいる」
とは口に出したが、地上で悪辣を重ねたこの乞食がさらに堕ちゆく先が、この薄暗い地下の集落というのは、如何にも相応しいものに思えて、得心する所はあった。
「へ、へへ。何ちょっとね。穴に入りたいと思うことがあったんでさぁ」
地底の岩壁を分けて存在する建物、その内部がそのまま人々の寄り合う空間に使われていた。採光をよくするためだろう、油のしみこんだ紙が天窓に貼られている。 「大神殿」「礼拝堂」と呼ばれるここは、天井も高く、収容できる人数も多い。いま、リヴァース達の周りには犬頭巾だけでなく、ぼろ布を纏った地下の住民たちが十人ほど、輪になり、座って居る。殆どの者が黙っていた。一行の耳には、彼らの重々しい息づかいが届いてくる。
犬頭巾とリヴァースのやりとりを眺めているレオン達の袖を引くものがあった。レオンが振り向くと、前日、彼とエーベンが怪物の手から助けてやった姉妹の、姉の方だ。
「よう!」
レオンが元気よく声を掛け、娘は微笑みを返す。その顔は煤けているが、笑うと本来の魅力が咲いた。
「お話が終わった後、食事を差し上げたいのですが」
彼女はそう共通語で言った。地下の国の住民も、その昔はオランの街に住んでいた人々である、おおもとの言葉は同じだ。
「飯だって? 嬉しいなあ、腹が減っていたところだ」
「ああ、折角の、彼らからの心づくしだ。まず受けよう、そうした方が彼らも安心する」
「え、ええ。頂きましょう」
エーベンがにわかに表情を陰らせたのに気づいたレオンは、
「おおいどうした? 腹でも痛いのか?」
「いえ、いえ。こちらの皆さんの食べているものって……?」
眼をしばたたかせ、苦笑して見せる。
「おいおい、神官がそんな事気にしてちゃ駄目じゃないか。まぁ、なんでもこいさ♪」
そのとき、スカイアーがゆっくりと腰を上げた。
「……まだリヴァースがあの老人と何か、話している様だから、私は少しの間、地下の街を見回ってくる。なんだ、食欲も回復させておかねばならんからな」
レオンはおう、と首肯を返したが、また、真剣な顔で彼を見つめた。
「スカイアー。……迷子になるなよ〜」
「はは、ならんよ。すぐ戻る」
出ていきかけて、スカイアーはふと背後をかえりみた。何者かの粘っこい視線を感じた様な気がしたのだ。振り返ると、確かに大勢の地下の民がこちらを見ている。彼は内心、腐に落ちないものを感じながらも、堂を出る横穴をくぐった。
久しぶりに再会したものの、リヴァースが犬頭巾に対して個人的に話す事は殆ど無いのだった。老人がこの場所まで至った経緯を詳しく聞くのも、躊躇われる。
怪物退治の依頼に関する詳細の話を済ましてからリヴァースは訊いた。
「で、どうだ。ここは居心地がいいか?」
犬頭巾はにやりと、口元に卑屈な笑みを浮かべて黙った。
が、やがて言葉を喋り始めた。
「馴染めませんねぇ、どうしても。この中にいても肌がざわざわするんで……。やはりアタシは地上の人間、そこで七十年も過ごしてきたんですから……、光も、新鮮な空気も恋しいし、地上の町並みも懐かしいんです」
へへヘ……と犬頭巾は、今の己の境遇を自分で嘲っている様だった。
「待遇はいいんですよ。このひとたちはね、初めて会ったアタシを、「神祇官殿」といって讃えて下さったんです」
それからは声をひそめて、彼は続ける。
「……この街にも信仰があるんですが、その対象がケダモノの力を取り入れた人間なんでさぁ。モグラやら、鰐やら、そういう獣の強靱な生命力を取り入れた獣人を、王として神として、拝んでいるんで。なんでも地上じゃライカンスロープ、って呼ばれる奴ですか。あれがここじゃ崇められる存在なんですよ。それで私ぁ、こんな覆面を被って現れたもんですから、なんだか気に入られちゃいましてね。また、それに」
彼は自分の、まさしく犬か、兎の物の様に細くなった右脚をぽんと叩いた。
「このアタシの足萎え……ここじゃ、こういう生まれつきのハンデを背負った人間が、周りの畏敬を受けるんですよ。これはまさしく内なる獣性が発露したためだとか、いってね。それでご立派な獣人間さまを祭る儀式に関わる、聖職をわりふって頂けたってわけで」
「こういう、いびつな感覚、アタシには理解できねぇ……まぁそんなわけで、まだ全然、慣れられないって事ですよ」
リヴァースは黙って腕を組んで、聞いていた。今日食べる飯が得られるなら、どんな場所に居るのも気にかけないだろうと思っていたこの男が、今そういう感慨を抱いているとは少なからず意外だった。
スカイアーは礼拝堂を離れ、薄暗い地底の道を歩いていた。
かつて、街の中心を走る大通りの道であったようだ。石が脇にどけられて整備され、また可能な限り広く、道幅が取られていた。
埋もれた街の一角を人の住めるように機能させている、地下の吹き抜けの空間がどの辺りまで続いているのか、確かめてみるつもりでいる。
道すがら、何人もの薄汚れた風体の地下の住民を見かけたが、皆、遠巻きに奇異の視線を送って来ていた。
「ふう、やはり我々は部外者だな。長居は、ためになるまい」
鷹揚に歩を進めながらそう呟いた。住民の方に視線をやらないように前を向いている。
彼のはるか後ろを、ぎこちない足取りで歩く人影があった。スカイアーとの距離はどんどん離れていく。ふとそれは立ち止まり、すぐ横の斜めに倒壊している建物の中に消えた。
段々と天井が低くなってきている。建物の残骸にも挟まれて、洞窟を歩くような、動物の巣穴を行くような思いがする。また、これまで道が何本にも分かれており、スカイアーは全て左の道を選択することにして、迷わないように気をつけた。
ほどなくして、人通りも絶え、道が切れた所が、岩壁にふさがれているのが見えてきた。
礼拝堂から歩いて小半時ほど、ここが終点らしい。
スカイアーが脚を止め、振り返った、その瞬間だった。
「何っ!!」
突然、びしゅううう、と天井から伸びてきた、太い粘液質の触手が、彼の胴体を左腕と一緒に巻き取り、それが次の瞬間には、肺の中の空気をすべて絞り出さないばかりに締め上げて来た。
「うぐっ……!」
急激な痛みに、背中の大剣へ手を伸ばそうとしたまま、固まってしまう。
天井をにらむと、そこには、綺麗に撫でつけた黒髪、切れ長の瞳の、無表情な若者の生首が張り付いている。
間違いなく、件の怪物であった。
こう早く襲ってくるとは思わなかった。冷静になれ、とスカイアーは心で己に命じる。
だが、その生首がぱかりと口を開き、その赤黒い空間で何事か言葉を紡ぐ……そう思った瞬間に、彼の頭を不快な波が襲い、その視界がうばたまの暗黒に染まった。
「む……眼が!!」
魔法だと察した。視覚を奪われてしまったのだ。
先手を取られた。この上は、みだりに動かず、勝機をうかがうしかあるまい、とスカイアーは考えを巡らせた。
間をおかず、 次の衝撃が走る。
その瞬間、しまった、とスカイアーは思った。
暗とした深閑さが両耳に広がる。聴覚まで奪われた……!
そして相手の魔手による、先ほどより強い締め付けがスカイアーの身体を襲った。
闇の中にあってスカイアーは思案した。相手がどう出るか。触手によって強い締め付けを何度も繰り返した。常人なら全身の骨が砕けるほどの力で。
いま、獲物の抵抗が無くなった事にやつは満足しているだろう。
すでに瀕死であるように見せかけている。もちろん、かなり体力を失ったが、まだ抵抗できるだけの力は残していた。だらりと下げた右腕は未だ自由が効き、、背中に吊った大剣「斬鉄・改」を腕一本で引き抜く事はできる。そして敵の触手はその剣ごと、自分の身体を巻き取っているので、抜刀ができればそのぶんだけ、締められた縄もゆるむ。そうすると身体のさばきも自由になり、一撃で相手を倒すだけの必殺の力を剣に乗せる事が可能になる。
だがもとより、只の一撃で始末をつけねば、暗闇の中にいる今の自分に勝機は無いだろう。
レオンとエーベンの話を思い出していた。これから奴は身体を乗っ取りに来るだろう。おそらくはこれ以上身体を痛めつけず、そのまま、獲物の首を食らいに来る。
敵の位置を把握し、自分との距離を測る。すぐ側まで敵が来た、その時が勝負だ。
スカイアーは気息を整えながら、機会を待った。
効かない二つの感覚に代わって、全身を眼にし、相手の所在を探ろうとする。空気の動き、相手の気配の動きを肌で感じ取ろうとする。達人の業であった。
(ふふ、初めて挑戦する様な事だが)うまくやれれば拾い物だな、スカイアーは内心で思った。
「首」は、ニマァ、と口を裂けさせて笑った。自分の首の下から伸びる触手はすでに相手の力を奪い尽くしている。と感じ、『それ』はするすると太い触手を畳みこんでいった。
天井から離れ、宙を浮遊する様にして、下のスカイアーの所まで滑っていく。
その身体をがっちりと掴みこんでいた。
やがて、若者の赤い唇の周りに、その口とは別な亀裂が走って、巨大芋虫のそれのように、おぞましい真実の口が姿を現した。それは収縮し、ぎざぎざの無数の牙を覗かせている。なま暖かい息がしゅうしゅうと洩れ、それがかかる息まで相手に近づく。
「くぱああぁぁぁ……」
いま、化け物が獲物の首を囓り取らんとしたとき、スカイアーの手が動いた。抜刀と同時に身体を捻る。気合いを発する。
刹那のうちに怪物の頭に赤い筋が走り、間をおいて、血をしぶかせながら石榴の様に割れた。
電光石火の早業であった。
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!」
怪物は絶叫を上げると、その場を飛び離れ、再び天井に張り付いた。頭頂から鼻の下にかけて、まっぷたつに割られながら、なお怪物は生きている。スカイアーは舌打ちした。
地に片膝をついた彼は、失われた感覚が戻って来ているのを感じ、薄目を明けて、上にいる敵をにらみつけた。怪物は、来た道を滑る様に逃げていく。
疲れが湧いて出るのを感じながら、スカイアーは身を起こした。
「……追わねばならんな。舌のみで唱えた先ほどのあれは、暗黒魔法か……。傷を治されては厄介だ」
仲間に話すべき事を頭の中でまとめながら、先ほどの一撃の事を考えてみる。
「まあ、あれほど食欲を滾らせて近づいて来られれば、耳目に不自由があったとて、狙いをつけるのに訳はない」
自然に苦笑いが洩れた。
(続く)
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