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No. 00020
DATE: 2000/01/08 01:32:39
NAME: アレク
SUBJECT: あたたかい雨
ランスロットの話
覚えてる? 私があんた達と初めて会ったときのこと。
そうだよ、今くらいの時期だったよね? あれは、確かプリシスのシウダッだった。
私がどじ踏んで人質を逃がしちゃってさ、その上人質に服をはぎ取られて、下着姿のまま表に飛び出したときに二人と会ったんだよ。しかも、あのとき人が寒くて凍えてるのにナットとアレクは思いっきり笑ってくれたよね・・・。
あんた達は、同じ隊の人間でもない奴に貸す服を持ってるほどお人好しじゃないもんでね、なんて言って吹っ掛けてくれたっけ。
しかも、服の代わりにくれたのは革袋の火酒だわ、やっと捕まえた人質は奪って逃げるわ・・・やってくれたよねぇ。え? 人質のことを話したのが悪い? あのねぇ、・・・いや、いい。あんた達なんかに話した私が馬鹿だった。
まあ、確かに冬の傭兵の懐なんて、氷結海よりお寒いけどさ・・・あんたたちもよく「紅の団」に喧嘩売るようなことできたよね〜。
なんだとぉ・・・悪かったわね、どうせ私は「紅の鎧」から見たらへっぽこよ!
ふぅ・・・ねえ、アレク。ナットは本当にこの街にいるのかな?
確かにソニーからナットがオランにいるかもしれないって聞いたけど、もしかしたら勘違いなのかも知れないよね。
だってアレク言ったよね? プリシスで別れるときにナットには、オランに行くって伝えたって・・・。なのに向こうから探している気配がないなんてさ・・・おかしいよ。ナットなら、ナットが本当にいるなら会いに来るはずだよ。
てっ! 痛った〜・・・叩くことないじゃない。
そりゃぁ、言ってもしょうがないって事くらい解っているけれど・・・でも・・・。
痛い痛い! あ〜、解ったってば! 私が生き残ったくらいなんだからナットが死ぬはずないって!
もぉ・・・乱暴なんだから。玉の肌に傷が付いたらどうしてくれるのよ。まったく。
ソニーの話
ナットか・・・。
最後に別れたとき、商人と一緒だったな。ああ、そうだろうオランに行くと言っていたからな。護衛をしながらだったんだろうな。
商人か? 確か、染料を扱っているとか言っていたか・・・。
アレク、お前はこの街に残るのか?
そうか、俺はスローン隊長の居るロマールに行く。
ああ、この生き方しか俺には出来ないからな。
戦場を離れてつくづく感じた、平穏な暮らしなんてモノには反吐が出る。
お前だってそんなモノを望んでいる訳じゃないんだろう?
商人の話
ああ、あの男かい。
私も少しばかり気になっていたんだよ。なにしろ、ちょっとの間とはいえ、一緒に旅をした相手だったからねぇ。
そうそう、あの男とは酒場で飲みながら話しているうちに、これからオランまで戻るんだと言ったら、同行させて欲しいって言いだしてね。まあ、何かと物騒なご時世だろう? 見たところ剣を使えそうだし、何よりも悪い奴とも思もえんかったから、まあ、いいやってね。
そうだよ、それで一緒にオランに行くことになったんだがね・・・。最初のうちはよかったんだ。旅も無事だったし、あの男は話を聞くのが上手でね、私の商売の苦労話も嫌な顔をせず聞いてくれてね。大抵は私が話すばかりで向こうは聞き手に回ることが多かったんだが、珍しく自分のことを話してくれた時があったな、そうそうオランに会いたい人が居るとか言っていったかな・・・たしか名前は・・・・・・。
おっとすまないね、話がそれたかな?
まあ、そんな訳で快適な道中だったんだが・・・。
ちょうど、旅の半分まで来た辺りの頃からあの男の中で何かかがおかしくなったんだよ。
はじめの内はただぼんやりして、名前を呼んでも上の空だった。こっちも何か思いに耽っているのかねって思っていたんだが、それが今度は物忘れをするようになったんだよ。最初は冗談を言っているのかと思っていたら違うんだ。そう、つい一刻ほど前の事をぽろりと忘れてるんだよ。
日に日にぼんやりする時間が多くなっていってね・・・。
前に知っている奴が事故で頭を打って、似たようなかんじになったことがあったんで聞いてみたんだ、案の定プリシスで傭兵をしているときに頭を強打したとか言っていたよ。
そんな状態で旅をして、オランに着く頃には一日のほとんどをぼんやりするようになっていたんだよ。
そりゃあ、私も心配だったがどこまでも面倒を見てやるわけにもいかないだろう? 金に余裕があるなら神殿か診療所に行くように言って、この街に知り合いが居るならそこを頼るように言って別れたんだがねえ・・・。
ラスの話
お、いたいた。
ホントお前って奴は、帰ってくるなり面倒を掛ける奴だな。まったく、ゆっくりする暇もありゃしねぇ。おっと、オヤジ、こっちにエールくれるか?
さてと、お前の探している男、ナットとか言った・・・確か傭兵をしていた頃の仲間だったんだろ?
ああ、調べてきたさ。
まあ、待てよ。それよりお前の剣を見せてもらえるか? ああ、わりぃな。
・・・やっぱりな。
お前さ、この短剣見覚えねぇか? ふぅん、別れたときにナットに渡した・・・か。
実はな、この短剣は偶然見つけたんだ。スラムの乞食がギルドに持ち込んだものなんだけど、どっかで見たことがあるような気がしてさ・・・そう、お前の剣と同じデザインなんだよ。
ああ、もちろん聞いてきたぜ。そいつの話だと、スラムに転がっていた男から取ってきた物らしいな。見慣れない顔で、最初のうちは物取りが近づくと抵抗していたらしいが、寄って集って殴りつけて大人しくさせて持ち物を奪ったらしいな、けど大した物も持っていなくて手に入れたのはこの短剣だけだそうだ。
おっと、待てよ! スラムっていっても広いんだぞ。闇雲に行ったところで見つかるはずねぇだろう・・・。ったく、少しは考えてから行動しろよ。
分かってるって、俺も一緒に行ってやるよ。その乞食に案内させるようにしてあるんだ。ほら、行くんだろ?
アレク、今回使った費用は後で請求してやる。
それと、感謝の気持ちは目に見える形でしてくれよ。
オウティスの話
あの〜・・・アレク、この方誰なんでしょうか?
あ、いえ・・・あの〜もちろんここは貴女の部屋ですから誰が来ても構わないんですけれど・・・。でも、ちょっと知りたいかな〜なんて・・・。
え? はぁ、昔の仲間の方ですか・・・。
でも、あの・・・どこか悪いんですか? 人のことは言えないんですけど随分痩せてるし、お顔の色が優れませんね、それになんだか目が虚ろのような・・・?
ええ、もちろんいいですよ。
いいえ! 私はここに置いてもらっているだけで満足なんですから、看病くらいお手伝いします!
アレク、何でも自分で抱え込んでいて事態はよくならないんじゃないでしょうか? 私はアレクに助けてもらいました、私にもあなたを助けさせて下さい。だから、任せてはくれませんか。
あの〜、一つだけ聞いてもいいですか? ・・・感染ったりはしない病気・・・ですよね?
アレクの話
ナット、具合はどう?
また、食事を残したんだってね? ティスが心配するから無理にでも食べなきゃ駄目だよ。傭兵は体力が資本だ、そう言ったのは、ナットだよ?
お金が出来たら神殿に連れていけるから、そしたらすぐによくなるから。ごめんね、もう少し待ってて。
え? 私は大丈夫だよ。だから、気にしないでいいんだって。
あ、雨が降ってきたんだ・・・。まだ、雪になるほどは寒くないんだね。
そう言えば、プリシスでは冬は辛かったよね。稼ぐ当てもないし、寒さをしのぐ家もないし・・・それでも、今より気が楽だったのはなんでかな? 変だよね?
そうだ、いろんな事にけりがついたら、ロマールに行くのも悪くないかもね。あそこにはスローン隊長、ソニー、たった二人だけど隊の生き残りがいるし。きっとランスもついてくるとおもうよ。
そうだ、ランスって言えばさ、覚えてる? ナットの・・・・・・。
ナット? 寝ちゃったの・・・?
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