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No. 00027
DATE: 2000/01/14 02:29:27
NAME: カイ
SUBJECT: 名もなき村での物語(3)〜カイside
棍棒が振り回される。戦士の訓練は積んでないみたいで、かわすのは難しいことじゃない。
でも、相手は間違いなくわたしを殺す気でかかってきている。
…でも、故郷の人を殺すなんて…でも、このままだったら…?
考えるまでもない。永遠にかわすことなんて出来ないんだから…
…死にたくない!
そう思った瞬間には身体が動いていた。相手の振り回す棍棒をかいくぐって槍を突き出す。確かな手応え。
「ぐっ…うぅ……」
仰向けに倒れていく男。倒れる途中、槍が抜ける。吹き出した相手の血が自分にかかる。
「…なんで…また…こんなことに…」
ぽつり、とつぶやく。
しばらく、呆然とする。また、同じ事を繰り返してしまった。こんなことをするために帰ったんじゃないのに…
「……カイっ!?」
うつむいたわたしに突然、自分の名前が呼ばれる。
…だれ?こんなわたしを呼ぶのは……
ゆっくりと、顔をあげる。からだがびくりと震える。そこにいたのは……ラス。
わたしの一番大切な人。…一番、故郷でのわたし…自分の故郷を見られたくなかった人…エレミアでわたしの帰りを待ってるんじゃなかったの?なにがなんだかわからなかった。
…だから、わたしは自分でも気づかないうちにラスから逃げ出していた…
ふと我に帰ったとき、わたしは自分の家の焼け跡で座っていた。
ここは、わたしが母さんを殺したところ。…全てがはじまったところ。
母さんには、愛されていなかったわけじゃなかった…と思う。…まわりの村人達に比べれば、よっぽど暖かかったから。自分の境遇を考えれば、捨てられたって文句は言えなかったんだから…
「おまえなんか生まなければよかった」
不機嫌なときの母さんの口癖。…でも、機嫌のいいときは買い物につれていってくれもした。
そんな母さんを、わたしは自分の身を守るためとはいえ、殺してしまった。
そして、ヒース。母さん以外の村人で、わたしに唯一優しかった。彼といた時のことは今でも昨日のことのように思い出せる。あれは…わたしが11の時だった。
村が一望できる、丘の上。
「…なぁ、カイ。こんな曲、知ってるか?」
そう言いいながら、ヒースは手元に置いてあったリュートを奏で、歌を歌い始める。
優しい曲…そう、思った。
「わたしは…知りませんけど…」
「だから、敬語使わなくていいって」
苦笑しながら、ヒースがわたしを注意する。
「あ、ごめん…」
「この曲…『盗めない宝石』って言って、この村に伝わってる歌らしいんだ。一体、どうして伝わってるのか、とかはわかんないんだけどさ」
「…でも、いい曲だね…」
「おまえも、弾いてみるか?」
「でも…わたし、楽器なんてやったことないし…楽器も持ってないし…」
「そっか…じゃ、これ使えよ。俺が使ってた楽器なんだけどさ。今はこのリュート使ってるからな。それ、やるよ」
「…え…?いいの…? ……ありがとう……」
一瞬、遠慮しようとも思ったけど、それよりも、今の歌を演奏できるようになりたかった。
ヒースから、木製のフルートを受け取る。ためしにちょっと吹いてみる。…変な音がした。
『いきなりはやっぱり無理』
2人の声が、語尾以外うまい具合に重なる。その後、2人で笑いあう。
………わたしの足は、自然と丘の上に向かっていた。そうしながら、過去を振り返る。多分、もう戻ってくることはない自分の村。だから、もう一度目に焼き付けておきたかったのかもしれない。
やがて、丘の上にたどり着く。丘の上のくさむらにすわり、また、昔に思いをはせる。冒険者になろうとしたときのことを…
「…カイ、冒険者になるんだって言ってたよな?」
わたしが15歳になってすぐ。
「うん…そうするつもりなんだけど…」
「じゃあさ。俺いるパーティーに来ないか?」
ヒースはわたしが13のときくらいから、冒険者になっていた。それでも、こうしてちょくちょく村に戻ってきてくれていた。
「いいの…?」
「あぁ、ちょうど精霊使いがいなくなっちゃっててさ」
「それじゃ……よろしくね、ヒース…」
わたしは、にっこりと笑いながら言う。
「ああ。こっちこそ、よろしく」
なんだか、すごくうれしそうな顔でヒースがうなずく。
それから、一年くらいが過ぎたとき。
「オランに行くんだって?」
「…うん。冒険者の国って呼ばれてるんでしょ…? そこに行けば…」
「昔、おまえを助けてくれた人が見つかるかもしれないって?」
ヒースが、わたしの言葉をつなぐ。わたしは、うなずきながら、
「もしかしたら、なんだけどね…」
「ふぅ…ま、こんな村にいるよりかはマシかもしれないよな。…どっちみち、いつかは出てくつもりだったんだろ?」
ヒースの言葉に、わたしは無言でうなずく。
「俺はまだパーティーを抜けられないけどさ、俺のかわりが見つかったら、俺もオランに行こうと思ってたから。向こうで会おうぜ」
ヒースが差し出した手をしっかりと握る。……そして、3日後の16歳の誕生日。わたしは母さんを殺して、村を逃げ出した…
背中の荷物から一振りの短剣を取り出す。柄に血がべっとりとこびりついている。ヒースの短剣。ヒースは、オランで命を落とした。わたしが巻き込まれたある事件のせいで…。ほとんど、わたしが殺したようなものだ。
ヒースの短剣を丘の上に突き刺す。そして、草を簡単に編んで作った輪を短剣に通す。本当は、花輪が作れればよかったんだけど、今の季節は冬。まだ、枯れていない草を見つけるので精一杯だったのだ。
これで、簡単なお墓の完成。これで、ここに来た目的は終わり。もう、これで帰ってもいいんだけど…ラスがここに来ている以上、勝手に帰るわけにはいかなかった。…でも、どこに?丘を下りながら、考える。
この村のことを聞こうと思ったら…?そう考えて、わたしは村長さんの家に向かった……
丘の上から、村長さんの家まではそんなに遠くもない。玄関の前でノックしようとする。すると、中から話し声が聞こえてくる。息を潜めて中の会話を聞こうとする。少し大きめの声で話しているので注意していれば、声は簡単に聞ける。
「あの娘が生まれて…村は動揺した…当たり前じゃな。人間の夫婦からハーフエルフが生まれたんじゃから。
おまえさんもハーフエルフならわかるじゃろう?」
「そりゃ…わかる。……けど、それを理由にすんじゃねえよ」
聞こえてきたのは、村長さんの声…そして、ラスの声。
「まぁ、年寄りの話は最後まで聞いてくれ。…あれは……実はわしの孫娘での。おぬしは怒るだろうが
…体面上、わしはフェイナ…ああ、これは娘の名前じゃが……あの娘とは縁を切ったんじゃ。
……このことは…カイは知らぬことじゃがな」
………………!?
その言葉に、愕然となる。
じゃぁ…わたしは…村長さんの…孫…?対面上、縁を切った…これは、わかる。人間の夫婦に生まれた半妖精の子供。それは、村にとって、厄介者…いや、疫病神以外のなにものでもないのだから。
愕然としたまま、村長さん…いや、おじいちゃんの話を聞く。
そこで、わかったこと。わたしには、姉さんがいたこと。麻薬組織と、この村の関係…そして。
「…そうじゃ……確かに動揺もしたし…苦しみもした。…どんな人間だろうと…自分が治める村の者をと……しかも、自分の孫娘じゃ。…チェンジリングでさえなければ、この膝に抱いたであろう孫を、この手にかけようとしたんじゃ…!」
「言い訳など聞いてない! あんたがどれだけ悩もうが苦しもうが、犯した行為は…っ!!」
おじいちゃんとディックさんの声。
……じゃぁ…おじいちゃんが…全部やったことなの?
息を潜めるのも忘れて呆然としていた。
急に、ドアが開かれる。そこにいたのは、ラス。わたしの姿を認めて、驚いている。でも、わたしは、ディックさんにつかまれているおじいちゃんから目を離せなかった。
「……カイ? おまえ……聞いて…いたのか? 今の話…」
わたしは、その場に立ち尽くしながら、
「……本当…に? かあさんの……じゃあ…おじい…ちゃんなの?」
ディックさんが、わたしを見ておじいちゃんをつかんでいた手を離す。
おじいちゃんは、よろけて膝をつきながらもわたしを見つめている。
「…本当は…名乗ることなどおこがましいが……許してくれとは言わん。肉親だとは…思ってくれなくてもいい…わしはそれだけのことを、おまえにしてしまったのだから。
……ただ、もしもおまえに会えたなら、言おうと思っていた。……おまえは…その手を血で汚したことを悔いているだろう…。そのことに…傷ついているだろう? だが…血は洗い流せる。わしのしたことの…言い訳にするつもりはない。 …ただ、おまえには信じていてほしい。その血は洗い流せると」
それだけ言うと、おじいちゃんは目を閉じてうつむく。わたしは、少しためらいながらもおじいちゃんに歩み寄って、ぺたりと座り込みながら、つぶやく。
「…おじいちゃん? ……ありがとう…でも……本当に洗い流せるのかな…? だって…さっきも…わたし……」
わたしの罪は…本当に洗い流せるのだろうか? ついさっきも、一人、村人を殺してしまったわたしが…
わたしは、あきらめ半分に笑みを浮かべた。
ラスが心配そうに、こちらをのぞきこんでいる。そして、わたしに優しく声をかける。
「…カイ、さっきの村人のことなら……おまえは殺してない。俺が行った時にはまだ息があった。手当すれば助かったはずだ。…あいつにとどめを指したのは俺だ。
…ぐだぐだ言ってやがったから、ひと思いに片付けてやった。 ……だから、おまえは殺してない」
嘘だと言うことはすぐにわかった。あの男の人を斬ったときの感触、手応えが…母さんのときと、まったく同じものだったから。…でも、その思いやりが、今は無性にうれしかった。
ラスやディックさん…こんな優しい人たちが一緒にいてくれるなら…おじいちゃんの言うことも信じられる。
ラスの言葉にわたしはかすかにうなずいて、囁く。
「……うん……ありがとう……おじいちゃんも………」
その言葉を耳にして、おじいちゃんは力無く首を振る。
「おじいちゃんとは…呼ばんでいい。…許されようとは思わんから…。それでも……ありがとう」
ガチャ!
「村長! 大変です! そこで、ラーグが殺されてます!!」
そのとき、いきなりドアが開き、村人の一人がそう叫びながら入ってくる。
その村人は、わたし達を認めるやいなや、もう一度、声を張り上げる。
「なんだ、お前ら! …お前はカイ! …そうか、殺したのはお前らだな!?」
そう言うなり、家から出ていった。
多分、畑仕事や猟から戻ってきたわずかな村人達にわたし達のことを伝えに行ったんだろう。
「…こっちじゃ! 村人達が戻ってくる前に逃げるんじゃ!」
がさっ…がさがさっ……
「…っ…歩きづらい……」
ディックさんが少し、不平の声をあげる。
あの後、わたし達は村人達が戻ってくる前に裏口から出て、村人も知らない裏道を通って逃げようとしている。
先頭に立つのはおじいちゃん。さすがに知っているだけあって、かなり歩きづらい山道も、ひょいひょい…とまでは行かなくても、けっこう早めに歩いている。その後ろに、わたし、ラス、ディックさんと続いてなんとかついていっている、といった状態だ。
「なぁ…じいさん…その、『確実に逃げられるルート』ってのはまだなのか?」
少し、疲れた様子でラスがおじいちゃんに問い掛ける。それに対して、おじいちゃんは、
「おかしいのぅ…このあたりのはずなんじゃが…」
「おいおい………」
呆れたようにラスがため息をつく。ラスのため息と同時に、おじいちゃんが声を押さえながらも明るい声を出す。
「おぉ、ここじゃ、ここじゃ」
カイ達から、少し離れた木の上。一人の青年がカイ達を発見していた。青年…というよりは、少年に近い。おそらくは、20に届くか届かないか、といった年齢であろう。
悪魔の子…! お前さえ…お前さえいなければ!
憎しみをこめて矢をつがえる。村長が人質になっている。見つけたら、応援を呼べということだったが、あいつだけは自分の手でしとめたかった。
青年の父親と母親は急に村を襲った一団に殺されてしまった。原因はあの悪魔の子だと大人達が話しているのを聞いたのだ。…だから。
引き絞った弓の狙いをカイに向ける。幸い、こちらには気づいていないようだ。
父さんと…母さんの仇だ!
そして、矢を放つ。矢は吸い込まれるようにカイに迫る。…だが。狙いをつけて放った矢は急に飛び出してきた村長に当たってしまった。
村長が飛び出してきた方を見ると、もう一人のハーフエルフ ラスがこちらを向いている。
こいつが村長を突き飛ばして、盾に使ったんだ!
青年はそう、判断した。悪魔の子であるカイを、村長がかばう理由などどこにもないのだから。発見された以上、ここにとどまることは身の危険を意味している。応援と助けを呼ぼうと、息を吸い込む。…急に青年は頭がぼんやりとする感覚を味わった。そして、どんどん頭が真っ白になりなにも考えられなくなる。ラスの<混乱>の呪文が完成していたのだ。
青年は、その木の上にへたりこむ。呪文が切れるまで青年はそこにいることになった……
「……ぐはっ…………」
突然、わたしにおおいかぶさってきたおじいちゃん。その顔は、蒼白だった。
「だ…大丈夫…?」
抱きとめたわたしの手に、ぬるり、とした感触が伝わる。
え…?これって…まさか……
そう。血だった。わたしをかばって、背中の中央に矢を撃たれたのだ。
理解したら、その後の行動は早かった。矢を撃った人は、ラスがなんとかしてくれたようだ。今は、そちらよりも、おじいちゃんの方が大切だった。刺さった矢を抜き、ともすればたやすく乱れそうになる精神を押さえつけて、<治癒>を唱えはじめる。
…傷が治らない……なんで!?
もう一度、やりなおしてみる。でも、やっぱり治らない。おじいちゃんが、荒い息の下から諭すようにわたしに声をかける。
「聞いたことがある…死にゆく人間には…魔法を使っても…ごふっ…傷は治らないと…」
「そんなことないよ!わたしの……わたしの力が足りないから……!!」
わたしは、ほとんど泣き声に近い声をあげる。
「今の騒ぎで……人が集まって…くるじゃ…ろう…ここからは…一本道じゃ…道なりに……行けば……川にでる…そこの、ボートを使えば…逃げられる…はずじゃ…」
そう言っている間にも、少しづつであるが村人達がこちらに向かってきているような音が聞こえてきている。
「……わかった。カイ、行こう」
ラスがわたしに声をかける。でも、わたしの足はまったく動かなかった。動かないわたしを見て、ラスが苛立った声をあげる。
「この馬鹿!…一緒に死ぬつもりか!?」
わたしは、なんとか言葉をしぼりだして、ラスに話しかける。
「駄目……先に…行って…おじいちゃんを…このままには…しておけないから……」
ぱぁん!!
わたしがその言葉を言った瞬間、高い音とともに自分の頬に痛みが走る。…ラスがわたしの頬をたたいたらしかった。そして、ラスはわたしの顔をつかんで自分の方を向かせ、怒鳴るようにわたしに言う。
「…そんな簡単に死なせてなんかやるか!!」
言うなり、ぐいっとわたしの手をつかんでおじいちゃんが言っていた方向に走っていく。…わたしは、抵抗できなかった。おじいちゃんがどんどん小さくなっていく。
「……おじいちゃん…ごめんね………」
後悔の念を感じながら、ぽつり、そうつぶやいた。
「あった!あれか!」
ラスの言葉に、前を見ると、川に停めてあるボートが見えてくる。多少、流れは速そうだけど、行けないことはなさそうだ。
「カイ……行くぞ」
ためらいがちにわたしに声をかける。
わたしは、うながされるがままに、多少ふらふらしながらボートに乗りこむ。その後に、ラス、ディックさんと続き、ボートを漕ぎ出す。
…おじいちゃん……
後悔。やっぱり、ここに帰ってくるべきじゃなかったのかもしれない。ここに帰ってきて、結局、おじいちゃんを失うことになってしまった。
そんなことを考えながら、ボートの上で、膝を抱えるようにして座り込み、ラスやディックさんに顔を見せないように、抱え込んだ膝に顔をうずめる。
「カイさん……」
「そっとしといてやれよ。…だけど、妙だな。村人達、もっと俺達の近くにまで来てなかったか?」
「…そういえば……」
かなり流れの速くなった川から、あたりの森を見渡してラスが言う。
確かに、近くまで来ていたはずの村人達の姿が見えない。川を発見したら、その周りを探しそうなものなんだけど……おじいちゃんが引き止めてくれたのかな…?
そのとき、川音に混じって、風に乗って別の音が聞こえてくる。と、いっても人の声ではない、もっと大きい音。
『カイ、あの川には近づいちゃダメよ。あそこにはね……』
急に、母さんの言葉が思い出された。…確か、この先の言葉は……
「おい…ディック…あれ…」
どわどわどわどわどわ。
ラスの声が途中でかき消される。
…そこに、滝があった。
「確かに、このルートなら村人に怪しまれずに逃げられるかも知れませんけど…」
半ば、呆れたような調子で、ディックさんが言う。
「きっと…わたし達が魔法使える、っていうことを考えてくれてたんじゃないですか…?多分…」
ディックさんにフォロー入れる。自分で言っていて自信がなくなってくる。
「はぁ……とりあえず、ディックにもかけなきゃな、魔法」
そして、大体3分後。大きな水飛沫の音とともに、ボートは滝壷に沈んでいった…
川の流れは、そのままエレミアの街近くまで続いている。街の西側を流れるセレノダス河へとそそぎ込む支流だ。流れが合流する少し手前で、3人は岸に這い上がった。滝壺に落ちる寸前にかけた水中呼吸の魔法のおかげで、とりあえず溺れることだけは免れたが、季節は冬。そして川の流れは決して緩やかではなかった。低い水温と濁流は簡単に体力を奪っていく。
「とりあえず…助かったようですね…」
岸辺に座り込んだまま、ディックさんが呟く。その隣で、ラスはぐったりと横になっていたけど、それでも悪態をつくことだけは忘れない。
「あんのクソじじい……! 確実に逃げられるって……洒落キツイぜ…」
同じようにぐったりと座りこみながら、わたしは無言だった。
…おじいちゃん……ごめんね…そして……ありがとう…
「ところで…どうしますか? そろそろ日が暮れますが…火を起こして体を温めます? それとも…」
さすがに肩で息をしながら、ディックがラスに問いかける。起きあがりつつラスが答えた。
「いや…ここからなら街まであと少しだろ? いっそこのまま宿まで……」
「そうですね。……そのほうが休めますし。それに…追っ手がこないとも限りませんから。…では参りましょうか」
ディックの言葉を合図にして、3人が立ち上がる。エレミアの街へ向けて、ゆっくりと歩き始めた。
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