No. 00028
DATE: 2000/01/14 17:35:23
NAME: フェイル
SUBJECT: 割のいい仕事
「っ!!・・・・なんであなたはこんな事をするんですか!?」
そこにはハードレザーを着て,地に伏している人間がいた。
大腿部にはダガーが刺さっていて,血が溢れ出ている。近くには剣が一本落ちていた。
「貴方を殺すと,お金がいっぱい貰えるんですよ」
暗殺者は,実に冷たく言い放った。
「生きるために人を狩る,それだけの事ですよ」
そこは静寂に包まれていて,月が明るい夜だった。
「お金だったらあるから!全部あげるから!お願いです・・・助け・・・」
「それはできません。一度請け負った仕事を放棄すると,結果的にロクな事にならないんですよ」
暗殺者は銀色の刀身を抜き,ゆっくりと警戒しながら自らの獲物に近づいた。
「お願いです!やめ・・・」
獲物は死に恐怖したのか,泣きながら懇願した。しかしその願いは聞き入られることはなく,銀色の刀身は驚くほどスルリと胸の中に入っていった。
暗殺者は黙って獲物の死を確認するとギルドに帰り,死体の処理を頼んで金を受け取った。
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「今回の仕事の分の金だ」
「どうも,有り難うございます」
「しっかし,流石『F』だ。暗殺成功率100%は伊達じゃないねぇ」
「どうも」
「・・・・アンタ,今まで何人殺した?」
「う〜ん,憶えてませんね。では,死体の処理の方,お願いします」
「ああ,わかった」
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・・・もし感情が解るようになったら,私は今までの仕事を『悲しい』と思うのだろうか?自分のことを『許せない』と感じるのだろうか?
・・・今はただ,生きるために人を狩っただけ。それしか感じない。