No. 00034
DATE: 2000/01/23 16:39:32
NAME: ミレニア
SUBJECT: 4年前の記憶
やさしかったお父さん。
お父さんはいつも笑っていてくれた。
早く死んでしまったお母さんの分まで,私の世話をしていてくれた。
物知りで・・・強くて・・・かっこよかったお父さん。
ある日,父さんは「今日はちょっと遅くなる」って言って仕事に出かけていった。私は父さんが帰ってくるのをずっと待っていた。
そしたら夜遅く,・・・玄関で待ちわびたノックの音が聞こえた。
私はすぐ玄関の鍵を外し,ドアを開けて言った。
「おかえり!」
お父さんはそれを「ただいま」と満面の笑みと共に返してくれた。
でも,次の瞬間・・・鈍い光を放つ刃物がお父さんを貫いていた。
私には何がなんだかわからなかった。
ただ,お父さんから赤い物が,ドロリといっぱい出てきた。
お父さんが倒れた後ろには,一人の人が立っていた。
黒装束に身を包み,覆面をしている一人の男が。
全てを見透かしてしまいそうな冷たい瞳をしていて,手には銀製の大きな剣が握られていた。そして,その剣から赤い物が滴っていた。
怖かった。何がなんだかわからなかった。何もできなかった。どうしたらいいのかわからなかった。
ただ,「お父さん・・・?」と呼びかけても返事は返ってこなかった。
黒装束の男は私を見つめると,「貴方は契約内容外です」と言い残して闇の中に消えていった。
残された私は何度もお父さんに呼びかけた。
「お父さん?どうしたの?」
「返事をしてよ,お父さん」
「・・・・お願い・・・・・起きて・・・よぉ・・・・・・」
何度話しかけても返事は無かった。私はただ,大きな声で泣くことしかできなかった。
近くの家の人が私の泣き声に気がついて,お父さんを神殿に運んでくれたけど,もう手遅れだった。
やさしかったお父さんに,二度と会えなくなった。
.....それから私は親戚の家に引き取られた。
私は勉強をしながら,剣を振るう練習もして,一人で生きていけるように頑張ってきた。
そして2年前,親戚の家の人の反対を押し切り,冒険者として旅に出た。
.....あの暗殺者を捜すため。
...お父さんの仇を取るため。