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No. 00043
DATE: 2000/01/27 05:11:32
NAME: スターク、レイシャルム、カイ他
SUBJECT: 人の想い、自分の想い(濡れ衣)
1/26(アレクの動き)
ガイス司祭の協力のおかげで、シャウエルの救出する算段がついた。あとは時間を待つばかりである。
しかし、ブルータは言った。「あんたらに協力を申し込んだのはあんたのその肉親(シャウエル)としての立場と、いつ仕掛けてくるか判らない冒険者や衛視を退かせるためなんだ」
「判っているよな。あの貴族にはバラされたくない事実があるんだ。それがオレたちの付け入る隙ってわけだ。あの貴族は拒否なんてできない。ここの国の王様が世に言う賢人王であるなら尚のことだ。この件でシャウエルとやらを救出して、秩序の歪みを正すのさ」
心にもないような台詞をさらりと言ってのける男。
気持ちは滅入ってくるが、兄を助けるためだと思って、気力を振り絞る。
「なんか心配事かい?」
表通りで声をかけてきたのはスタークというグラスランナーの女性であった。 以前、酒場でシャウエルの所在を探していた女性である。
それから、彼女はあれこれシャウエルとの関係やらなんやらと口やかましく聞いてきた。最初は適当に返していたが、だんだんとうっとうしくなる。
「あんたも兄さんの知り合いなら、投獄されている身のシャウエルを助け出す方法でも考えてよ!」
思わず怒鳴り散らしてしまう。通行人の視線が集まり、恥ずかしくなる。
「ゴメンよ」
スタークは素直に謝り、ポンと手を叩いた。
「こんなのはどう? あいつあれでも魔術師の端くれなのよ。幻覚魔術と創成魔術のくらいしかろくに扱えないんだけどね」
「なんだって?」
寝耳に水のような話であった。シャウエルが魔術を扱えるなどと誰が知っていただろう? 元々、フォーマ卿が暗殺されたときも、カメレオンという魔法によって姿をくらまして逃げ延びたのである。単に逃げ足だけ早い男ではなかったのだ。
スタークの提案は、発動体を持ち込むことができればコウモリでもヤモリでもなって逃げ出してくるだろう。ということであった。
この情報はアレクにとってはありがたいものだった。ガイス司祭の一方的な提案を鵜呑みするしかなかったのに対して、こちら側も意見することができるのだ。場合によっては現状の忌まわしい状況に頼らなくてもよくなるかも知れない。
アレクはこの事実を告げるために、ガイス司祭たちが寝泊まりしている宿へと向かった。何気なくその後をついていくスターク。
1/26(レイシャルムの動き)
あれからというものアレクに会うことができないでいる。
巷では幽霊騒動から、通り魔事件、誘拐事件まで起きている。
どれも中途半端に見聞きしているだけで、本腰を入れて動いているものはなにもない。
しかし、近頃の広まっている噂は気になる。
国が不正を働いているのは事実だ。現に無実の男シャウエルが投獄されている。あの女衛視も見る目がない。上から言いなりになって動くようじゃ、いけない。
それからしばらく思案した後、レイシャルムは噂の目的を大体当てていた。
「アレクの奴、変に絡んでいなければいいが……。情報の正確さがほしいところだな。レスダルやエルフはどうしているだろうか?」
1/26(カイの動き)
「何か隠しているよね」
ラスの下手な言い回しと、姿を見せないカレンを察してカイはそのように結論づけていた。とは言いつつも、当てもない、何もない状態では捜しようもない。「また、何かやっかいな事件に絡まれてないかしら……」
やっかいという言葉でラスに対してなんでも話を持ちかけてくる女を思い出す。確かアレクという傭兵。
気になるところを捜して回るがこの女も見あたらない。この手の情報収集となる技術を持たない彼女にはこれ以上の人捜しはできそうもなかった。
意気消沈して宿に帰るカイであった。
1/26(ザード、アンシーの動き)
ヨークシャル卿の屋敷では、誘拐に現れた人物の特徴から人数、状況を聞き出すことが出来ていた。それに矢文で「私は大丈夫だ。冒険者など雇ったりせず、待っているがいい。私は必ず戻る。下手なことはするな。イルヴァンテ。byヨークシャル」が届いた。この内容が事実であるか脅されて書いたかで、冒険者たちの間で論争が起きる。
「面倒くさいですねぇ〜」
のんびりとザードがそのやり取りを見ている。
「こちらは目撃情報でも探してみましょうか?」
ザードはアンシーを誘い、屋敷から離れる。ここで引き下がっていては、青年の依頼を蹴った意味がない。それにあのような文面を鵜呑みにするバカはいないだろう。というのが彼の計算であった。
夕暮れまでかかって、調べた結果、南地区辺りに根城があるのではないかと推察することができた。とはいっても広大な地区である。
「足を使うのは得意じゃないんですよね〜」
「同じく、これ以上もう歩きたくないわ」
頭脳専門と謡う魔術師とエルフのコンビである。体力面において甚だ心許ない二人であった。
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