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No. 00047
DATE: 2000/01/29 05:31:21
NAME: ラス、カレン、カイ
SUBJECT: 猜疑心の結果(濡れ衣)
1/27(ラス、カレンの動き)
「勝手な行動は止めてもらおう……」
「なんだと? お前にいちいち行動を指図される覚えはない」
ブルータの言葉に、ラスが食いかかる。
しばらくの押し問答ののち、ラスが切れた。
「だったら、シャウエルが悪大臣を殺したっていうのは嘘だろ? なんで協力者に嘘を語るんだい? それもなんだ、シャウエルが悪大臣を殺したと本気で思っているのかい?」
言っておきながら自分で「やべぇ」と思うラス。それを聞いていたカレンも内心で同胞をど突いていた。
「なんだ、あんたらも馬鹿じゃなかったんだ」
澄ました顔ではあるがその目つきがいやらしかった。
そうして、二人に対して、コトの真相を語りだした。一冊の羊皮紙の束となるレポートを前にして。
「ということだ。あんたらがうちらを信用しない理由も判る。オレがあんたらの立場なら精一杯疑うだろうからね。しかし、考えてみなよ。他にどうこうする術があるかい? ファリス神官なら正面切って不正を正すのが唯一絶対の道かい? それならロドーリルの侵略はファリス神官の言うところの悪じゃないか? 全ファリス信者はあの国の侵攻を阻止すべく立ち上がれと言うのか? 違うだろう? 今回の件も同じだ。正面切って国に訴えたところで笑われるだけだ。それではシャウエルは助けられない。シャウエルという人を助け出すためにはきれい事だけではいけないんだよ。歪められた法に対して、正当な法で挑む必要などないのだよ」
ブルータの論理は納得できた。しかし、腑に落ちないのは依然変わらず。
「言っておくが、ヨークシャル卿は我れらの手の内にある。明朝、ヨークシャル卿と共に城に入る。君(ラス)はハーフエルフのようだから護衛は無理だね。そちらのキミ(カレン)、アレクと共にヨークシャル卿のお供をお願いしたい。
「拒否などできぬのだろう?」
「ふっ、察しがいいね。アレクが肝を据えている以上、あんたらも覚悟した方がいいよ。オレたちは協力者だからな」
行動を制約されていてもラスは一人動いた。カレンはアレクと共に、城に入らねばならず、その段取りでとても動けそうにない。
事情は全て理解できたが、このまま奴らの思いどおりになっては行けないような気がしてならなかった。マスターに聞いた、ラーダ神官のラザラスを頼りに行こうと思っているが、果たして味方についてくれるだろうか? あのレポートはラザラスが書いたものである。ヨークシャル卿の聞かれたら……、それよりも自分が全貌を知っていることを何一つ漏らさず語り合うことができるか心配でもあった。
「何でも屋に頼るか?」
依頼となれば、やつも動きは変わるのではないかと考える。
ともかく、ここに居ても始まらない。明日には決行される。うまくいけば、万事シャウエルが解放されて終わりだ……果たして本当にうまくいくのか? 自分が行動しようとしているのは、単に失敗させようとしているのではないか? そんな疑問がよぎる。
1/27(カイの動き)
ラスの動きが変だった。「浮気?」そんなことはあるはずがないと思うが、一抹の不安はぬぐい去れない。そんなとき、酒場で出会った何でも屋の仕事内容を思い出す。「浮気調査」なるほど、これならば行方知れずのラスたちを探し出せるかもしれない。
そう結論づけたカイは、「何でも屋」を訪ねることにした。
エルフィンは自宅に居た。商売の笑みを浮かべた彼は、「ラス」という名を聞いて僅かに反応をする。
「判りました、調べましょう。まず手付け金に……」
カイはその並べられた金額に度肝をぬいた。大金である。
素行調査だけでも、結構な額が行くのだ。自分の蓄えていた財産の大半が消えてしまう。
ラスが浮気をしていることは少ないかもしれない。それよりも自分を仲間外れにして動くことが気にくわなかった。自分では足手まといとは思っておらず、ラスたちの冷たい行動に悲しくなる思いだった。
結局、大金を払う勇気が持てず、「何でも屋」を後にするカイであった。
しかし、それで引き下がるカイではなかった。オランでも数ある裏道のうち、一本に絞って彼を待ちかまえる作戦に出たのである。裏道といっても当てずっぽうではなく、ラスからいろいろ享受をしてもらっての結論である。それがどれほど役に立つか、中途半端な知識ではあったが今の彼女にはそれくらいしか頼るものがなかった。
だが、結果的にその選択は正しく、夕闇に紛れて駆け抜けていこうとするラスを見つけたのである。
問いつめるカイに、なんとかこの件には関わらせようとしないラスではあったが、見つかったのが運の尽き、彼女の協力を仰ぐことになった。しかし、ガイスやブルータのような危険な人物の存在は知らせていない。
1/27(ラス、カイの動き)
ラーダ神殿では、ラザラスが面会に応じてくれた。
ラスは確認を取るような形ではあったが、一年前の事件やシャウエルのことをそれとなく聞いてみた。気構えしていた謎かけなどはなく、大まかな内容については隠そうともせず語ってくれた。
「茶番はこの辺にしておこうかな?」
その言葉で、自分の言い回しの甘さを呪うラスであった。カイに至っては断片的な情報しか与えてもらっていないので、会話のやりとり事態が不透明であった。
「ならば聞きましょう。シャウエルは無実の罪で投獄されていると聞きます。そうした行いをあなたは見過ごすのですか?」
「知ってのとおり、神殿は国の行政には口を挟まない。そういう件なら叩く門戸を間違えているのではないかね?」
「しかし、この件で一番詳しいのはラザラス司祭ではないですか?」
「……キミはどこまで知っているのかな?」
怪訝な表情を見せたラザラスの顔を見て、ラスは再び冷や汗をかくことになる。
「済まないが、センス・ライの呪文をかけさせてもらうよ」
確認の返事も待たず、ラザラスは傍らに置いてあった杖を持ち、呪文を唱えた。
こうして、ラスの心中に隠していたブルータたちやアレクの行動まで語るハメになった。
その一部始終を聞いていたカイは、自分に知らされた内容がほんの表面的なものだと知り、腹を立てるのであった。
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