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No. 00049
DATE: 2000/01/30 01:50:50
NAME: ラザラス、エルフ、ザード他
SUBJECT: 絡み合う糸(濡れ衣)
1/27(ラザラスの動き)
ラスの話しにより、シャウエルを救出する作戦に明日動き出すという事実を知ったラザラスは、見捨てて置くわけにはいかなかった。
話の全容を聞き出した訳ではなかったが、ヨークシャル卿が絡んでいるのは容易に想像がついた。こうした国を絡めた事件に、冒険者を頼る訳にもいかず、自ら動くしかないと判断を下す。
彼に付き従うリズナを連れて、とりあえずヨークシャル邸に向かうことにした。そう、彼はまだヨークシャル卿が拉致されていることは知らなかったのである。
ラスはヨークシャル卿宅から孤児院のレポートを盗み出した者がいることは供述していたが、誘拐のことはうまく言葉を言い回してセンス・ライに引っかからないようにしたのだ。
こうして、ラザラスはラスから聞きだしそびれた情報により、回り道をすることになるが、それも時間の問題であった。彼がヨークシャル邸に赴けば全て知られることになる。それが明日の決行の時刻より遅くなることは考えにくかった。
1/27夜(エルフィンの動き)
エルサークという関係者とおぼしき人物を知ってから、彼はエルサーク邸に忍び込んでいた。
そこで見つけたものは、孤児院を使ってスパイ人員を育成しようという計画であった。そこにはシーフギルドの今は亡き、シェルの名前なども見受けられた。
(この男が、裏で仕切っていた人物だな)
ようやく、目的となる最後の人物を知ることができて安堵のため息が漏れるが、これで噂話との関連が判るわけではなかった。しかし、エルサークとなる人物を張れば、いずれは事件の真相に辿り着くのではないかと思えた。
(今は、まだ様子を見るか……)
1/28(ザード、アンシーの動き)
盗賊に金を積ませて、貴族の誘拐についての情報を集めた。得られたアジトへ踏み込んでみたが、そこはすでにもぬけの殻であった。
目の前の大金を前にして、捜査の手など緩められるわけもなく、彼らは必死に手がかりを捜した。
そうして、その執念が一台の見覚えのある馬車を発見することになる。
「あれは、ヨークシャル卿のところにあった馬車じゃないかしら?」
アンシーの問いかけにザードは頷き返す。
もっとも、彼に言わせればヨークシャル卿の馬車に見立てた即席のものであると言い放った。
朝の喧噪が落ち着いた時刻、人目を気にすることなくヨークシャル卿が現れた。イルヴァンテから見せられていた肖像画と一致する風貌。
その後から鎧を身にまっとった女性(アレク)と、従者と思われる男(カレン)。それとラーダ神官の服装をした男(ガイス)が馬車に乗り込む。
ザードとアンシーは悩んだ。
誘拐されているはずなのに、ヨークシャル卿の扱いは強制もなにもないように思えた。しかし、馬車は偽装されたものであり、ただならぬことを企てようとしているのは察しがついた。
(20万ガメルのためです……)
アンシーに作戦を伝えると、馬車を動かしはじめる前にザードが行動に移した。
彼はより確実性を高めた呪文詠唱を行う。眠りの雲が馬車を包み込む。御者である従者(カレン)が呪文に抵抗したところにアンシーが混乱の呪文を投げかける。
彼らの不意打ちは成功した。続けざまにザードは暗闇の呪文を唱え、視覚を奪う。そのスキに近づいたアンシーが馬車の扉を開け、ヨークシャル卿を引きずり出す。
すかさず、非力なアンシーをザードが助ける。といっても彼もハーフエルフであるため、筋力は劣る。白昼往来する中、彼らはヨークシャル卿を辛うじて助け出すことに成功した。
裏通りを二人で抱えて走れるほど、ヨークシャルは小柄ではなかった。
「目を覚ましてくださいよ〜」
ザードの呼びかけにヨークシャルは気がついた。そして、彼らは裏通りを通り抜け、安全と思われるところまで逃げ延びたのであった。
(やったぞ。これで20万ガメルは私たちのものだ〜)
ザードは内心叫んでいた。さすがに、ルツァークの依頼を無断で断ったので気が引けていたので、この後姉捜しも協力してやろうと考えていたが、いざ、ヨークシャルを救出してしまうとそんなことはどうでもよく思えてきた。
その一連の出来事を見つめていた者がいたことに彼らは気がついていなかった。
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