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No. 00070
DATE: 2000/02/24 02:39:39
NAME: スイ・リヨ
SUBJECT: 512年某日・夢
夢を見た。
10年前の…あの時の夢。
まだ子供だった私。
ただ、明日のお祭りを楽しみにしていただけだった…
夕暮れに染まる森。木々の間に木と草で作られた数軒の家が見える。
いくつかの家からは細く煙が立ち昇っている。
狩りに行ってた大人たちが帰ってきた。
その中の一軒から小さな女の子が飛び出してきた。
出来たばかりの飾り服。あれは…私だ。
そうだ。三ヶ月前からお母さんやお姉ちゃんに教えてもらいながら一生懸命作った私の飾り服。
「リヨさまのところに行ってくる!」
あぁ、そうか。やっと完成した服をリヨ様に見せに行ったんだ。
木々の間を抜け、村の真ん中辺り。小さな、でも立派な神殿。マーファ様のお家。その隣の家。リヨ様の家……
「リヨさま!見て見て!やっと出来たんですよ!」
女の子が嬉しそうに一人のおじいさんの前で踊ってる。
リヨ様だ。私が生まれるよりずっと前に外の世界から来て色々な事を教えてくれた立派な人。
リヨ様が来てくれて、ここの暮らしもずいぶん楽になったってお母さんも言ってた。
食べ物を上手に保存する方法とか、木の世話をして実がたくさんなるようにする方法、いろいろな道具、外の世界の言葉。
そして、神様のお話。
「ねぇリヨさま。セイお姉ちゃんたち間に合うかなぁ?」
そう、セイ姉ちゃん達は3日前から山の向こうまで薬草採りに行ってるんだ。明日のお祭りに間に合うか、私はとっても心配だったんだ………。
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………手足がどんどん冷たくなっていく。
おなかだけが熱かった。地面が赤くなっていく。私のおなかから血が出てる。いっぱい出てる。こわい。こわい。こわい。
誰かの声。悲鳴。お母さんの悲鳴。おなかから飛び出した内臓を引きずりながら私の縄を切ってくれたお母さん。
逃げってって言ってた。でも、ダメだった。
ぴかぴか光る服着た怖いおじさんが追いかけてきて、それで……
お母さん。お父さん。リヨさま。こわい。こわいよ。体が動かないよぉ。どうしてこんなことになったの?毎日ちゃんとお祈りして、いい子にしてたのに………
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………シイさんがいた。泣いてた。セイ姉ちゃんと薬草採りに行ってた……帰ってきたんだ。お祭りに間に合ったのかな?でも、何で泣いてるんだろう?
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私は、何日も寝てたらしい。
セイ姉ちゃんと、シイさんが帰ってきたときはもう怖い人たちはいなかったって言ってた。
……たくさんの人が倒れてた。鳥や動物たちが倒れた人の体を食べている。
他にもいっぱいあるのに子供の足を取り合ってる2匹の犬の姿が妙に心に残ってる。
コウくんはセイさんに抱かれたままずっと泣いてた。
リュウちゃんは魂が抜けちゃったみたいに座り込んでた。
セイ姉ちゃんがチョクさんの体を拭いている。
チョクさんは体中ひどい火傷になってて最初誰だか分からなかった。
ジン兄ちゃんは右腕がなくなってた。
そして、ゲン兄ちゃんはリヨ様の服を着ていた。
でも、その服は
……………赤かった…………。
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