No. 00076
DATE: 2000/03/02 17:30:02
NAME: リレイア
SUBJECT: 旅立ちの朝と前日の昼
「う〜ん……ねぇねぇ長老、やっぱわたし明日出発しなきゃダメですか?」
「当たり前だ」
イスにかけて足をぷらぷら振りつつ言うリレイアに、「長老」と呼ばれたエルフの青年……少なくとも外見だけはそう見える……は間髪をおかずに返答を返した。きっぱりとした口調で後を続ける。
「そもそも、お前がこれまでずっとここに居たことが特殊なんだ。30年かそこらで普通は出て行くものなのだよ。お前のように、人間の血が混じっているような奴はな」
「はぁ〜い。わっかりましたぁ」
あまりに容赦のない言いようにかえって怒る気も出てこず……生まれてしばらくしてからずっとこうだから慣れたのもある……リレイアはおとなしく「良い子のお返事」をかえした。
「あーあ、大変だねぇリレイアぁ。まだよんじゅっさいなのにねぇ?」
同じく、村の中でも数少ない子供……彼女はハーフエルフではないが……が悪意のある声で言ってにこにこ笑う。
「……そーだねぇ、皆とほとんど同じなのに、わたし『だけ』一人前しなきゃいけないもんねぇ。みんなが半人前の中、わたしひとり『だけ』ねぇ」
怒るまではいかないまでも、ピキっとくる事はある。何か言い返さなければ気が済まないという性格の持ち主であるリレイアが、彼女との舌戦に突入していくのを見て、青年はひそかにため息をついた。未熟者には違いない。これ以上置いておく意味もないのも事実だが。
余談。
出立の朝、村の者ほぼ全員が聞いている状況で平然と「時々は顔を見せに帰っていらっしゃいね」と笑顔でのたまった母には、さすがの自分や長老達も絶句したと旅立ちの時の話をする度にリレイアは言う。
それを聞いた者のほとんどもまた村の者やリレイアと同様、母の強さというものに一瞬絶句する事になる。