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No. 00133
DATE: 2000/06/14 02:05:45
NAME: リティリア
SUBJECT: 思い深き街にて2〜こんな物の為に〜
リティリアが目を覚ますとそこは見覚えのある部屋だった
辺りは暗く窓から射し込む光は淡く月の光だと言うことがわかる
体を起こし部屋の中を見渡す・・・間違えるはずのない、もと自分が生活していた部屋だったのだ
こうとう部に鈍い痛みがある。ゆっくりと自分に起きた事を思い出しそっと息を吐く
なぜここに居るのかがわからないのだ
ベッドからすべり出すと窓辺に立ち外を見る
そこで昨日、酒場で聞いた話を思い出した
『親戚連中がリティリアを探している』と言うことをだ
誰が、なんの為にと思いたいがだいたいの予想はつく
逃げ出す事は簡単だったが様子見の為ここに居る事にした
ベッドに戻ろうとした時、扉が開き中年の女とその後ろに隠れるようにひょろっとした身形の良い男が入ってきた
顔は見たことある。家宝欲しさによく嫌がらせをし何処の馬の骨か判らないと言って私を白い目で見そしてアルフィデア様が亡くなった時悲しむよりも喜んだ親戚連中の一人だった
そしてその中でも立ちの悪かった親子だったと思う
「やっと起きたわね。さぁ、鍵を出しなさい」
中年の女・ルクティアルが言う。その後ろで息子であるレクトがそれに合わせて何かを言っている
リティリアは眉をひそめ
「鍵?なんの事かしら?」
と正直に聞いたが相手は
「惚けても無駄よ。あなたが家宝に通じる鍵を持っている事は知って居るのよ。さぁ大人しく出しなさい。出さないとここから出さないわよ」
と言う
だがそう言われてもリティリアには鍵の心当たりなんてなかったのだ
「ねぇ、ママ。ここは僕にまかせてよ。絶対僕が鍵を手に入れてあげるから」
とレクトがルクティアルに甘えた声で申し出た
「まぁ〜なんて頼もしい事ですの。レクト、頼みましたわよ」
「うん、任せてママ」
その遣り取りをリティリアはげんなりとして見ていた
そしてレクトを残しルクティアルは出て行った
「さてと2人っきりだね」
レクトはベッドに座り
「座らないの?」
とレクトはリティリアを見上げながら自分の隣を差して言った
リティリアはレクトを冷やかに見返し
「座らないわ。それになんと言おうと知らないわよ」
レクトは足をくみリティリアを値踏みする様に見て
「誤魔化しても無駄だと言ってるだろ。それに素直になればこの家でまた暮らす事が出来るかもしれないんだよ・・・その代わりその時は僕のお嫁さんとしてだけどね」
リティリアはにっこり微笑み
「そんなの絶対いやよ。それに私が素直に教えると思って?」
とこたえるとレクトは怒った用に立ちあがり
「言うまでここから出さないからな。覚悟しておけよ」
と言い捨て出て行った
「ば〜か」
レクトの後ろ姿にそれだけ投げかけるとリティリアはベッドに座った
はっきり言って彼女は鍵の事なんて知らなかったのだ
だが彼らは知っていると思い込んでいた
溜め息を付きベッドに潜り込み、予想通り家宝が狙いだったわねと思い眠りについた
目が覚めてからリティリアは鍵について考えていた
そして一つの事を思い出した
アルレイート様にフィリシア様が生きていた頃・・・そしてアルフィデア様がまだ元気だったころの夢
あれは応接間にある像の前にアルレイート様と幼い私が居る
「リティ、君に良い事を教えて上げよう」
幼い私はアルレイート様を見上げ
「なんですか?」
アルレイートは笑みを浮かべ
「フィリシアがつけている古ぼけた指輪を知っているね」
リティリアはこくりと頷く。アルレイートはリティリアを頭を撫でると目の前にしゃがみ込み
「あれはね、我が家の家宝を隠した扉を開ける鍵なんだよ」
「家宝ってどんな物ですか?それにどこに隠されているんですか?」
「どんな物かは内緒だよ。将来、アルフィデアと一緒に見たまえ。そしてその家宝をどうするかを考えるんだよ。私は君達に残そうと思ったんだけどね。君達がどうしようが誰も恨まないよ」
「はい、わかりました」
アルレイートは立ち上がると目の前の像を触り
「隠し場所はここだよ。この指に指輪をつければ扉は開かれるんだよ。覚えておくんだよ」
「はい、わかりました」
アルレイートはもう一度のリティリアの頭を撫でると
「リティは良い子だね。アルフィデアの事を頼むよ」
リティリアはにっこり微笑み
「はい、お父様」
幸せだった頃の記憶・・・
指輪はエレミアについた次の日にアルフィデア様の墓に埋めてきたばかりだ
あの人たちに渡すのはしゃくだがだがいまさら守るのもなんだし、それにリティリア自身もなかみが気になっていたのだ
だからと言っていちいち言いに行くのもなんだからリティリアはベッドに座り外を眺めてあの2人が来るのを待った
2人が現われたのは日がだいぶ高くなった頃だった
「さぁ、今日こそ教えて貰うわよ。さっさと吐きなさい」
ルクティアルの言葉にリティリアはため息をついきそれから
「判ったわよ。ただし鍵はある所に隠してあるから取りに行って良いかしら?」
「そう言って逃げ出そうとしても無駄よ」
リティリアはルクティアルをじっと見て
「べつに信じないならそれで良いわ。ただし一生、家宝も鍵も手にはいらないわよ。なんだったら見張りをつけても良いわ」
さすがにそこまで言われると
「わかったわよ。好きにしなさい。ただしわたくしの可愛いレクトを一緒に連れて行くのよ」
リティリアは立ち上がると
「判ったわ。すぐに行くけど良いかしら?」
ルクティルアはレクトになにか声をかけている。その様子をちらっと見るが無視してリティリアは部屋を出て行った
レクトがリティリアに追いついたのは屋敷を出て少ししてからの事だった
「待てよ。君は僕の監視下にあると言うことを忘れるなよ」
「そう言うなら遅れずついて来なさい」
うしろを振りかえらずそれだけ言うとリティリアはさっさと歩いて行ってしまった
向かう場所はリティリアが作ったアルフィデアの墓
墓につくとリティリアはじっとその墓を眺めていた。こんなにすぐに来るとは思いもよらなかったからである
それから先日埋めた指輪を掘り返す
まだ数日しかたっていないので埋めた場所はわかっていた。もしもう少し日がたっていたらどこに埋めたかわからなくなっていただろう
後ろからレクトが
「こんなところに鍵がねぇ。それで鍵は見つけたのかい?」
「ええ、見つけたわ。それよりこれがすんだら私には2度と手を出さないでほしいわ。もうあなた達とはなにも関係が無いでしょ」
「ああ、わかったよ」
それだけ聞くとリティリアはさっさとその場所を後にした
またレクトがリティリアを追う形になったのはいうまでも無い
帰りを待ちきれなかったのか入り口の所でルクティアルが二人を待っていた
「おかえりなさい、レクト。さぁ、さっさと鍵を渡すのよ」
リティリアはルクティアルをじっと見ると
「鍵の使い方、使う場所は判っているのかしら?」
その問いにルクティアルは唇を噛むとレクトを抱きしめていた
リティリアはその様子を鼻で笑うとすたすたと屋敷の中に入って行った
ルクティアルとレクトはおたがい顔を見合ってからリティリアを追った
リティリアが来たのは応接間の像の前
アルレイート様の言われた通りに像に指輪をはめた
すると像が低い音を立て右に90度回る。そしてそこには古い壷が一つ置いてあっただけだった
リティリアはその壷を取ると振り返りルクティアルに渡した
「これで良いでしょ。もう二度と私には関わらないでほしいわ」
そのまま部屋を出て行こうとした
ルクティアルはやっと手に入った家宝に喜び、その壷の蓋を開けた
「な・・・これはなんですの」
リティリアはその声に振り返るとルクティアルに近づき壷を奪って中を覗いた
壷の中には二粒の小さな何かが入っていた
リティリアはそれを見た時おもいっきり壷を床に叩きつけ二粒の何かを踏で砕いた
「こんな・・・こんなものの為に・・・あなた達もこんなものの為にがんばったなんてバカね」
それだけ言うとくるりと振り返り屋敷を出て行った
後には呆然と立ち尽くすルクティアル親子だけが残っていた
リティリアはアルフィデアの墓の前にいた
家宝がなんだったかを報告する為に
「アルフィデア様・・・私達はなんだったんでしょうね。家宝と聞いてた物はこれくらいの」
指で大きさをしめし
「大きさで何か薬かなにかでしたの・・・」
リティリアは少し悲しそうに微笑んで
「もしあなた様が居て何もなかったら、あれを見て笑いあえたかもしれませんが・・・」
唇を噛みはきだすように
「あなた様が居なく、あなた様が居る時はあれだけ色々な嫌がらせをされ、それし死しても涙すら見せなかったあいつらが求めて居たものがそんな物だったなんて・・・思わず私はその物を憎く感じましたわ」
そっと墓に触れ
「本当に私達はなんだったんでしょうかね・・・あんな物の為に・・・」
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