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No. 00150
DATE: 2000/07/24 00:37:54
NAME: モケ&サナリー
SUBJECT: ある一つの冒険1.2
これは「あるひとつの冒険1.1」の続きです。
読まなくてもなんとかなりますが、この機会に読んでみてください。
「じゃあ、頼んだぞ。」
一通り、ソライスンより説明を聞いた後、地図を手渡される。
そして今回は全額後払いという事もついでに聞く。
そして以前とは違う入り口から、地下の下水道に入っていく。
一人、二人並ぶのがやっとの道を、ランタンや松明で明るくしながら進んでいく。
『お前等が前に見回った所で、何人か行方不明がでているらしい。』
前に見回った事のあるヤツの方がいいだろうと、モケとサナリーに仕事として公募する前に声をかけてくれた。
そこで宿にいる知り合いに声をかけて、つき合ってもらう事にした。
その中にいるグラスランナーのサテに念のため盗賊ギルドに行ってもらったところ、そこから流れてきた仕事だと言うことがわかっただけだった。
サテ曰く『懐具合が一番の問題なのよさ★』と言っていたのだが・・・?
「ええと、この辺りからなのだ★」
地図を見ていたサテが先頭を歩くモケに声をかける。
ソライスンが見てきてもらいたい所を、赤い○で囲んであると言っていた。
「・・・特にという所はなさそうだけどなぁ。」
左手で持ったランタンを頭の位置まで上げて、見回していたレイシャルムがつぶやく。
「そこの通路から行こう。」
ガイアが指を指した方向には、右に行く道と、左に行く道と、まっすぐの十字路がある。
「このまま、まっすぐいくのね。」
うんうんうなずきながらつぶやいたリーラの言葉に気が付いたホリィが一言。
「先に左に行くみたいですよ♪」
一瞬の間をおいてからリーラは、パタパタと右手を動かしながらこういった。
「わ、わかっているわよ。いってみただけよ。」
「でもこの人数で動いたら大変な事になりすわね。どうします?」
リティリアに急に話を振られたモケが一瞬とまどう。一理あることはわかってはいるが、人数が多いに越した事はないことも事実だ。
そんなモケにサナリーが声をかける。
「とりあえず、二手にわかれていくって言うのも手じゃないかな?ここで落ち会えば良いことですし。」
そんな8人の様子をかなり離れた後ろの方から伺っている人一人。
かなり離れてはいるが、地下は音がよく響くので会話の内容は理解できる。
「ふむ・・・どちらに行くべきだろうか・・・それとも・・・・」
レドは一人で考え込む。
だいたい二手に分かれた、その時だった。
元来た道のかなり奥の方から、男の悲鳴があがったのは。
レイシャルムが黙ってもと来た方に走り出した。その時、進むべき奥の方から女性の悲鳴が上がった。
判断がつきかねてキョロキョロしているリーラの腕をつかむと、元来た方に走り出すガイア。それを見て奥の方に走り出すホリィ。
モケに言われてそれに続くリティリア。
リティリアが元来た方に走り出したため、ちょっと迷ったあとモケ達と共に奥に走り出したサテ。
ホリィの後ろにサナリー、モケが続く。
◆元来た道・レイシャルム、リーラ、ガイア、リティリア・・・・・・&レド
レドは少し困っていた。
どちらの様子を見ようか迷っていた時、後ろから気配がしたので振り返ったとたん、チンピラにしか見えないような男が大きな悲鳴を上げて倒れたからだ。
「・・・・・」
倒れた男の様子をうかがおうかと思ったが、モケ達のいる方向から足音が聞こえてきた。
見つかってもいいのだがなんとなくカッコ悪い事に気が付き、落ち着いてマントをはずしながら移動する。
走ってきたレイシャルムが倒れている男を見つけると、慌ててかけよる。
なんどか体を揺すって気がつかせようとしている頃には、リーラ、ガイア、リティリアも到着していた。
気が付いた男にレイシャルムが声をかけると、男はこう言ってまた気を失った。
「あ・・・あかい・・・赤い死神が・・・・」
不思議そうな顔をして辺りを見回してから、リティリアはこうつぶやいた。
「誰もいないじゃないの。」
◆奥へ進む道・モケ、サナリー、ホリィ、サテ
先を走っていたホリィの脇をすり抜けて、その光景に最初に対峙したのはサテだった。
髪の長い女性が、紫の巨大なナメクジに追われているという異様な光景。
びっくりはしたけれど、持っていたランタンを紫の巨大なナメクジに向けて投げつける。
ランタンは空中でクルクルと回りながら、紫の巨大なナメクジの横の壁に当たり壊れた。その油が流れて引火する。
驚いて悲鳴を上げながらサテの方に駆けだした女性。
肝心の紫の巨大なナメクジの方は少しひるんだだけで、たいした効果がなかった。
その後、モケとホリィとサテの3人はなんとか紫の巨大なナメクジを倒すことが出来た。
が、サナリーの魔法で強化されていたとはいえ、剣がぼろぼろになっていた。
どうも紫の巨大なナメクジ自体が強い酸性であった確率が、高いらしい。
モケの左腕の所には、避けそびれて当たった紫の巨大なナメクジの唾のせいで、服が溶けて皮膚もわずかだがやけどをしたようになっている。
一段落して、モケがぼろぼろになった鞘(抜かずに殴っていた)を外そうかどうか、迷っていた時。
「はくぅ」
かすかな声だが、後ろでサナリーの声がした。
異常に気が付いたのは、ホリィだった。
「やめて!」
モケを突き飛ばして、サナリーと先ほど助けた女性の方に駆け寄り、なにかを取り合っているように見える。
3人の女性、それぞれの表情があまりにも異なるため、なにかがあるんだという事には気が付いている。
だが男であるモケには、ただ、ただ、女性と言う者は恐ろしいと感じてしまい、動けずにいた。
この3人の女性の取り合いに終止符を打ったのは、同じ女性であるサテだった。
「やめるなのよさ。」
いつの間にか近寄って、助けた女性の膝を折る。
モケにも何を取り合っているのか、やっとわかった。
助けた女性がしゃがんだ時、サナリーの首に手があった。と、同時に首にははっきりと締めていた手の跡があったことも。
素早くホリィが助けた女性の腕を背中に回し、ひねりあげる。
ゲホゲホとむせているサナリーを助け起こしている間に、サテが素早く助けた女性を縛った。
ぎち、ぎちぃ。
それが今、縛った女性の歯ぎしりだとわかるまで、少しかかった。
「もう・・・もう、少しだったのに・・・」
その声にサテが気圧されて、一歩下がる。
「もう少しで、念願のエルフの血が私のモノになったというのに・・・」
ホリィも気圧されているらしく、わずかだが震えていた。
「そうすれば、私の中に新しく命が宿るはずだったのに!」
サナリーの呼吸が整うまで待つつもりだったモケが、ゆっくりと立ち上がり、縛られている女性の方に進む。
「エルフの血・・・人間を越えた血ならば、きっと、きっと、」
縛られたまま中を舞い、暗く湿った地にたたきつけられる。
拳を握りしめたまま、モケが怒鳴った。
「トチ狂ってるんじゃねぇ!!!」
しばらくして、モケ達の所にリーラとレイシャルムが来た。
彼らの行った方に倒れていた男によると、近くに小規模ながら窃盗団の巣があるらしい。
一度戻ってどうするか決めないか・・・
何度も振り返りながら、レイシャルム達に続くホリィとサテ。
サナリーの首の跡から少し血がにじんでいて、喋ろうとするとむせる事もあり、大事をとる事にしたのだ。
縛ってある女性はまだ気を失っており、その窃盗団御用達の秘密の出口がすぐそばにあると聞いて、連れて行く事にした。
神殿に突きだした後、ソライスンの所で落ち合うことにしたのだ。
教えてもらった出口から外へと出たとき、モケは魔法をかけられた事に気が付いた。
ズキッとくる痛み・・・強くは無いものの、確実に体の中に広がっていく。
縛ってある女性を背中から地面に降ろすと、近くの壁によりかさって・・・痛みが増していく。
サナリーが心配そうにこっちを見ていたが、近くで音がしたので慌ててそちらを向く。
そのとたん、サナリーの体のあちこちに切り傷のようなモノができる。
悲鳴を上げる間もなく、倒れて動かなくなるサナリー。
ズキズキと悲鳴を上げる体をあえて無視して、駆け寄る。
かすかな笑い声に気が付き顔を上げると、縛られたまま座っている女性がいた。
「気絶・・・していたのは、フリか・・・」
悔しそうにつぶやくと、モケはサナリーに再度声をかける。
ズキズキと痛む体・・・
縛られたまま女性が立ち上がり近づいてくる。
慌てて剣を取ろうとするが・・・鞘がほとんどダメになっている剣で殴れば・・・
モケが迷ったその時、女性は勢いつけると倒れているサナリーの上にのしかかり・・・いや、勢い良く倒れようとしてきた。
慌てて女性を受け止めたとき。
気が付くと、体の中からの痛みは消えていた。が、それよりも体中が痛い。
薄暗い地下・・・目の前にはかなりの量と早さで水が流れている。
すぐ近くから足音と、聞いたような声がかすかに聞こえてきた。
赤いマントが目に入った時、死に神かとも思った。
「・・・・フン・・・」
全てを知っている。なにがあったか、何が起こったか・・・そして、今彼女がどうなのか・・・
妙な安堵感とともに、再度意識が薄れた。
気が付けばチャ・ザ神殿。
サナリーも横にいた。
しばらくしてから、ソライスンが入ってきた。
そして、神官に「小声で」と何度も注意されながも、話してくれた。
レイシャルム達が捕まえたのは、ギルドに顔を出していないモグリの連中だったらしく、300ほど報酬が増えたこと。
助けた女性が狂気にとりつかれた暗黒神官で、以前パダ周辺の村々で同じ事をしていたらしいこと。
「おまえさんを助けたヤツ?あんな変わりモンに会ってどうするんだ?」
「知っているのか?」
体を起こそうとしたが、サナリーにとめられる。
「あの赤マント・・・おめぇらの事が心配だからって言ってな。仕事の内容やら、人数やらを詳しく聞きまくった上に、コソコソと後ろから付いていったらしいな。その後どうしておめぇだけを連れて戻ってきたのかわからねぇけどな。」
わけがわからずにいると、サナリーがこう言った。
「私がレイシャルムさん達に助けてもらった時には、私一人しかいなかったと・・・」
「どうやってお前さんを見つけだしたのかさっぱりわかんねぇが・・・そんなちっちぇえ事はいい。オレが確認したいのは、その暗黒神官とやらの行方を知っているかどうか。なんだよ。」
目を閉じて考える。だが、答えはすでに出ていた。
「わからない。」
しばらく黙っていたソライスンだが、たった一言こういった。
「ならいい。」
その後、サナリーに報酬を手渡す。
「手伝ってもらった連中ぐらいは、自分で渡せ。じゃ、体大事にな。」
いくつか聞きたい事もあったのだが、その前にソライスンは立ち去っていった。
サナリーの首には白い包帯がまかれている。
それがなりよりも痛かった。
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