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No. 00173
DATE: 2000/10/07 13:26:11
NAME: コロム他
SUBJECT: 揺れる恋心(悪意ある偶然)
これはエピソード14−112にある「揺れる恋心1」の・・・・続きに当たるエピです。
読まなくても全く問題ありませんが、気が向いたら読んでください。
参加者は、クプクプ、フェイル、カレン、ミニアス。
そしてコロムです。
森の中をそれは走っていた。
それはそれまでの生きていた時間をすべて否定されるような目にあっていた。
そしてそれは、なぜ自分だけがそうなのか。なぜ自分だけこうなのか。
そう考えていた。
いつしかそれは、自分と同じ目に合わせる事ですべての者に復讐すると、胸に誓う。
その考え事体が曲り歪んでいる事にさえ気付かずに・・・
14日の一日目。
「お腹の調子が・・・」
背中を向けたミニアスの背に飛びついて、おへその辺りをなでながらわたしはこう言った。
「この辺?それとも・・・」
胸の辺りに手を伸ばそうとしたけど、そこはミニアス。わたしの手を振り払い2、3歩距離を取ってから慌てて言った。
「治った、治った。だからそれはやめて。」
わたしは満足げに振り返ると、あきれた顔をしているカレン達。
ここはオランの東の門。
朝早いのは、依頼の村まで一度行かなければいけないから。
マスターの話によると村は歩いて半日くらいの所にあるらしいから・・・うん。大丈夫。
カレン達のペースで今回は歩けそう・・・だってわたしよりも小さい人がいるんだもん。
「誤算・・・・」
先に歩いているミニアスが呼んでいる。その横でわたしよりも背が低い、クプクプも呼んでいる。
なんでそんなに元気なの?!>クプクプ
草原の民、グラスランナー・・・いたずらだけじゃないのね、甘く見ていたわ。
すでに荷物の一部はカレンに持ってもらっているから、これ以上は無理かな・・・
「大丈夫ですか。」
わたしを気にして、ゆっくり歩いていたフェイルが声をかけてくれた。
でも、どことなく言葉にトゲを感じるんだけど・・・でも、そこがまたかっこいいの!
顔をあげるとカレンと目が合っちゃった。
こういうのを心が通じているっていうのかな。へへへ。
お昼をすぎた頃、依頼のある村についた。
疲れたし、おなかはぺこぺこだし・・・・
気をきかせて、カレンがフェイルと2人で依頼主の村長さんの所にいく。
小さな村だけど宿兼酒場があったから、わたしとミニアスとクプクプの3人は先にお昼にすることにした。
「・・・言っとくけど今から行くって事もあるから、お酒はだめだよ。」
ミニアスの一言に抗議しているクプクプ。
「はいはい、子供はジュースでも飲んでなさい♪」
クプクプに運んできてくれたエールをさりげなく取ると、口に持っていくわたし。
ほどよくエールの入ったコップを傾けた時、コップの底が勢い良く上にあがる。
口に入りすぎて思わず「ぶぶぅ」と前方に向けて勢い良く吐き出してしまったわたし。
顔をあげて笑い転げているクプクプに何か言おうとしたとき、びしょぬれになっているおじさんと目があう。
あ、わたしの前に座っていたミニアスは立っている。じゃあ、その奥に座っていた人なんだ。
「いやん、ごめんなさい。」
にっこりと笑うわたしに、ミニアスは頭をかかえていた。
体についたエールを洗い流したあと、着替えて降りてきた所でカレンとフェイルが戻ってきた。
ミニアスはあのあと、びしょぬれおじさんとケンカになって外にでて・・・戻ってきていると言う事は、勝ったのかな?
あ、クプクプがなんか村の人と話している。賭けていたのかな。
席につきカレンとフェイルがそれぞれお昼を注文する。
その後、カレンはわたしにこう聞いてきた。
「なんかあったんだな。」
「うん。大した事じゃないけどね。」
にっこりと笑って答えるわたしに、カレンはミニアスとクプクプに視線を移す。
互いにそっぽ向いているミニアス、クプクプ。
フェイルは我関せずとばかりに店員が持ってきたお昼を食べている。
なんかおかしくて笑えるね。
その後、カレンとフェイルの口から仕事の内容の確認をする。
村から2時間程西に歩いた岩山のところに、ゴブリン達が住み着き始めたのは1ヶ月前。
まだ村自体には被害はないものの、岩山とこの村の間の森が使えない事が痛いらしい。
「猟をしている人達にとっては近場がダメになった事は、大きいもんね。」
ミニアスがぼそっと言う。
「今から行くと夜になるので、明日の明け方前にここを出で行く事で依頼主は納得しました。」
フェイルの言葉を聞くと、わたしはミニアスに向かってこう言った。
「今から行かないんなら飲んでもいいよね♪」
「すきにすれば・・・」
まだミニアスはなにか呟いていたけれど、ま、いいよね。
そのあと時間があったので、ミニアスとフェイルは散歩に出かけた。
クプクプもちょっと遅れて出かけた。
う〜ん、みんな気を利かせてくれたんだ(思い込み)
ね、カ・レ・ン♪
15日の二日目
夜が明ける前に宿から外に出る。
う〜、ちょっと肌寒い・・・昨日の夜遅くまで起きちゃっていたから、かぜひいちゃったかなぁ。
フェイルが途中まで道案内してくれる人と話をしている。
熟練の猟師でも、たまに迷う事があると言われている程の森だと、寝る前にカレンが言ってたっけ。
みんな揃った所で出発。
森の中はまだ暗く、足元に注意していないとこけてしまいそうな気がする。
「最近はこの辺でもオオカミがでるようになったんですよ。」
道案内の人がポツポツと独り言のように言いながら、獣道をどんどん歩いていく。
朝日が差し込み、木の隙間から岩山が見えるようになった所で、案内人と別れる。
うん。ここからがメインなんだよね。
ずっしりと重量感ある斧を背中から降ろして、両手でしっかりと握る。
「大丈夫か、重くはないか?」
カレンの言葉にわたしは、にっこりと笑いながらこう答えた。
「大丈夫。わたしだって強くなったんだから。」
ちょっと震えてるいるのは、武者震いってのなんだ。
ちょっと、ちょっとだけ、風邪引いているかも知れないけど、大丈夫なんだ。
がんばる、わたし。
カレン、フェイル、クプクプがナイフを自分の手にとって感覚を確かめい・・・・る?
「みんなナイフなんだ。おそろいだね♪」
ちょっと離れた所でミニアスがショートソードを下げている事に気がついたのは、しばらくたってから。
岩山の所にある洞窟を発見したのは、それからしばらくしてから。
見張りは・・・いる。ゴブリン3匹。
洞窟の所まで距離があるし、背の高い草なんかはない。
二手に分かれて片方が陽動、片方が本命ということにした。
わたしはもちろんカレンと・・・
「コロムは・・・クプクプと一緒に陽動の方がいいな。」
ひっど〜い。
でもカレンの事だから・・・わたしが怪我しないようにって思って言ってくれたんだろうな。えへへへ。
はっ、と気がつくとすでにクプクプと2人きり。
勝利の女神のキスを忘れるなんて・・・まったくも〜、カレンたら♪
問題無く門番の3匹を倒すと、誰から中に入るかと言う相談になる。
結局、カレン、わたし、クプクプ、ミニアス、フェイルの順番になったんだけど・・・本当はミニアスが最後だったんだけど、フェイルの要望で変更したの。
なんでかな。
中は結構明るく・・・・なんかありません。
でも真っ暗じゃなくて薄暗いくらい。ランタンがあるけどね。
本当はカレンの服を掴んで歩きたいけど、それをするとカレンの邪魔になっちゃうから我慢、我慢。
ん〜、わたしってばえらい♪
「・・・・」
はっ、と気がつくとクプクプがニヤニヤ。
その隙にカレンとの距離がちょっと開く。慌てて駆け寄った時、急に立ち止まったカレンの背中にぶつかり・・・2人で大転倒。
持っていたランタンも音を立てて壊れて・・・・
その音で飛び起きた(と思う)ゴブリン達が奥の部屋から出てきた。
「コロム!」
とっさのクプクプの一撃が、倒れているわたしとカレン狙ってきたゴブリンの頭深くに突き刺さる。
お礼を言う前に立ちあがらなきゃ。わたしは足手まといなんかじゃないんだから。
フェイルがなにかつぶやく。
それが聞こえた私は慌てて振り返った。
普通のゴブリンとはちょっと違う格好をしたゴブリンが、普通のゴブリン2匹と一緒に後ろから来た。
服装が違うだけなのかも知れないけど、なんかちょっとちが・・・
ランタンの油がはでた。その拍子に見えた、格好の違うゴブリンの服。
服には大きく書かれたあの紋章・・・
手が震える、目をそらせない、力が抜ける・・・
泣き叫ぶ事もできない。声が出ないから。
ガタガタと震えるわたし。足手まといなんかになりたくない、けど、けど・・・
フェイルの声がする。でも、なんて言っているのかわからない。
不意に格好の違うゴブリンが視界から消えた。
フェイルが連れていた2匹のゴブリンの隙を縫うようにして、格好の違うゴブリンの所まで移動したんだ。
と、いうのは後から聞いた話。
はっと、気付いたら2匹のゴブリンは目の前。
一匹の攻撃をカレンのダガーが受け止め、流れるように持っているゴブリンの喉をナイフで切り付ける。
もう一匹はフェイルがちょうど止めを刺したところだった。
顔を上げるとカレンの心配そうな顔があった。
「うわ〜ん」
声を上げて泣き出したわたし。
その後、わたしとカレンだけ洞窟の入り口で待つ事にした。
わたしがこんな状態だし、それに一人だけでは不安だからという事みたい。
ちなみにわたしが声を上げて泣き出した時、まだ残っていたゴブリン達もかなりびっくりしたんだって。
ミニアスが言うには「味方まで驚かしてどうするの・・・」という事らしいけど、ね。
しばらくして3人とも無事に洞窟から出てきた。
多少価値の在りそうな物もあったら取ってきた・・・というのはミニアスの言葉。
彼女、借金がまだあるから結構ガメつくなっているわね・・・
帰り道はクプクプがわかるみたい。
やっぱり、いたずらだけで冒険者やっているわけじゃないみたいね・・・
実は洞窟からカレンと2人で出てきたあと、なんにも喋ってないの。
わたしはフェイルに助けられたけど、カレンにも助けられたの。
なんか混乱しているぞ、わたし。
それにしても・・・さっきから寒気がする。本当にカゼ引いちゃったかな?
帰り道、途中クプクプが道に迷っても何も言わなかったから、大変な事になりかけたの。
クプクプは「細かい事を気にするなよ。」って言うけれど。
森の終わりが見えてきた頃、フェイルが急に立ち止まった。
後ろにいたミニアスが気付かずにぶつかってるけど・・・あれ?これは何の声?
・・・
「オオカミ・・・かな?」
ミニアスがそうつぶやく。
けど、なんかこの声、やけに近くない?
突然わたしの横の草むらから一匹のオオカミが飛び出してきた。
「痛い!」
左腕に噛み付かれた拍子に、尻餅をつくような形で倒れるわたし。
カレンがナイフを貫くよりも早く、フェイルがオオカミの顔めがけて拳を振り下ろす。
ギャィン
そう鳴くのと、口が左腕より離れるのは同時だった。
慌てて草むらへと姿を消すオオカミ。
ミニアスが追おうとするのを止めるクプクプ。
とりあえず、傷口に布を巻いて出血を止めて・・・って、あれ?なんで地面が上にあるのかな?
ミニアスがわたしの名前を呼んでいる。
カレンが慌ててわたしの肩を掴んでゆする。
なんでかな?
コロムが倒れた後、急いで森を抜けたカレン達一行。だが・・・
あると思っていた村がなく、貴族風の邸があるだけだった。
盗賊とかに怪しまれる事も承知で、邸の門を叩く。
かなり怪しまれたがこの邸の主の許可が下りた為、コロムをベッドで寝かす事ができた。
その後、ミニアスとクプクプが村までの道を聞いて、一度報告に行くと言い出す。
「日が暮れる前までには戻ってこれると聞いているし・・・大丈夫だって。それに」
すばやく辺りを見回してから、ミニアスはこう付け加えた。
「ここはなんかへんだからね。」
「それについては分かっている。」
カレンが短く返事をする。ただ待っているだけではなく、少し自分なりに調べてみるという意味が返事の中には含まれている。
それに・・・
「面会謝絶・・・?」
「はい。そうするようにご主人様から聞いておりますので。」
思わず横にいるフェイルと顔を合わせる。
館の主人に医学の心得があるというので、コロムの様子を見てもらったのだが・・・こう来るとは。
しかたなく、最初に案内された部屋に戻る。
「村人達の噂では、悪くは言ってなかったのですが・・・」
ちょっと面食らったフェイルがつぶやく。
「昼間動くのはまずいかも知れないが・・・ミニアス達の帰りを待った方がいいか、それとも今動くべきか・・・」
腕をくんで考え込むカレン。
結局は、明るいうちに動くのは得策ではないという結論に達していた。
日が暮れて、少しずつ辺りが暗くなっていく。
まだミニアス達は戻ってこない。
「・・・・」
無言でお互い部屋を出ると、別々の方向に向って歩き出す。
カレンはまっすぐコロムのいる部屋へ。
フェイルはこの館の主の部屋へ。
短時間で。すばやく。ダメな時はすぐにでも元の部屋に戻る。
カレンにとってフェイルに盗賊の心得がある事は、今は好都合。
だが信頼出来るかというと、話は別である。
カレンの長年のカンというものが、フェイルは危険人物と認識していた為である。
コロムの部屋の前までくると、中から話し声がした。
なんて話しているのか聞こうとしたが、こちらの気配に気付かれたらしい。
すぐに部屋の戸が開いて、中から邸の主がでてきた。
邸の主は部屋の戸を閉めると、おだやかな声で聞いてきた。
「やはり気になりますかな。」
「まあな。」
あっさりと認めたカレンに、邸の主はこう続けた。
「とはいえ、今はまだ容体が安定してないのでな。今夜は泊まっていかれるといいですな。」
「会う事はできないのか。」
ふふふと低く笑うと、邸の主はこう言った。
「やはり仲間の事は心配ですかな。じゃが、今夜はまだだめですな。」
明日の朝にならなければ、どうとも言えない・・・そう暗示しているのである。
ため息ひとつつくと、カレンはこう言った。
「わかった、アンタを信用しよう。コロムの事・・・頼みます。」
無論本心であるわけがない。
が、今ここであからさまに敵意を現せば、コロムが無事にすむはずはない。
後味の悪い言い合い。
「・・・くっそ。」
元の部屋に戻ってきてから、くやしそうにつぶやく。
と、ちょうど無表情のままフェイルがもどってきた。
話によると、魔法の鍵がかかっていて部屋の戸が開かなかったらしい。
「この邸の主は魔法が使えるのか・・・」
その辺りがコロムだけを別の部屋にして、会わせないようにしている理由か?
それとも、なにかの研究として・・・
ぐるぐると考えめぐりをしているカレン。
途中、夕食の誘いがあったが気が乗らず断わる。
その後かなり時間が経った。
突然フェイルが慌てて窓を開ける。
「どうした。」
「誰か近くにいたように思ったのだが・・・」
すでに辺りには夜の闇が広がっていた。
その時、ガサゴソと近くの草むらが動いた。
「・・・お前か。ミニアスはどうした?」
建物の壁にぴったりとつくと、クプクプはこう答えた。
「少し離れた所にコロムと一緒にいるよ。オイラは荷物を取りに来たのと、それを連絡しにきたんだにゅ。」
間。
我に返った二人が荷物をまとめて窓から出ていくまで、そんなに時間はかからなかった。
「本当に大丈夫なのか?」
「うん。前よりも調子がいいくらいだよ♪」
力一杯元気にカレンに返事をする、わたし。
でも本当に調子がいいんだよ。
どうやって邸を抜け出したかって、フェイルさんが聞いてくるんだけど、わたしはちょっと首をかしげながら。
「よくわかんない。でもね、カレンに会いたいな〜って思っていたら、気がつくと外で寝てたの〜」
拍子抜けしたような顔をするフェイルさん。う〜・・・でも本当なんだから。
「あとで服かえしてよね。その服結構気に入っているんだから。」
「でも胸のところが伸びちゃっているかも知れないけど・・・いい?」
あれ、なんでミニアス落ち込むの?
「?・・・服きていなかったのか?」
カレンに聞かれてコクコクとうなずくわたし。
でも本当になんでなんだろうな〜って、考えていたとき。不意にわたしのお腹が「ぐぐぅぅ〜」という意見を出したの。
「あ・・・あはははは。おなか空いちゃった♪」
ガクっとうなだれるカレン。どうしたのかな・・・って思ってのぞき込むと、ニコッて笑ってくれたの。
「オイラも村まで行って食べる方に賛成♪」
クプクブが元気よく手を挙げてそう言うの。
やったあ、味方がきてくれた〜。
「そうですね。どちらにしても村まで一度行かなければなりませんから、そうしましょう。」
「わ〜い。これで決定ね♪」
フェイルさんもこっちの味方になってくれた。
ミニアスはなんかブツブツ言っているけど、気にしない気にしない。
「おい。あのじいさんから依頼が来たんだろ。」
「ん・・・・まあな。」
中年ぐらいの男が手渡された金を手で数えて、しばらく考える。
「親父、あのじいさんからの依頼はなんだって?またガキとか若くて元気そうなヤツを捕まえてこいとかってのか?」
ヘラヘラとしゃべりまくる男に、「親父」と呼ばれた男は静かに答える。
「期限を切られているんでな、確実にしとめたい。おまえよりももっと腕の立つのに頼むつもりだ。」
ちぇっ、と小さくつぶやくと、男はまた違う依頼の話をし始めた。
『三ヶ月以内に下記の者を連れてくる事(生死不問)
金髪ショートの青い目をしたコロムという名の女。
期限内ならば成功報酬10000ガメル・・・以降2000ガメル』
「・・・・おい『F』とつなぎを取れ。ヤツに仕事だ。」
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