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No. 00189
DATE: 2000/10/29 20:24:30
NAME: グレン
SUBJECT: 初仕事(2)
きま亭のマスターに聞いた家はココかな?
「ウン、大きな樽が二つ、ここだ!!」
昨日は道に迷ってとんでもない目にあってしまったが、今度こそ大丈夫そうだ。
「しかし、どでかい家だな。俺んちの数十倍はありそうだ。」
グレンは大きな門を通り、玄関の前まできた。
「ごめんください」
「ハイ、少々お待ち下さい」どうやら執事の声らしい。
扉を開けた執事は彼を見ていやそうに尋ねた。(何だこの汚いチビは?)
「何の御用でございますか?」
「あ、はい、おれっ、違う、私はドワーフのグレンと申します。ブルカティーナお嬢様の護衛を捜しておられるそうで、きままに亭の主人に聞いて参りました。」
(執事)「それなら昨日お見えになると聞いておりましたが?」
(グ)「申し訳ありません。見ての通りの田舎者で、道に迷って伺うことが出来ませんでした。」
(執事)「左様ですか。では、お嬢様のところへ、ご案内いたします。」
グレンはブルカティーナの部屋へ通された。部屋では、ブルカティーナが待ちくたびれた様子で、彼を迎えた。
「いつまで待たせるの!!!私は、早くキャンプに行きたかったのに。」
(グレン:何だ子供か、身長150cm位で15・6歳といったと頃かな?)「申し訳ありませんでした。で、どちらへお出かけになりますか?」
「ここからしばらく行った所の川辺よ。それよりあなたなんて格好をしてるの?そんなのじゃ一緒に歩けないわ。」彼女は執事に目を向け何か合図した。
執事は、グレンに近寄ると突然服を脱がせ始めた。
(グレン)「なっなにをするんですか???」
「その服じゃ、あんまり汚いから服を差し上げるわ。お兄さまの服を持ってきてちょうだい。」彼女がそう言うと、パンツ一枚の姿になったグレンを残し執事は出ていった。
「なんて事だ!!ハッハクシュ〜〜ン。ハァーア。もう気取るのはヤメだ。なーいいだろ。君のことはなんて呼べばいい。俺の名はグレンだ、よろしくな。」
そういう彼の姿を見て、笑いながら彼女は言った。「クスクス。私のことはティナでいいわ。グレンおじさん」
「おれはまだおじさんじゃない。呼ぶならグレンだけでいい。」
コンコン「お嬢様、持ってまいりました。」執事の持ってきた山のような服の中から、ティナが服を選びながら聞いてきた。「グレンっていくつなの?」
「俺は30になったばかりだよ。君はいくつなの?」ウーッブルブル
「もう少し待ってね、クス。私はもうすぐ15歳になるの。うん、これがいいわ。」
彼女の選んだのは、どうやらお兄さんの子供の頃の服で、茶色いズボンと真っ白いシャツに緑と赤のチェックのベストだった。
(ティナ)「どう、気に入ってもらえたかしら?」
(グレン)「ウン。とてもいい感じだよ。」
鏡の前でくるくる回るグレンを見ながら、彼女は立ち上がり言った。
「それでは、出かけましょうか。」
それから、ティナとグレンと沢山の荷物を積んだ馬車は、夕暮れ近くにやっと川の畔に着いた。早速グレンはキャンプの準備を始めた、その間ティナはその周りを歩き回ったり、夜空を見上げたりしていた。
(こんな静かな所へ一人で来て何が楽しいんだろう?)「もう辺りは暗いから遠くへ行かないで下さいよ。」
食事の支度が終わり辺りを見るとティナの気配がない。(しまった!!)
「ティナーッ何処に居るんだー。」グレンが川の縁を走り出すと、「ここよ」ティナの声だ。ドワーフの彼は暗闇でもモノを見ることが出来る。声の方を見ると、ティナが川のすぐ側でしゃがんでいる。「何をしてるんだ!」
「あのね、此処には時々うっすらと光る石があるの。きっと上流から流れてくるんだろうと思っているんだけど。此処でしか見つけられないのよ。」
(そんな石、在っただろうか?)
「だからってこんな暗闇じゃ危ないよ」
(ティナ)「でも暗くないと光っているのが分からないのよ。お願いもう少し待って」
「はいはい」(しょうがないな、とりあえずこの周りには危ない気配はなさそうだ)
「ごめんなさい。見つからなかったわ、食事にしましょ。」
ティナは食事をしながら話し始めた。「その『光る石』ってね、私のおばあさまに聞いたの、私はまだ見つけたことがないんだけれど、その石は、秋が深っまたこの時期にだけ此処で見つけることが出来るんですって。
その石で作った装飾品を身につけていると、すてきな出会いが出来るっておばさまは言ってたわ。」
(メルヘンチックな話だけど、眉唾物だな、しかし、「すてきな出会い」か、やっぱり女の子だねー。)
「もし、見つけることが出来たら元指輪職人の俺がかわいい指輪にしてあげるよ。」
それからしばらく二人はお互いのことを話し合った。
「いろいろあったのね。私もがんばらなくっちゃ、もう少し探しに行きたいんだけれど良いかしら?」
「ああ、一晩中でもつきあうよ。」
それからしばらく川辺を探し歩いたが見つかる事はなく、深夜になってから二人は眠りについた。
グレンは、きままに亭でアンジェラの最初の戦闘はコボルトの夜襲だったと話していたのを思い出して、浅い眠りにしかつけなかった。
翌朝、二人はゆっくりと朝食を済ますと、帰り支度を始めた。
「ねえ、グレン、次に此処にくるときも一緒に来ていただけるかしら?」
「もちろん、君から依頼があればいつでも飛んでくるサ。」
二人の間に、不思議な友情が生まれていた。
帰りの道中でも二人は楽しい会話を弾ませ、その道中がとても短く感じたのだった。
夕暮れ前、彼女の家に着きとうとう別れの時が来た。
「グレン、とても楽しかったわ、ありがとう。報酬はきままに亭のマスターにお渡ししてあるわ。何か困ったことがあれば私に相談してね、出来ることなら、お手伝いするわ。」
「こちらこそ、どうもありがとうございました。私に用があればどんな些細なことでもお受けいたします。」
「何を気取っているの、私たちはもうお友達じゃない。頼みがあればすぐ声をかけるわ、それじゃどうもありがとう、さようなら。」
「ああ、さようなら。」
グレンは初めての仕事を全うしたことの喜びよりも、新しい友が出来たことに胸が躍り、彼女に別れを告げた。
(初めての仕事で、あんないい子に出会えるなんて幸せだな。)
「さあ、これから『まに亭』にでも行くか!!!」
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