No. 00193
DATE: 2000/11/12 00:19:59
NAME: アイシェン・リー
SUBJECT: 満月の華
今、僕はエストン山脈にほど近い村にいる。
なんでこんな所にいるかと言うと知り合いの吟遊詩人から聞いた話の真偽を確める為だ。
それは「秋の終りと言うか冬の始まりの満月の晩、満月が空の一番高い所にある1時間の間だけ咲く花がある」と言う事だ。
そんな物が本当にあるのなら見て見たいと思い僕はその花が咲くだろう場所に近い村にきているのだ。
村の人の目はどちらかと言うと好奇心を含んでいた。外から人が来ることは珍しいらしい。
それは良いことだと思い僕は目的の日になるまでその村の村長に村に伝わる伝承などを聞いていた。
その中になかなか興味深い話があった。
それはあの「満月に咲く花」についての事だった。
村ではそのはなを「満月の華」や「月の花」と呼ばれていると言う事だ。
その花についての話と言うのを聞いた。
”月の花に背をむけて見上げた先にある星の方に進めば隠された扉が在るべし。
扉は月の乙女により開けられる。”
と言うものだ。
これはまるで遺跡の在りかを歌っているようなものでは無いか。
それを裏付けるようにその遺跡に住んでいた魔術師についての話も伝わっていた。
その魔術師は月の花が咲いた夜に月の乙女と呼ぶにふさわしい乙女をその花の側で見かけたらしい。
その乙女に恋し、花がよく見える場所に研究所を作ったと言う事だ。
何を研究していたかはわからななかったが、その乙女にもう1度会いたいと強く願っていたと言うことらしい。
来る日も来る日も乙女の事を考えてみたいな事を聞いた。
はっきり言って僕にはわからない事だった。そんな一度見たものにそこまで執着する事が・・・。
美しいものは一度見ればそれは自分の中で永遠に輝き続けるものだと僕は思っているからね。
ま、花を見に来たついでに面白い話を聞いたと思う事にし、その村を後にした。
その村を離れて1日。村人にだいたいの場所を聞いていたので花が咲く場所にはなんとかつく事ができた。
もし場所を聞いて居なかったら迷う事は確かなものだった。
事実この花の場所に来る途中、何度も迷いそうになったからだ。
僕が花の場所についたのは、日はどっぷりと暮れ満月が夜空を飾りだした時刻だった。
なんとか咲く前につけたようだった。もしこれが咲いた後だったらこんな所に来た僕はくたびれもうけも良いところだったからね。
そして待つこと数刻、満月が一番輝く場所に来かけた時、花は咲きだした。
月の光を浴びて咲きだした花は確かに「満月の花」だの「月の花」と呼ばれるにふさわしい美しさだった。
そして僕は自分の中の記憶と言う紙にその花の姿を焼きつけた。
普段はそれで終るはずだがふと村で聞いた話に興味をもち、歌の文句が告げる行動を取った。
満月の光に消されないように輝こうとする星をなんとか見つけると僕はその方向に歩きだした。
数刻、歩いたのち茂みに隠れるように在るほら穴を見つけた。自然に出来たと言うには不自然で在り、かと言って人工的にも見えなかった。
僕は誘われるように、その中に入って行った。
明かりは手元の松明一本だけで在る。
頼れる仲間は誰もいない。
とくに奥まで行こうと思っていないから大丈夫だろうと思い奥に進む。
だがさほど行かないとこに立派な扉が道を塞いでいた。
これが隠された扉かと思いそっとふれて扉の様子を調べてみる。
確りした扉だ鍵穴は無い。とりあえず押してみたが開かない。次にひいてみたが開く様子はない。
これは魔法がかかっているのだろうと思い僕はその場所を後にした。
目的の物は見た後だったから・・・。
この話はオランに帰ったら冒険者達にでもしてみるかと思ったね。
興味を持ってくれそうだから。さてどんなやからが興味を持つのか楽しみだね。