No. 00001
DATE: 2000/12/09 03:03:03
NAME: パムル
SUBJECT: 今日の風景
倉庫の立ち並ぶ港の一角に、ちょっとした喧騒が起っていた。
数人の男が手に手に掃除用具を持って物凄い形相で走り回っている。
そう、この連中オランにおけるファリスの清掃部隊である・・・といってもその殆どが軽犯罪を犯し無料奉仕させられている連中などであるからして、品などはカケラも見当たらない。むしろこんな連中が裏路地なんぞに溜まって清掃作業に勤しむ様など見てしまったら幼い子供は泣いて逃げ出すこと請け合いだ。そんな彼らであるが、今、頭から湯気が立ちそうなぐらい憤怒していた。何故なら、その怒りの元が目の前を走り逃げ去ろうとしているからである。
逃げるは一匹・・・もとい一人の草原妖精だ。姿形まで人を食ったような出で立ちをしており、その背丈は追手連中の腰にも満たないかもしれない。比例して足も相当短い筈ではあるが、その逃げ足の速さといったら見た目を裏切ってほとんど魔法仕掛けのよう。見る間に清掃部隊の連中を引き離しどんどん先まで駆けていく。
しかし、追方とてそう間抜け揃いという訳でも無く。足だけなら到底追いつけないだろうがそちらには人数の利があった。3手に分かれてその草原妖精を袋小路に追い詰める。
草原妖精は退路が無いと見て取ると目の前の連中に愛想笑いをへらりと浮かべてみせる。が、怒りを煽りこそすれ男たちの怒りが静まる筈は毛頭なかった。此処の所毎日のようにこの草原妖精の「落描き」に頭を悩まさせ続けていたのだから・・・。汚すことに比べると清掃するということの如何に大変な事か。ましてや落ちにくい染料でべったりと壁一面を極彩色に染め上げた落描きなんて、見ただけでこの男たちにとっては「悪」以外の何者でもないのであり。ただでさえ鬱陶しい作業に従事させられているというのに、仕事を増やしてくれる目の前のチビコロが親の仇の様にその目に映っていたとして誰が疑問に思おう?
それから数日の間。その界隈では清掃作業に従事するグラスランナーという奇妙な風景が見られたとの事です。
「やぁ、馬糞拾いって大変やねぇ兄ちゃん。オイラ絵筆より重いもの持った事ないのに〜♪(踊)」
「歌うな!踊るな!だまって拾えェ!!!!!この落描き魔ーーーッッ(怒)!!」