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No. 00008
DATE: 2000/12/20 00:51:22
NAME: リュイン
SUBJECT: 何度目かの挑戦
鍵の掛かったこの箱を貰ったの10歳の誕生日の時だった。
弟のリュアンは難しそうな本を貰っていた。
親曰く、「これが解けた時、自分の力になっている」と。
と言われてもその当事はおもしろくなかった。
開かない箱を貰ったから・・・。
だけどあれから何度あの箱に挑戦したのだろう。
始めは開ける事は不可能だと思って居たが、冒険者として色んな経験を積む度に鍵を開けれる気も大きくなっていった。
そして1番最後に挑戦したのはザインからオランに戻って来た時。
あの時、たしかな感覚があった。開けられる。そう思ったけど、あとちょっとのとこで失敗した。
悔しかったけど開ける為にがんばろうと思いも大きかった。
そして今日、また挑戦をする。
枯れた遺跡とは言え、僕が振った話しだ。もしもの時が無いように自分の今の実力を知る手段としてこれに挑む。
今は一人、リックはいない・・・その方が集中が出来るし、何よりこんな事をしているなんて知られたくないからだった。
部屋にある机に箱を置き鍵穴に道具を射し込む。
指先に神経を集中し少しの反応も見逃さないようにする。
今日こそは開けられるそんな気分に支配されていた。
そして数秒、数分後だったのかもしれないが僕にとっては何時間もかかったような気がしていたが、確かに鍵はかちゃりと小さな音を立て開いたのである。
鍵を開けた瞬間、いままでこの箱に挑戦して来た時の自分を思い出した。
悔しくって泣いた事、何度も投げだした事、でもそれも今は良い思い出だった。
はやる気持ちを押さえつけゆっくりと箱を開けるとそこには手紙らしいものと小さな鍵が鎖に通されペンダントになった物が入っていた。
ゆっくり手紙を持ちあげ開けるとそこには懐かしい母親と父親の字が書いてあった。
”リュイン、あなたがこれを見るのは何時なんでしょう。何時かこれを見るあなたの事を思いながら今これを書いて居ます。
今のあなたは何をしていますか?兄弟皆仲良くしていますか?これを開けこれを読んだ時あなたは何を思いましたか?
色々聞きたい事がたくさんあるわ。でも一番聞きたいのは、「今、あなたは幸せですか?」の一つです。
どんな道に進んだにしろ、あなたが幸せであることが何より嬉しい事よ。
忘れないで、どんな時も私達はあなたの事を思っているから
母より
これを開けた自分の力を信じろ。
お前はこの箱をあけたんだ。それなりの実力があると言うことは確かだと覚えておけ。
自分を信じる事、他人を信じる事、冒険者の道を歩んでいるのならこれを忘れるな。
もし判らなくなったらこの鍵をとれ。それはおまえの心を開ける鍵だからな。
ここまで成長した事を嬉しく思うぞ。だがここで止まらずさらなる努力を続ける事を忘れるなよ。
父より”
手紙を読み終った時、この箱をくれた時に言っていた言葉の意味を理解した。
なによりも自分の事を思ってくれていた親に感謝をした。
その時かちゃりと音を立て扉が開いた。リックが帰って来たのだ。
部屋に入るなりリュインの様子が変なのはすぐに判る事だったので、
「おい、どうした?」
と聞くとリュインは確り鍵を握りしめてからリックを振り返り、
「今ね、とっても大事だった人からとっても大事な物を貰ったとこなの」
「それは良かったな」
とだけ言うとリックはリュインに近づき軽く頭を撫でていた。
するといきなりリュインは、
「ね〜リック・・・今仕事をしていないよね。枯れた遺跡だけど一緒に行かない?」
一つの事が終り次へのステップが今始まった
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