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No. 00009
DATE: 2000/12/22 18:59:14
NAME: メリープ
SUBJECT: 13年前……あの頃から彼女は……
「ねぇねぇ、ママぁ。あそこにかわいいおんなのこがいるよぉ?」
「何を言っているのかしらねぇこの子は。あんな草むらの中に女の子なんている訳ないでしょう?
あなたからも何か言ってやってくださいな」
新王国暦500年。ちょうど節目の年。オランのちょっとした公園での会話である。
「だっているんだもん!あそこで、ちいさいおんなのこたちが、くすくすわらってるんだよぉ!」
幼い少女が、必死になって両親に訴えている。しかし、小さい手の指し示す先には、確かに誰もいない。
母親は困り果てた表情で父親にくり返す。
「ねぇあなた、何か言ってやってくださいな。」
「……そこに見える女の子って、どんなふうに見えるかな?」
父親はしばし考えた後、幼い娘にそう訊ねた。
「んーっとねぇ……ちっちゃいの。それでね、みどりのかみのけとねぇ、みどりのめだよ!」
「じゃぁ、何人いる?」
「いち……にぃ……さん……ごにんいるよ。パパにはみえるの?あのおんなのこたちがみえるの?」
父親は娘に苦笑を返してかぶりを振る。がっかりしたような表情を見せる娘に、父親はしゃがんで娘と目線を合わせ、言い聞かせるように口を開いた。
「パパにも、ママにも見えないな。多分、お前が見ているのは精霊だろう。この世界の全ての自然に宿る、神様みたいなものだよ。」
「セイレイ?かぜとか、みずとかにいるカミサマみたいなものなの?」
「ああそうだよ。お前は特別に精霊が見えるみたいだね。勉強すれば、彼等の言葉を聞き、そして話すこともできるようになる。」
「そうなの?わたしにも、できるの?」
「あぁ、もちろんだよ。そうして仲良くなれば、精霊達の力を借りることだってできるようになるんだ。」
幼い少女は、これからの自分を想像できるわけではなかったが、それでも何かすごいことができるかも知れないと、目をキラキラさせている。
「だから、頑張って勉強するんだよ?な、メリープ。」
「本当に、お前は子供の頃から、誰もいない草むらとか、何もない空に向かって話していることが多くてな。昔はどうしたのかとヒヤヒヤしていたんだぞ。」
ぱぱりんが私に説教するとき、いつも最後にはこういう一言が出る。昔からどこか違う所を見ていた、と。
そう言う一言を聞くたび、いつまでも過去のことを出さないでほしいと切実に思うし、口に出しても言う。
そのたびにケンカが始まる。
メリープは今日も仲良く父親とケンカしている。
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