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No. 00010
DATE: 2000/12/23 02:20:02
NAME: カディオス・クライス
SUBJECT: 繰り返す悪夢(Recurring Nightmare」)
青年は夢を見ていた…たまに見るあの悪夢……寝ても起きても忘れはしない7年前のあの惨劇…
当時11だった青年の村に野党の連中が攻めてきた時の夢。最近近隣の村が野党に襲われるという事件が
あり数日前に村長から、「村のみんなも気を付けるように」と言われたばかりだった、そしてヤツらは来た。
まだ日の高い内にその野党の連中はこの村を襲いに来たのだ。小さいとはいえこの村は自警団も組織して
いる。元冒険者だった父が自警団のリーダーとなり戦うすべを村の若い者に少しずつ教えていたのだ。
野党来襲の報告を聞きつけ父が一足早く迎え撃った。引退した身とはいえ元は冒険者、日々の鍛錬は欠かした
ことのない父だった。野党数人と互角に渡り合っているが、さすがにすべての人数を相手に出来るはずもなく
残りの野党が村の中に入り込んできた。自警団の人たちも村を守るべく手に武器を持ち野党達と戦いを繰り広
げていたが思ったより相手の数が多く、徐々に村に被害が出始めていた…
ある者は女子供を殺し、ある者は歯向かう者を切り捨て、ある者は家の中に入り金目の物を奪う。
それはまさに「惨劇」だった。
当時11のカディオスは半年前に父、アリクスから武器の使い方を習い始めたばかりだった。
母ディアナは「まだ早いわよ」と言い、微笑んでいたがそれもあながち無駄にならずにすんだらしい。
「俺はすぐ戻ってくる。それまで母さんを頼んだぞ」それが父アリクスから息子カディオスへ向けた最後の
言葉になろうとは誰も思わなかった……アリクス本人でさえも……実際すぐ戻れればよかったのだろう。
しかしアリクスが戻る前に二人が待つ家には野党の手がのびていた。家の中では父に言われたからか、
幼くとも男の義務感としてか、母を後ろにし剣を構え野党と対峙するカディオスがいた。
(父さんが来るまで母さんは俺が守ってみせる。)
母を守ろうとする勇気まではよかったが如何せんまだ子供、たいした時間稼ぎにもならずついには武器まで
取られてしまった。体を盾にし、最後まで母を守ろうとするカディオスに野党の刃が振り下ろされる。
(く…)覚悟を決め目を閉じるカディオスの前が一瞬暗くなった。何事かと思い目を開けるとそこには
母ディアナの姿があった。親心からか、おそらく反射的に体が動いたのだろう。
「母さん……?」目を開け、それが母と確認したと同時に刃がディアナに突き刺さる。さらにその刃は
カディオスにまでも達していた。
一瞬胸が熱くなり、胸元から大量の血が吹き出る。…そして目の前が暗くなってゆく中で見た母の顔を
最後にカディオスは意識を失った………
「………またあの夢か………」うっすらと目を開け、ベッドから体を起こし一息つく。体に掛けていた
毛布がずれて生々しい胸の傷があらわになる。
あの惨劇から7年。母を失い、父はその後行方不明。村長曰く父は自分たちを見た後いつの間にかいなく
なっていたらしい。
3年前、意を決し父親探しの旅に出るがやはりなかなか見つからない。西方を回り、今はここオランに
立ち寄っている。他の街と違いオランは規模が違うのでしばらく前からここの宿にやっかいになりつつ
情報を集めている日が続いている。
そしてあの事件以来トラウマになっているのか、たまに見るこの悪夢。目の前で親が死ぬのを見たのだから
さすがにトラウマにもなる。
…ベッドから離れ、窓から外の景色を見るカディオス。そろそろ夜明けである。
「…そろそろ秋か。母さんの命日だな…」
「たまには帰ってみるか、ナグラ村に……とその前にマスターに言って宿代精算しとかんとな」
上着を着、静かに扉を開けて下に降りてゆく…「朝飯食ったら出発するか。」
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