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その店は、きままに亭から通りを一本隔てたところにあった。あまり大きい店ではないが、店主の好みで、何人かの吟遊詩人を専属として雇っている。それが功を奏しているのか、または他の理由か、店の規模の割に人の入りは悪くない店だった。名を、風花亭という。 舞台から下りて、1人の小柄なエルフの女性がリュートを抱えてカウンターの隅へ移動した。彼女が椅子に腰を下ろしたと同時に、その隣に人影が立つ。 「やあ、ロエティシア。隣いいかい?」 人懐こい笑みを浮かべて立っているのは、暗い金髪に、口ひげをたくわえた男性だ。こちらの男もリュートを持っている。ただし、今は布にしっかりと包まれているが。 ロエティシアが、その男の顔を認めて微笑する。 「レノマか。来ていたのだな。舞台からだと照明の加減でおまえの顔は見えなかったが」 レノマと呼ばれた男がロエティシアの隣に腰を下ろす。 「いや、僕はあそこの柱の陰にいたからね。君の位置からじゃ見えなかったんじゃないかな」 それぞれに飲み物を注文し、ふとロエティシアがレノマの顔を見る。 「で、今日はどうした? わざわざ私の歌を聴きにここまで来たわけでもあるまい」 「いや、君の歌はわざわざ聴きに来る価値はあると思うけどね。うん、でも確かに今日はそれだけじゃないんだ。こないだ教わったことで、ちょっと質問したいことがあってねぇ」 「歌や楽器に関しては、私がおまえに教えてやれることなどないが、精霊のことならば話は別だな。こないだの…というのは、精霊に関する我が部族の言い伝えについてであろう?」 ロエティシアが微笑を向ける。エルフである彼女は、当然のごとく、精霊使いでもある。そうして、隣にいる男は一見、人間のようにも見えるが、純粋な人間ではない。半妖精と呼ばれる種族である。 「そうそう、それだよ。その時に言ってた……」 同じように微笑を返しながら、レノマが言いかけたそれを遮るように。 「あっっ!! そんな! やめてくださいよ!」 聞き覚えのある声がした。声、というより悲鳴。というより絶叫。なんていうか断末魔。 同時にロエティシアとレノマが、その声らしきものがしたほうを見る。ちょうどカウンターの反対側だ。 着古したローブの上に厚手の外套を羽織ったままの女性がそこにいた。その顔立ちには東の血が色濃く入っているように見受けられる。痩せぎすではあるが、あまりとがった印象は受けない。職業柄なのかもしれない。 「あれは確か…」 レノマが呟く。 「オウティス、と言ったか」 ロエティシアが後を引き取った。 「何か、困っているのかな?」 言いながらレノマが立ち上がる。つられたようにロエティシアも立ち上がった。そのまま、2人で連れ立ってオウティスのもとへと行く。 「あ、あなたたちは! ちょうど良かった! 助けてくださいよ〜」 オウティスがぱたぱたとレノマのもとへと走り寄る。それを見送ったのが、たった今までオウティスと対峙していた数人の男たちだ。 ……特別にガラの悪い男たちと言うわけではない。ごく普通だ。詩人の歌を肴に、馴染みの店で1、2杯ひっかけて帰ろうかと、そう思ったらしい男たち。 「どうしたんだい? 何か困ったことでも?」 駆け寄ってきたオウティスに、レノマが柔らかく尋ねる。その様子を見ながら、ロエティシアがふと視線を上げた。男たちにむけて。 3人の目の前に立っていた男たちは全部で4人。多少は酒が入っているようだが、泥酔している様子はない。 レノマの問いにオウティスが答えるよりも早く、4人の男たちは言い訳めいた口調で事情を話し始めた。何故かロエティシアに向けて。 「い、いや。オレたちはさ、ただ飲んでただけなんだ。仕事帰りでよ。そしたら…そこの女詩人が…」 そこの、とオウティスを指さして、男の1人が複雑な表情で眉を寄せる。その隣にいたもう1人の男が続きを説明し始めた。 「その女詩人がよ、言うんだ。『酒の肴にぴったりの、おもしろいお話を提供できますが、どうですか?』ってよ。舞台のほうでの歌は聴いてたが…ま、そういうのも悪くねえなってみんなで言っててよ。話してみろって言ったら……」 そこでその男は深い溜め息をついた。まるでこの世の悲しみと諦めと絶望とを全て背負ったような溜め息を。その溜め息を聞きつけて、オウティスが顔を上げる。ただし、レノマの後ろに隠れて。 「な、なによ! あなたたちが話せって言うから、話したんじゃないですか! 古来より伝わる、由緒正しい説話ですよ!? それを……よってたかって、私に酷いことしようとするなんて…っ!」 「おもしろくなかったら、目からワインを飲んで見せますなんて言い出したのはてめえだろ!? だから、オレたちゃ…!」 詰め寄ったのは一番最初に事情を説明した男である。残りの2人はすでに成り行きに興味を失ったのか、所在なさげに突っ立っているだけだ。 ふむ…と溜め息をついて、ロエティシアが振り向いた。レノマの背中にいるオウティスに尋ねる。 「……ひとつ聞いてみたいのだが。おまえが語った、古来よりの説話というのはもしや……」 「そうですよ。こないだ、あなた方にも聞かせたでしょう? 向こうの通りにある木造の酒場で。お忘れですか? え〜っと…」 応えつつ、オウティスは軽く咳払いをした。そして、語り出す。 「 88歳のおじいさんがお医者さんに言いました。 『先生、聞いてくださいよ! わしの嫁は18歳なんですが、この度めでたく、わしの子をみごもったんですよ!!』 医者はしばらく考えてから、口を開きました。 『こんな話をご存じですか。狙った熊は決して逃がさない熊狩りの名人がいた。 ところがある日、急いでいたのでうっかりして、矢じりのついてない矢を持って熊狩りに出てしまった。 そして熊に遭遇。彼はまだ矢のことは気づかずに弓矢を構え、ヒュッと矢を飛ばした。 すると熊はパタリと倒れた。見れば矢が心の臓を貫いていた…』 『そんなバカな!あるとすれば、その矢は他の人が撃ったに違いない』 『そういうことです』 ……ほら、由緒正しい説話じゃありませんか。あの日一緒に聞いていた岩妖精の方も感心してくださいましたしね。………って、2人とも……なんでそんな困った顔してるんです? ねえってば」 数刻後。男たちが帰ったカウンターで、オウティス、レノマ、ロエティシアの3人がワインを口に運んでいた。間にレノマを挟んで、オウティスがロエティシアに詰め寄る。 「……ちょっと…いいこと? さっきのもめ事をしずめてくれて、なおかつ私にワインおごってるからっていい気にならないでよね。…ちょっと、聞いてるの!? ロエ…ロ……えっと…ロエー…」 「……ロエティシア、だ。私の記憶に間違いがなければ、おまえに名前を告げるのは4度目になるはずだが……。だから言っているだろう。ロエでよい。無理に全てを呼ぼうとするな。もともと正しい発音は、人の子には難しい」 「あ、あらそう? んじゃ…ロエ。……って、そうじゃなくて! あんたは忘れてるのかもしれないけど、私はまだ怒ってるんですからね! 私の神聖な仕事場を汚したあげくに、人の仕事を横取りするなんて!」 「それは後から知った事情だったがな。どのみち、私のせいではないように思えるのだが……」 「なんですってぇ!? あんたのせいじゃなきゃ誰のせいだってのよ!」 「てめえだよ、てめえ」 ……ぼそりといきなり低い声が会話を遮った。オウティス達3人が同時に顔をあげる。使い込まれて艶のある樫のカウンターの奥から、店主が不機嫌そうな顔を出していた。他の客に出すエールを注ぎながら、店主が続ける。 「うちの店で妙なもん語らないでくれって言ったろう。品位が下がっちまうだろが。だいたい、おまえさんはクビにしたはずだろ? それが何でここにいる?」 「悪辣な手段でもって奪われた仕事場を、正当な実力で奪還しようとしてるだけですよ」 さらりと返したオウティスに、店主がうつむく。腕が小刻みに震え始めた。エールジョッキの中身がその震えに耐えきれずに零れ始めたころ、店主はゆっくりとジョッキを店員に渡す。そして、大きく息を吐いた。 「……どうしたんです? 何かの発作ですか? あまり若くないんだから気をつけたほうが…」 言いかけたオウティスを手で制して、店主は顔を上げた。半眼でオウティスをにらみつけて、告げる。 「いいかい、おまえさん。何度も言うようだが。おまえがクビになった理由はうちにそぐわないってだけだ。こっちのロエさんを雇い入れたのは、おまえをクビにしたあと。つまり、このエルフを雇うためにおまえをクビにしたわけじゃない! おまえは自分の手で自分の首を絞めてるだけだっ! それを性懲りもなくくだらねえもん語りやがって! さっきのは常連さんたちだぞ!! ったく、おまえさんはよ…おもしろいお話を、なぁんて言っていっつも後で後悔してんじゃねえか。こないだだって、面白くなかったら目でピーナツを噛んで見せますなんてほざいてよ。あとで泣いてたじゃねえか」 「あ……え〜っと……なるほど、そういう………」 オウティスの視線がさまよい始める。さまよったあげくに、レノマの口ひげに視線が落ち着いた。ふとそれに気がついて、レノマは小さく溜め息をつく。 「あの……マスター。ええ…彼女も反省していることだし。今日のところは勘弁してくれないかな。彼女も悪気があってやってるわけじゃないし……それに、聞きようによっては彼女の歌……いや、彼女の語りもそれほど悪いわけじゃないと思うんだけどねぇ」 「……そういう問題じゃねえだろ。オレとしちゃあ、クビにした歌うたいより飲みにきてくれる常連さんのほうが大事なんでね。……そうだ、いいことを思いついた」 店主がふと思い出したように、カウンターの下の棚をごそごそと探り始めた。 怪訝な顔でみつめる3人の詩人に、1枚の羊皮紙を見せる。 「ほら、コレ見な。スティーグ家っていう屋敷知ってるか? 貴族なんだがな」 「私は知らないな。貴族に知り合いはいない」 ロエティシアが答える。その隣でレノマが小さく首を傾げた。 「ああ…そう言えば聞いたような。いやぁ、出入りしている商人さんの屋敷で耳にしただけだけどね。なんでも、娘が1人いるとか?」 「ああ、その通りさ。わがまま娘がいるそうだ。たしか…12才だったかな。その娘が、吟遊詩人を欲しがっているそうだ。んで、来月のあたまにその選考会がある。申し込んできた詩人たちの歌を聴いて、お気に召した詩人を召し抱えたいとよ。どうだい、やってみるかい?」 「……ふ。そんなもの、私が合格するに決まっているじゃないですか」 羊皮紙を見ながら、口走ったオウティスを見据えて、店主は低い声で告げた。 「おまえ……。よし、わかった。そんなに自信があるなら受けてきな。さっき思いついたってのもこのことだ。もしおまえさんが受かったら、クビにしたのはなかったことにしてやる。どうだい、あんたたちも挑戦してみたら? 受かりゃ儲けモンだし。落ちても損はねえよ」 そして、選考会当日。スティーグ家の前には何人もの歌い手たちが集まっていた。それぞれの楽器を手に、門が開くのを待っている。 「やあ、君もやっぱり来たんだね。あまり興味がなさそうだったから来ないかもしれないと思っていたんだけど」 人波のなかに小柄なエルフの姿を見つけて、レノマが片手を上げて近付く。それを迎えてロエティシアが微笑んだ。 「いや…まあ、暇であったしな。歌い手が集うと言うならば、興味も湧くというもの。ところで…オウティスとやらは来ているのか?」 「ああ、さっき見かけたよ。一番、門に近いところにいた。なんだか…笛を持った男性と話をしていたけどねぇ」 レノマがそう返した時。2人に声がかかった。 「あ! やっぱり来たのね! ロ〜ロ〜……ロエっ!」 オウティスである。その背後で、笛を持った男性が、わずかに肩をすくめているのが見えた。 駆け寄ってくるオウティスに、レノマが人懐こい笑みを返す。 「やあ、さっきの男性は誰だい? 君も隅に置けないねぇ」 「さっきの…ああ、ギルっていう楽師ですよ。自分は歌わないから、詩人じゃなくて楽師だなんて名乗ってますけどね。まぁ…何度か一緒に演奏をしましたね。ほら、例の木造の酒場で。私が歌って、彼が伴奏をつとめたこともあるんですよ。是非に、というもので仕方なくね」 「…ほう………」 軽く肩をすくめて見せるオウティスに、ロエティシアはただそれだけを返した。 (…確か、私が以前聞いた話は、オウティスが少々ガラの悪い男と、苦手な歌がどうこうと言う話になって、それに巻き込まれそうだったギルが逃げようとした際に、無理矢理オウティスに腕をとらえられたとか何とか……。いや、だが、見る者聞く者によって、話など変わってゆくだろう。尾鰭がつくことも珍しくない。それが噂というもの。ならばここでオウティスの話を嘘だと決めつけるわけにもゆくまい。もちろん、私が聞いた噂とは別の時に、ギルがそのようにオウティスに申し出たと言うのもあり得るが……) 「ちょっと、何なのよ、あんた! そのすかした顔は! っていうか、何考えてるのよ。私は嘘なんてついてないんですからね」 ふと、顔を上げる。先刻から、隣ではオウティスが、何やら言い募ってはいるが、そのことにロエティシアは気づいていなかった。あげた視線が、先刻までオウティスと話をしていたギルと出会う。わずかに困ったような苦笑いを含んだ視線と。 「………なるほど」 「ちょっと! だから何が『なるほど』なのよ! 人の話聞いてるの?」 「まあまあ、オウティス、落ち着いたらどうだい? これから選考会だというのに、詩人が怒鳴りすぎて声をからしてしまうんじゃ本末転倒ってものだろう? 君の美声が、この屋敷のご令嬢のお気に召すかもしれないんだよ?」 やんわりと微笑みながらのレノマの言葉に、オウティスは慌てて口を閉じた。こほん、と咳払いをしてあらためて口を開く。 「そ、そうね。あなたの言う通りね。私もそれはわかってはいたんだけど。でもまあ、私ほどの詩人になれば声をからすなんてことはあり得ないけれどね。それをこのひ弱なエルフにも求めるわけにもいかないわね。ここはあなたの顔を立ててあげます」 いや、ロエティシアは“ほう”と“なるほど”しか言ってないよ、と危うく言いそうになったレノマではあったが、ぐっとこらえる。これが大人というものだろう。見習いたいもの。 「詩人の皆様がた、お待たせいたしました。それでは屋敷にお入りください」 がらがらと門扉が開き、そこから使用人らしき男が姿を現した。年輩の男と年若い男との2人である。年輩の男が若いほうへ何かを囁いた。それを受けて、若い男がペンと羊皮紙を構える。 「まず、こちらにてお名前をうかがいます。そののち、屋敷へとお入りください。玄関では別の者が待っておりますので、その者の案内に従って控えの間に行っていただきます。あとは、呼び出された順にお嬢様…リステル様の前で持ち芸を披露していただきます」 その声に、若い詩人たちは受付係の男のもとへと殺到しはじめた。 自らの芸を披露し終えた者たちは、その場で令嬢リステルから合否を言い渡されることになっていた。 演奏を終えて、リステルの部屋から戻ってきたロエティシアを屋敷の前庭でレノマが出迎えた。どうやらギルと話をしていたらしい。 「やあ、ロエティシア。どうだった? 君ならばご令嬢のお気に召したんじゃないのかい?」 「いや、駄目であったようだ。恋に憧れる年頃かと思って、なるべく美しい恋歌を披露してみたんだが…聞き飽きたと言われたよ」 苦笑するロエティシアに、ギルも同意した。 「ええ、実は私もなんですよ。自由な暮らしに憧れているかと思いまして、冒険者たちを面白可笑しく描いた曲を奏したつもりなのですが……お気に召さなかったようでございます」 同じような表情で苦笑しあうロエティシアとギルに、レノマもうなずく。 「実は僕もなんだ。まだ幼い少女だからね、美しいものを好むかと思って、精霊の庭に咲く一輪の花を歌ったものを披露したんだが……現実味がないわね、とはっきり言われたよ」 「どうやら、私どもだけではないようですよ。先ほど、いくつかお話をうかがったところ、今までに合格者は出ていないとか…。ご令嬢は、一風変わったものをご所望なさっているご様子でございますれば……オウティスさんなどは可能性があるやもしれませんね」 微笑んでギルが言う。それを聞いたレノマが、口ひげを撫でつつうなずいた。 「ああ、そうだね。彼女ならもしかするかもしれないねぇ。どうする? 彼女を待ってみるかい? 結果を聞きたい気持ちもあるんだけれど」 「いえ、私はこれより別の場所にて仕事を探すことにいたしましょう。詩人たちがこの屋敷に集まっている今ならば、酒場では詩人が足りなくなっている頃合いでございましょうから…」 自らの商売道具である笛を手に、ギルはそう言って立ち去った。それを見送りつつロエティシアがレノマの顔を見上げる。 「さて…おまえは待ってみるのか?」 「うん、待ってみるつもりだけど。君はどうする?」 「……オウティスの結果を聞くのも楽しみだ。確かに、ギルが言ったようにここの令嬢が変わったものを所望しているのならばオウティスに可能性はあろう。風花亭での刻限までにはまだ間があることだしな。なに。さほどの時間でもあるまい」 リュートを包みながら、ロエティシアが微笑む。 「君にしてみれば、どんな時間でも“さほどのもの”じゃなくなっちゃうねぇ」 レノマはそう言って苦笑したが、実際、“さほどのもの”ではなかった。そのすぐあとに、オウティスが姿を見せたのである。 「やあ、どうだった? 君なら可能性があるかもって、いま話していたんだよ。残念ながら僕たちは全滅だったからねえ」 軽く手を挙げてそう問いかけたレノマに、オウティスが呆然としつつ答える。 「………………合…格……ですって………」 「ええ!? 本当かい? そりゃすごい! 聞いたかい、ロエティシア? 彼女は合格したそうだ。素晴らしいよ、オウティス!」 手放しで喜ぶレノマと、呆然としたままのオウティスとを交互に見比べて、ロエティシアが口を開く。 「おめでとう、オウティス。よければ今夜にでも風花亭で祝の宴をと思うが……そのまえにひとつ聞いてもよいだろうか?」 「な、なにかしら? 言っとくけどね、ロエ。私が受かったのは私の実力よ? え…ええ、そうよ、そうなんだから! ご令嬢は手を叩いて喜んでくださったわ。ま、私が落ちるはずはないと思っていたけどね」 なんとなく温度の低めの汗を流しながら、オウティスが応じる。そんなオウティスにロエティシアが尋ねた。 「……いや、たいしたことではない。ひとつ気になったのだが………なぜ、頬にピーナツの殻らしきものがついているのだ?」 その後。スティーグ家のリステル嬢の部屋では、ひどく満足そうな令嬢と、笑顔のまま冷や汗を流すオウティスの姿が何度か見られた。 「さ、約束よ、オウティス♪ 鼻からスパゲティ食べてくれるって言ったわよね♪」 |
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