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No. 00042
DATE: 2001/04/03 07:58:49
NAME: バリオネス
SUBJECT: 理由と行動
かの者達は何を思い、この時を過ごすのだろうか。
我が通り過ぎた後に何が残るか。
全てに関わり、全てに感せず。
運命を決めるは他の者なり。
ただ・・・我は道を提示し、
かの者達はそれを選び、我は答えを示す。
選ぶのはかの者達であり、我に罪無し。
いざゆかん、運命という名の時を進めに。
新王国歴513年2月4日早朝。
隊商の灯した焚き火の光をめざし、幾つもの影がうごめいている。
ここは蛇の街道。
多くの商人が行き交うこの道は、それに比例するように盗賊団も多い。
歌とも取れるような声が、冷え切った空気をつたい辺りに響き渡る。
闇を振り払う光の中心に、仮面をつけた黒ずくめの男が現れゆっくりと歩き始めた。
隊商の護衛は突然現れた仮面の男に驚くこともなく、ゆっくりと刀を抜いた。
護衛と男の距離は約10メートル、護衛が男に何者かと問うと、その男はこういった。
「おとなしく積み荷の半分を渡すか、それともここで皆殺しがいいか?好きな方を選ばせてやろう。」
こんな時の護衛の選択は賊を倒すことである。間違ってもおとなしく積み荷を渡すことはしないであろう。
護衛の一人が仮面の男に斬りかかろうと動いた。
が、その護衛の腹に矢が1本、2本と生えていき、仮面の男まで届かずに大地に沈んで行く。
敵が一人だと油断した護衛は、この事態を仲間に知らせるために動いた。
が、断末魔の叫びをあげる事で仲間に異常を知らせるのが精一杯だった。
それを合図に十数人の野盗達が隊商に襲いかかった。
倍以上もいる野盗を相手に、護衛の冒険者達は次々と倒されていく。
逃げ遅れた商人を囲み、仮面の男は同じ質問をもう一度した。
自分達の命と積み荷の半分、どんなに頭の悪い商人でもどちらを選ぶかは明白だ。
隊商の商人の一人が、悔しそうに積み荷の半分を置いていってやると、怒鳴った。
物資を手に入れた野盗達は上機嫌だ。
去り際に仮面の男はこう言った。
「我は無面騎士団副長、バリオネス。諸君らの納税に感謝する。」
無理矢理奪っておいて何を言うと思う商人もいれば、そう言う言い方もあるなと感心する商人もいる。
十人十色とはよく言ったものだ。
引き上げ後、野盗側にも疑問に思った者達がいて、仮面の男に聞いてきた。
「お頭、なぜ騎士団なんすか?あっしらは追い剥ぎですぜ。」
「騎士というのは他国に攻め入って領土を奪うだろう。積み荷を奪う我々に似てると思わないか?だから騎士に負けない誇りを持てと言うことだ。」
あちこちで納得の声が上がる。
「じゃあ、副長ってのは、団長じゃないんすか?」
「団長ではその上が無いではないか、私はいつも上を目指していたいのだ。要するに初心忘れるべからずだ。」
と言うものの、仮面の男の真意は違うところにありました。
無面は、その仮面の特徴から自分の事。
騎団は、まだ騎士になれずにいるユングィーナを。
そしてそのかたわらで彼女を補佐したい。と、いうのがバリオネスの本音。
が、それはかなわぬこと。
ならば、自分が大悪党になって彼女の手柄になろうと・・・・・・
数日後。
『かの者を捕らえし者に報奨金をさずける。』
「1000ガメルとはなめられたものだ。まあ、最初のうちはこんなモノか・・・」
部下が拾ってきた自分の手配書をみて、バリオネスが不服そうにつぶやいた。
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