No. 00052
DATE: 2001/04/17 04:35:09
NAME: アウルス=ランズベール
SUBJECT: タビダチノソラ
頭の中は、すっきりしていた。
真夜中。気ままに亭からの帰り道だ。俺は自宅への道を歩いていた。帰り道。こんな言葉を使うのも久しぶりだ。家に帰るのは数週間ぶりになる。
カーナには逃げてしまえといわれたけど・・・、やっぱりそれは俺の性分じゃない。
徹底的に話し合う。
あの親父と。まともに会話するなど、数年ぶりだ・・・。例の地下遺跡から助け出されたあの日以来かもしれない。
相手はキチピーだ。説得など一切通用しないかもしれない・・・。
夜空の月は普段より冴え渡っている。不思議だった。二日酔いと一緒に俺の迷いは消えうせていたのだ。
そうだ。
「それでも」
話し合わなければならない。俺が経済的にだけでなく、心理的にも依存しないように。自分に甘えないように。安易に妥協しないように・・・。今までの俺だったら、こんなこと考えられなかっただろう。だが、気ままに亭に行ってから・・・たった2日だったが、冒険者たちの話をじかに聞いて、俺の中でいろいろなことに整理がついたように思えた。
何を、悩んでいたんだ?
何を、恐れていたんだ?
魔術師として生きる安易な道に未練があったのか?ぬるま湯につかって、そのまま腐っていくような人生を・・・誰かに与えられた人生に未練があったのか?自由自由としきりに口にしていたといっても、結局は、自分の力不足を、意志の弱さを親父のせいにして、逃げていただけじゃないか。レティシアさんにこき下ろされるのも当然のことだ。
しばらく言わないから忘れていた。親父とやりあうときに自分で言っている言葉じゃないか。
「自分の人生は、自分で作るもんだ」
白レンガの屋根が夜闇に浮かんで見える。
一瞬の、躊躇。後ろを振り返る。ほの明るい東の空。日が、上ろうとしていた。もう決して逃げまい。自分の人生を勝ち取るために。
俺の足は真っ直ぐ家に向かっていった。