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No. 00059
DATE: 2001/04/26 01:04:31
NAME: メリープ
SUBJECT: 幕あい・見舞客3
この治療院に入院してから二週間。
とうとう、先生から、ベッドから離れても良いという許可が出た。
でも、先生は、短期間で私の性格を見抜いていたらしく、こんな一言を。
「無茶するんじゃないよ。無茶すると、せっかく良くなりかけた体を壊すことになるんだから。」
……完全に見抜かれてると思った。看護婦さん達も、私の性格を分かって、頻繁に部屋を訪れるようになってきた。
なーんか……やりにくい。
せっかく人が頑張って動こうとしてても、こんな監視の目の中じゃ、思うように動けないよぉ……
それでも、看護婦さんの大体の動きは分かってきたから、申し送りの時間とか、お昼とか、夜の巡回の合間とかに、身体を動かすようにしてた。
そうやって歩く練習をしていたとある夜。今まで自分のことだけで気づかなかったけど、そう言えばザードさん、この頃帰ってこない。
ベッドも綺麗だし……もしかして、退院しちゃったかな……?
ザードさんの怪我は、私よりは軽かった(でも、カディオスさんの奇跡がなかったら、もっと後遺症が残っていたはずですよぉ、と、ザードさんは笑っていたっけなぁ)から、その可能性は高い。
いつのまに退院したんだろう……ホントは、喜ぶべき事なのに……心の底に、ザードさんを理不尽に責める私がいた。
どうして退院したの?私、まだ……一人で夜を明かす自信はないの……寂しくて、寂しくて……一人じゃ、いられない……。
……私……いつからこんなにわがままになっちゃったんだろう?隣にザードさんがいないって、ただそれだけで、こんなに寂しくて、不安で、仕方がない。
この胸のもやもや……何なんだろう……
と思ったとき、ふと閃いた一つの結論。
もしかして……私、ザードさんに恋してる……??
そんなことない。こんなにザードさんに寄り掛かってばかりじゃ、恋なんて言えない。私はただ、ザードさんに甘えてるだけなんだ……
もっと、しっかりしなきゃ……せめて、ザードさんと同じ位置に立てるまで……。
そう、決意を固めたとき、夜中だというのに扉が開いた。
看護婦の巡回の時間ではないはず……さっき、来たばかりだ。まだ次の巡視は来ないはず……
じゃあ、誰かお見舞いに来てくれたの?そう思って、目を凝らしてみる。
いたのは、カーナさんとカディオスさん。……私を、助けてくれた(らしい)人達だ。
じゃぁ……ビリーがどうなったのかも、知ってるはず。
ゲイルの言うこと、疑う訳じゃないけど……曖昧にしか言っていかなかったから、ハッキリと聞きたい。だから、聞いてみた。
「……ビリーは……どうなったんですかぁ?」
そう問いかけたとき、二人の顔に緊張が走った。まず、どうしてその事を、と言う驚愕。そして、真実を話してもいいものかという戸惑い。
カーナさんが口を開きかけた。誤魔化そうとする声音。そして、カディオスさんが言いにくそうに呟く。
「あいつは、もう……」
その瞬間、ものすごく恐い目で、ぎっとカーナさんがカディオスさんを睨み付けた。二人とも、私がもう事実を知っていると知らないから……すごく、気を使ってもらって……何だか悪いなぁ。
「そう、ですかぁ……。ゲイルにね、聞いてたんですよ……ビリーのこと…………でも……ゲイルの言うこと、信じてなかった訳じゃないけど……」
言いながら、涙がポロポロと流れる。すると、ふっと視界が暗くなった。カーナさんが、私の頭をギュッと抱きしめてくれていた。
「そうか……君は、強いんだね……」
と言って、私の頭を撫でてくれた。……年下の子に慰められるなんて、ちょっと恥ずかしいかなぁと思いながら、涙がおさまるのを待つ。
って、思いきり泣いたら眠くなっちゃった。私の欠伸を目にした二人は、その後そっと部屋を出ていった。
「…………ザードさん……私、あなたに……会いたいよぉ……」
そう呟くと、私はまどろみの中に落ちていった。
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