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ざざ……どこか遠くで波の音が聞こえる。 そうか、もうカゾフっていう港街に着いたんだっけか。 うー、頭が痛い……。
ばさ、と毛布を跳ね上げてベッドから起きあがる。 あれ、なんでベットに寝てんだ? それに、この脇で寝てる裸の娘は…? やべぇな、あんまり記憶がねぇ。 昨日はさすがに飲み過ぎたかな?(ぽりぽり)
確か、ハイドとか言うどっかの船乗りと飲み比べして…そうだ、そのとき酒場にいたジリアンって娘(ちら、と傍らで眠っている娘の寝顔を見る)と一緒に抜け出してきたんだっけか。 酔って暴れ始めたハイドとか言う野郎はその後どうなったのか、少々興味があるかな。
っと、それはさておき。 この娘はどうしたものかな? ってゆーか、ここはどこなんだ? 宿屋を取っておいた記憶はないが……それに、ここは宿屋にしちゃ部屋が狭いな。
「ふあ……あ、おはよ。」
ん、ああ、おはよう。 よく眠れたかな?
「うん、ゲイルさんはどう?」
久しぶりにベットで寝たせいかな、ちょっと背中が痛い。 ああ、それはそうとここは?
「やーだ、覚えてないのー? 郵便船の中よ。 ほら、ゲイルさん、ブラードの方へ行くって言ってたでしょ? 朝早くに出るっていうから、アノスへ行く郵便船に便乗させてもらってるんじゃない」
あー、そうだっけ? で、君は?
「わたし? 私は旅行で来てるだけだから、ファーズにいるアトキンズ叔父さまの所に帰るの」
そりゃまた遠いところまでご苦労様だな。
「ゲイルさんはラムリアースから来てるんでしょ? それに比べたら全然近いわよ…あら、私の顔をじーっと見つめてどうしたの? 何か付いてる?」
いいや、君の綺麗な顔に見とれてね。 昨夜は酔っていたせいもあって、ちゃんとこうして見れたかどうか良く覚えていないんだ。
「何言ってるの、いっぱいキスしたじゃない?」
そうだったかな?
「やーねえ、酔っぱらいは。 昨日あれだけしたのに覚えてないの?」
んー……それは何となく覚えてる。 そうか、やたら揺れると思ったら船の中だったのか。 てっきりそこまで酔ったのかとばっかり思ってたんだ。 そんなんでよくできたな、自分。(ぽりぽり)
「なーに言ってんだか、このオジサンは(くすくす)。 ハイドとか言う水夫と飲み比べしながら私のこと口説いてたの覚えてる? 飲みながらあれだけ軽い言葉喋れるのはなんでなのかしらね?」
さあね? 言葉は想いを乗せるためにあるんだから、率直に言ってみただけだよ。 それと、その辺はまだよく覚えてるんだ。 あのとき言ったことは本当さ、自分の言葉には偽りはないよ。 そう思ったから、きみは自分をここに連れてきたんだろ?
「まあ、そうなんだけど。 あれだけ大勢が見てたのに、酔ったふうでもなく真顔で言ってくれたんだもの。 なんだか断るに断れなくなったって言うのもあるけど、それでも…」
それでも?
「もういいでしょ、そんなこと言わなくても。 まだブラードに着くまでは長いんだから、ゆっくり考えてから言わせてよ。 それよりも、ゲイルさんが詩人から聞いた【真実の恋】っていうお話の方が気になるんだけど?」
わかったよ、それじゃもう少し横になってお話をすることにしようか。 あれは自分がまだラムリアースにいた頃の話なんだが……
to be continued... →
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