No. 00087
DATE: 2001/05/17 12:24:53
NAME: メリープ
SUBJECT: 夜の港
フッと、夜中に目を覚ました。
何だか寝つかれなくて……ぱぱりんにちゃんと断って、外に出る。
シルフの呼び声に、無意識のうちに耳を澄ませていたのか……気がついたら、港に佇んでいた。
イタズラ好きなシルフ達が、私の髪をかきまぜて、ワンピースの裾を大きくはためかせる。
シルフ達と一緒に、海に住まう水乙女達も私に声をかけてくる。
「元気なさそうじゃない……どうしたの?」
「どうしたの?ねぇ……何を悩んでいるの?」
シルフとウンディーネの囁きに、何て答えようと思っていたら、向こうから足音が聞こえてきた。
精霊達は怯える様子も怖れる様子もなく、口々に「あの人が来る」と繰り返す。
やがて姿を現したのは、ケルツだった。半分目を閉じた状態で、それでもしっかりとした足どりで歩いてくる。
……そう言えばケルツさん、目がほとんど見えないんだったっけ……
精霊さんの声を耳にしているケルツさんは、目ではなく感覚で私がいることを分かっているはず。
だけど、ちゃんと気づいて貰いたくて、わざと足音を立ててケルツさんの正面に移動する。
「こんな時間に女が一人で来る場所とも思えぬが」
ひととおりの挨拶が終わったところで、ケルツさんがそう切りだしてくる。私の目的を話すと、ケルツさんはそれ以上は突っ込まないでいてくれた。
代わりに、精霊の言葉が話せるようになった経緯を聞かれた。
そう言うこと、普段人に話すことでもないと思ってたけど、いざ話してみて、ケルツさんの話も聞いてみて……人によってそんなに違うものなのか、と改めて思った。
また一つ、勉強になった……一回、ラスさんに精霊との話し方を教わってから、ずっと独学で精霊さん達と仲良くなろう、と思っていたけど、他の人の精霊さんとのつき合い方、みたいなことを聞くのも、いいかも知れないなぁ。
ケルツさんに、お家へ送ってもらいながら、最後に言う。
「ケルツさん……今度またお会いしたら、もっとたくさんお話しさせてくださいですぅ」