No. 00089
DATE: 2001/05/25 02:05:20
NAME: 元冒険者
SUBJECT: 追い詰められた男
オレは……一体、どうしたら、いいんだ。
オレはいったい何をしようとしている。それは犯罪だ。許されるべきことじゃない、それ自体悪だと判っているはずだ、なのに……
なのに……、そうしないとあいつが泣く。
あいつを悲しませるのは、オレ自身が許さない。たとえ、この手が悪に染まろうと。あいつを守るためになら、オレは地面に這いつくばって、靴の裏さえ舐めてやる。だから……あいつだけには手を出さないでくれ。お願いだ。
言われた通りにする、オレはそれだけでいいはずだ。何の不安も心配もない、数時間後にはオレはあいつの元へと笑顔で戻れる、そう……ただそれだけだ。
(男は暗い路地を通りに向けて歩き、ある酒場の手前で待ち構える)
(やがて闇夜の建物から飛び出さんばかりの勢いで、少女が扉を開けて出てきた)
(目に入った踊り子に反射的に身じろぎし、無言で決意を固めた男は小走りに駆けようとする少女に近づく)
「ア……アイーシア、だったか。ちょっと、来てくれないか」