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No. 00092
DATE: 2001/05/30 23:45:47
NAME: メリープ
SUBJECT: お迎え
「メリープ=ハイデマン様、ですね?はい、これをどうぞ」
住宅蒹店舗の店先に、店番としてぼーっと座っていたときのこと。突然来た一人の少年が、メリープに手紙らしき物を渡した。
「……えっ??……この仕事って……高いんじゃないんですかぁ?」
郵便屋さんの少年に問う。少年は、はにかんで笑いながらメリープに答える。
「いえ……ちょうど、この辺に用事があったので……いいんですよ、お代は。依頼人さんからちゃんと頂きましたから」
苦笑を残して少年が去っていくと、メリープは鑞で封をしてある羊皮紙を慎重に開けた。手紙を読み進めていくうちに、まず目を見開き、内容に驚き、額に手を当てて真剣な表情で考え込む。
「……ゲイルが……そっかぁ、今カゾフにいるのかぁ……うまくいけば、合流できる、かな……?」
そこまでしてメリープが考え込んでしまったのは理由がある。
―嬢ちゃんに似合いの髪飾りが手に入ったんだよ。もしよければ取りに来いよ。大きい街道沿いだからそうそう事故もおこらねぇだろうしな―
要約すればこの様な文面と、宿泊先予定の宿の名前が書いてあった。メリープはもう一度うーんと首を傾げて考え込み、
「うん、決めた!ゲイルに会いに行こーっと!」
即断即決即行動。メリープはすぐに旅の支度を整え、家を飛びだしたのだった。
初夏の陽ざしが、ますます緑色を濃くした木々の葉を通して、メリープを柔らかく包み込む。
「ドライアードさん達、元気そうだなぁ」
陽ざしに向かってその手を差しのべるドライアードの姿は、とても美しかった。メリープはドライアード達に声をかけると、カゾフに伸びる街道をできるだけ急いで歩いてゆく。
『なんでそんなに急いでいるの?』
先を急ぐメリープに、ドライアード達が口々に訊ねてくる。
「え??どうして、って……」
メリープの反応を見て、ドライアードはくすくすとさざ波のような笑い声をあげはじめた。
『だってあなた、まるで恋人に会いに行くような顔をしてるんだもの』
『どんな人に会いに行くのかしら?』
『ねぇ?楽しみよねぇ?』
ドライアードの陽気な笑い声に、メリープは一人顔を赤らめていた。
(ゲイルさんは……恋人じゃ、ないんだけどなぁ……そんなに、変な顔してたかなぁ……)
なおもドライアード達が何か言っているが、恥ずかしさで頭が一杯になったメリープの耳には届かなかった。
そうして特にトラブルもなくカゾフへの街道を歩きつづけて3日目の朝のことだった。
シルフがとても元気に遊びまわる朝だった。メリープは、たまたま一緒に泊まった冒険者達に礼を言い、カゾフの方へと再び歩きだす。
その時、シルフがメリープに話しかけてきた。
『向こうから人が来るよ……あなたが知ってる人かもしれない。』
シルフにその人の特徴を教えてもらう。琥珀色の髪に緑の目をした、杖を持った男の人だよ、とシルフは答えた。
「……ゲイルだ!」
そのままシルフに頼んで、自分の声をゲイルに届けて貰うことにする。
”ゲイル!”
いきなり知り合いの声が耳に飛び込んできたゲイルノートは、びっくりして杖を取り落としそうになった。
「……メリープ嬢か!?」
どこへともなく話しかける。かなり狼狽したゲイルノートの声に、メリープもびっくりして返事を返す。
”今、そっちに向かってるからぁ☆……そのまま、街道をまっすぐ歩いていくから☆……私じゃ、見つけられないかも知れないから、よろしくねぇ☆”
好き勝手なことを言ってくれるなぁ……でも良いか、お嬢のことだからな……
ゲイルはそう思い、歩く足を速める。
「お……嬢ちゃん。良く来たな」
にかっと笑みを浮かべて、ゲイルノートは走り寄ってきたメリープに手を上げたのだった。
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