仲間と一緒 ( 2001/06/08 )
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作者
李唯音
登場キャラクター
レイナ、カイ、シオン、ケルツ



今日は、初仕事で下水に入った。
シオンさんとはぐれちゃったので、カイさん、ケルツさんと一緒にしばらく歩いた。
すると、一匹の大ムカデが。
怖かった。
ケルツさんの光の精霊が炸裂し、カイさんの炎の矢が炸裂する。さらに剣撃を受け、弱っていくムカデ。
わたしはパニックするだけで、何も出来ない。
だが、隙を突いてムカデがカイさんの足に絡みついた。
(・・・怖いけど、でもっ!)
仲間を見捨てるなんて出来ない。わたしは勇気を振る起こし、杖を握って力いっぱいムカデを殴る。
それは見事にムカデの脳天を捕らえた。気持ち悪い音を立て、その頭部から体液が飛び散った。
「やあああ!!」
一瞬の隙を見て、カイさんがショートソードを突き立てる。気味の悪い声をあげて、ムカデが絶命する。
その日、それを最後に切り上げた。が、大変だったのは次の仕事の日。
数日後、残りの仕事を片付けようと、4人で下水に入った。
そしていきなり、蝙蝠の群れ。みんなで必死に応戦するけど、パタパタ空を舞う蝙蝠に、なかなか攻撃が当たらない。
ついには、シオンさんに牙がかかった。もう、この乱戦状態で使うべきではないが、あれをするしかない。
「夢をいざなう雲よ。彼の者に安らかなる眠りを与えんことを!」
スリープクラウドの魔法。けど、眠ったのはたったの1匹。しかも、残った1匹があろうことか私の首に噛み付いた。
「きゃ〜〜!痛い痛い〜〜!」
「だ、大丈夫!?」
すぐにシオンさんがそれを引っぺがし、カイさんが叩き落した。
「あ、ありがと・・・って!そこ、ネズミ!」
「え!?」
そこには、目を爛々と光らせたネズミが一匹。カイさんに任せたが、隙を突いてすばやく走り、わたしに飛び掛ってきた。
敵を任せて、報酬を少しでも多く貰うため、死体を回収していたわたしは、避けることが出来ずに腕でブロッキングした。
「きぃぃっ!!」
わたしの腕にしがみつき、牙を立てようとする。噛まれて病気貰ったら洒落にならない。わたしは思いっきり腕を振り回す。
なんとか剥がれてくれたネズミを、怪しい笑みを浮かべて睨む。手には握り締めた杖。
「乙女の柔肌に傷をつけた罪は重いよ〜(妖しい笑み)。えいっ!」
ケルツが呼び出したシェイドに怯えたネズミに向かって、杖を振り下ろす。寸前でネズミは避ける。暗がりに走り去っていった。
「みんな、無事・・・・・・」
確認を取ろうとしたシオンさんが凍りつく。何事かと、みんなが振り返ると、そこには・・・。
数十の赤く光る目、目、目。さっきのラットが仲間を呼んだみたい。
「・・・逃げる?」
「三十六計なんとやら・・・」
「撤収〜〜!!」
揃って、逃げる。それを追いかけてくるネズミの大群。狭い下水道を、左に右に、また右に。
それでもしつこく追ってくるネズミ。
「あ!」
シオンさんが転んだ。まずい・・・!
「おい、レイナ!さっきの眠らせる魔法、あれはもう使えないのか!?」
この状態では、本気でみんなも一緒に眠りそう・・・だけど、シオンさんを放っておけない。
ザザザッと立ち止まる。
「みんな、時間を稼いで!!それと、出来るだけネズミから離れて!」
わたしは短く叫び、一番後ろで杖を構える。
「汝、夢の世界に橋架ける者睡魔の名において・・・」
わたしは、魔法の拡大をする。学院で習って、最近復習したけどちゃんとできるか心配。
「光の精霊、我が友よ!」
ケルツさんのウィル・オー・ウィプスが呼び出される。
「もぅ〜〜!!」
ちょろちょろ動き回るネズミに、必死にダガーで応戦するシオンさん。
「火蜥蜴さん、力を貸して!」
咄嗟の機転でサラマンダーを使い、ネズミを追い払うカイさん。
その中で、一人黙々と魔法を練り上げていく。杖をかざし、印を結ぶ。
「我、汝に命ず、我らが前に群がる愚かなる畜生を、汝が域たる夢の淵へと導かんことを・・・」
激戦を繰り広げる、仲間の皆。その協力が無ければ、わたしは魔法を詠唱する暇も無くやられていただろう。
わたしの方に向かってくるネズミを切り倒すシオンさん。
必死に精霊を呼び出すカイさんとケルツさん。
ここで失敗するわけには行かない。
「汝、睡魔の力よ。其は我が魔力を糧とし、すべての畜生に安らかなる眠りを与えんことを・・・」
長々と練り上げた魔法が、今完成した。
「《眠りの雲》!!」
ネズミの群れを中心に発生した、眠りを誘う雲はネズミはおろか、仲間の皆も巻き込みながら広がっていく。
ネズミの大半が夢の淵に落ち、仲間はシオンさん以外眠らずに済む。シオンさんも頬を叩かれ、すぐに目を覚ます。
「まだ、残ってますよ・・・」
「ああ、そうだな。どうする・・・?」
荒くなった息を整え、よく見れば、まだ数十匹のネズミが残っている。眠りの雲に対抗したとんでもないネズミたち。
これはまずいよ・・・。わたしの魔法を放つため、みんなありったけの精神力を使って援護してくれた。
だから、みんなもう魔法は使えない。それぞれが、武器を手に取る。が、それが振るわれることは無かった。
さっき割れたランタンから、油を伝ってネズミたちに火が燃え移っていた。
瞬く間に燃え上がり、ネズミは慌てて退散。寝ていたネズミは、仲間に踏まれて死んでいく。
「た、助かったよぉ・・・」
ずるずる崩れ落ち、安堵の息を吐く。
みんなで無事を確かめ合う最中、わたしは苦痛がする身体に鞭打ち、拾える限りの死体を回収する。この怪我の治療費を賄う為、少しでも多くの報酬が欲しい。
しばらくすると、下水の影から犬頭巾をかぶった人が出てきたけど、それからはあまり覚えていない。
苦しくなって、顔が赤くなって、意識が遠のいていく。さっき噛まれたときに、バットフィーバーにかかったみたい。
気がつけば、そこは病院のベッドの上。倒れている間に、みんなが運んでくれたみたい。直ぐ近くのベッドには、同じくシオンさんの姿が。
この2人が、一番病気が重傷だったみたい。でも、すぐに直るよね。みんなが居るし、早く元気になった顔を見せなきゃ。
わたしの大切な、仲間の皆に。

おわり<>0:4<>




  


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