騎士になれないYoung Person ( 2001/06/27 )
MENUHOME
作者
登場キャラクター
ルイン



4年前。
俺はその頃、まだ故郷のオーファンに居た。
それも、騎士見習い志願者ということで、王城シーダーに来ていた。
志願者の中には、勿論俺に知り合いや競い合っていたライバルの姿もある。
その群衆の中でも、俺はかなりの低年齢だった。
周りを見れば、それなりの年齢の武人が揃っている。
俺の知り合いのほとんども、最低20歳を超えている人が多かった。
そんなことを考えていると、騎士隊長や近衛隊長が現れ、採用試験が始まった。
まずは剣技。
俺も引けは取らない程度の剣捌きで、相手を牽制していくが、結局は経験に劣る俺は打ち負かされてしまった。
次は負けないと思い次の試験に臨むが・・・次の試験は宮廷礼儀。
つまり礼儀作法だった。
騎士たる者、礼儀作法くらいは出来て当たり前だが・・・俺に礼儀作法の知識は皆無だった。うかつにも、重要なことを忘れていたため、礼儀作法の試験は最低だった。
他の試験もことごとくダメだった。なにより、低年齢過ぎるのもいけなかったのかもしれない。
そして、選ばれたのは熟練の戦士と、俺の知り合いの傭兵だった。
「気を落とすなよ、ルイン」
「・・・ああ。途中から絶対無理だって分かったから」
俺は消沈気味に、帰宅し、マイリー神殿に行った。
傭兵の親の影響もあって、昔から熱心な信者だった俺。
祈りを捧げ、俺に騎士は向かないのかと神に問い掛ける。
勿論、神の声を聞くことの出来なかった俺に、神からの啓示は無い。
そして神殿に通いつめて数週間。俺には信じられないことが起きた。
神殿の訓練所を借りて、剣の練習をしていたとき、不意にマイリー神の声が聞こえた。
俺は騎士になりたい、作法がダメなら剣技で誰よりも勝ってやると手が動かなくなるまで剣の練習をしていたときだったはずだ。
俺の信仰心が神に届いたのか、はたまた俺の思いを悟ってくれたのか。
信じられないことだったが、数日後、いつのまにか俺は神官として神殿に使えるようになっていた。
どうせならと、神官戦士としての教育を受け、それなりの作法と神官戦士流の剣術を学んだ。
めでたく神官戦士に就任し、先輩戦士や同期の仲間と、日々鍛錬に励む。
この頃は、かなり熱心に神に祈りを捧げたりしていたような気がする。
今では、最低限の奉仕しかしていないが・・・。
先輩に従って、いくつかの依頼をこなしたりもした。
初の神官戦士としての仕事は、他のマイリー神殿へのお使い。
さらに、近辺の森に移住してきたゴブリンの群れを、フリーの冒険者と共に討伐に行ったこともあった。
近くの村のカタコンベに出現したワイト退治のとき、俺は今までの愛用だったブロードソードを使うのを止め、自らが神官になってから稼いできた金と、父親の貯金をつぎ込み、今の愛用であるグレートソードを作った。
ファンの街で、探し回ってやっと見つけた、腕のいい鍛冶師。
交渉の末、銀製のグレートソードを作ってくれることになった。
だが、詳しい話はせず、「聖印を入れてくれ」と頼んだところ、鍛冶師の勘違いで儀式用のような装飾まで施されていた。
当初はかなり気に入らなかったが、今では気に入っている。
そして、神官戦士6人でカタコンベへと出陣。
先輩神官戦士の銀のバスタードソード2人に混じり、グレソーを振るう。
他の仲間はホーリーウェポンを自らのメイスや剣にかけ、複数で1体のワイトを攻撃する。
銀の軌跡を描く剣の一閃、淡い光を纏ったメイスの殴打。
僅かずつにだが、手傷を負いながらも、だんだんとワイトを駆逐していく。
数十分後、苦戦を強いられたがそれらを退治することが出来た。
重傷を負った仲間に加え、俺自身も癒しの術を使っても全治1ヶ月の傷を負っていた。
自宅休養中、大きな金をかけて購入したグレートソードを見やって、俺は決めた。
「・・・こいつに名前でもつけるか。物に名前をつけると長持ちするとか何とかってばーさんが言ってたし」
包帯の巻かれていない左手で、ベッドの横に立てかけてある剣を掴み取る。
留め金を外し、両脇に剥がれるように鞘が抜け落ち、銀色の刀身が煌く。
細部に施された、薄い碧や蒼の装飾。
「よし。こいつの名前は「ベリィ」にでもしようかな」
俺は、数匹のワイトを葬ったこの剣に、神聖語で「埋葬する者」の意を持つ名前をつけて愛用することを決めた。
・・・やっぱり俺は、騎士よりもこっちのほうが向いているのかもな。
そして数ヵ月後、俺は騎士になることを諦めず、修行の意味もこめて各地のマイリー神殿をめぐりながら、旅に出ることにした。
もっと経験をつんでみよう。
そして数年後の今、辿り着いたオランに居座っているのは言うまでも無いこと・・・かな?



  


(C) 2004 グループSNE. All Rights Reserved.
(C) 2004 きままに亭運営委員会. All Rights Reserved.