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私達がザルム鉱山に入ってから4日目のこと。
私達は、耳がかたっぽしかないコボルトに会った。どーやら、このひと(?)が、鉱山にいるコボルトの長、らしい。 前にいるルインが、剣を抜いて、片耳のコボルトと戦い始める。私も、ちょっとだけ剣の扱いを習ったから分かるけど……ルインさんも、この片耳のコボルトも、すごく強い。 私には、見てることしかできない。 そうこうしているうちに、片耳のコボルトは、ちょっと聞き取りにくいけど、ちゃんとした東方語を使って話し始めた。 『忌々しいニンゲンが』 そして、その手には、見たことのある……そう、あれはピルカの髪飾り! 片耳のコボルトは、私達に何を要求するのだろう?でも、落ちついて見てみると、その獣面の奧にある瞳には、確かな知性の輝きが見られた。 ……そんな片耳のコボルトの瞳は、仲間を殺された怒りの他に、抑えがたい怒りが滾っているように見えた。 私達に向ける怒りとは、違う種類のもののように感じられたのは、私の気のせいかな。 コボルト達を説得、できるとはあんまり思ってないケド、でも話は聞きたい。 もしかしたら、これ以上戦わないですむのかも知れないから。 だって、戦いに疲れているのはどっちも同じだと思うモン。
私以外のみんなは、別の部屋に閉じ込められて……ここにいるのは私だけ。 今、私一人で、オルガと向かいあって、彼の話を聞いている。 『我々はニンゲンにフクジュウを迫られたのだ』 片耳のコボルト、オルガの話を要約すると、こんなかんじになる。 彼等の長(ダークエルフだったらしい)を殺し、仲間を殺した人間達。 もちろん、彼等も最大限の抵抗をしたという。それでも、彼等を襲った人間のうち一人だけは生き残り、この鉱山の奧に潜んでいるという。 もし、その人間を倒したら、彼等は森の中で暮らしたいと言っている。この鉱山は解放する、と。
こんな大きい話になるとは思わなかったなぁ……(溜息) 私一人で決断できる話じゃない。みんなはまだ、コボルトが敵だと思ってるんだから。 まずはみんなに、今の話をして、コボルト達が私達との戦いを望んでいないことを知ってもらって……信じて貰わないと。 みんなが、私の話(=コボルトの話)を信じてくれれば良いんだけど…………。 すべての魔物が、人間の敵になるわけではないって。 依頼を果たすために動いてる今、敵になるのはコボルトじゃなく人間なんだって……。 私はオルガに頼んで、みんながとらわれてる部屋の前で、できるだけ大きな声で、今聞いた話を繰り返した。 あんまり、大きな声は出せないんだけど……苦しくなるし……。 一通り話したあと、みんなはしばらく無言だった。 「……分かった。」 と、言ったのは、マイリーの神官でもあるルインの声だった。 「……私の話、信じてくれるの?」 「ああ、元はコボルトの話だが、今話してるお前は仲間だ。仲間の話は信じないとな。」 ……良かった。みんな、私の話を信じてくれた。オルガにも勿論、みんなが納得したことを伝える。 これで、相手を倒せば、私達は依頼をこなしたことになる。 ……よーし、がんばらなくっちゃ!!<>0:26<>
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