下水道でのお仕事 ( 2001/07/27 )
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作者
すず
登場キャラクター
クプクプ、キャス、ラハリト、エグバート、サファネ



《酒場でお仕事》

 宵の口、目抜き通りに面している酒場の店内には人、人、人が溢れかえっている。
 その隙間を縫って、カモがいないかと店内を物色しているオイラはクプクプ。
 今をときめく(?)冒険者のオイラはあっちゃこっちゃで、その名をとどろかせ中だってばさ♪で、そんなオイラの頭の上から、
「おや、こんばんは」
 おっとりとした声がかけられた。
 声の主は、柔和な笑みを浮かべたグレアムのおっちゃん。
 このおっちゃんは前に一緒に冒険に出たこともあるんだけれど、本職は石屋だったり、ラーダの神官だったり、結構手広く商売(?)しているらしい。
 グレアムはにっこり笑うとオイラに隣の席を勧めた。
 忙しく汗を流しながら配膳をしている店員に、オイラがエールを注文するのを待ってからグレアムのおっちゃん、最近冒険の方はどうだ、とか聞いてきた。
 前回行った蛙の遺跡の話をすると、グレアムのおっちゃんは頷きながらオイラの話しに耳を傾け、話し終わったところで、今はなにか仕事をしてるかって聞いてきた。
「いまんところオイラはフリーだってばさ〜♪」
 そう言うと、グレアムのおっちゃん、そうですかとまた一つ頷いてから、
「それではラーダ神殿から出ている依頼など受けてみてはどうですか?」
 最近、といってもここ2ヶ月の間だけど、スラムやその周辺の下水道から、巨大な鼠や百足、蜘蛛などが這い出てくるようになったって噂がある。その噂の原因究明と、巨大生物がいた場合にはその駆除をラーダ神殿が冒険者に依頼しているらしい。

 ん〜、そろそろ次の仕事でも探そうかなって思っていたところだから、丁度良いかな。報酬も悪くない値段だしね。
 グレアムのおっちゃんに、メンバーを集めてから神殿に行くと約束して・・・さて、暇そうな冒険者でも冒険者の店に探しに行こーっと♪

 いつもの酒場で見つけたメンツは、やっぱりいつものキャスにーちゃんと、ラハリトのおいちゃん。それから、盗賊ギルドで何度か顔を見たことある若いサファネってにーちゃんと、髭親父のエグバート。
 髭のエグバートは、今回初めて一緒に仕事するんだけど、元傭兵って事でラハリトのおいちゃんと話が合っているみたい。
 どーでもいいけど、ラハリトの無精ひげといい、今回『むさい髭親父率』高いってばさ。ラハリトのおいちゃんいうところの華がないってカンジ?まあ、女性がいる=華になるってもんでもないらしくその辺はビミョ〜♪

 さて、ラーダ神殿より正式に依頼を受けたその日。
 みんなより一足先にオイラと、サファネにーちゃんがスラムに入って聞き込みをしたところ、スラムでは噂を知らない人がないってなくらいで、犬くらいの大きい鼠を見たとか、1メートルはある百足が猫を捕らえて下水道に引き込んだとか、様々な話を聞いた。
 中には子供が鼠にかじられて死んだって話しもあったけれど、これはホントに噂だけで、確認はとれなかったけどね。
 目撃情報が一番多かった下水道の入り口をチェックしてからみんなと合流〜。

《地下下水道へ》
 
「とりあえず潜ってみようぜ」
 下水道の入り口前で、キャスの言葉にみんなが頷く。いざ下水道へ。
 しかし下水道はオランの汚水が流れる場所。スラム街に輪をかけて臭い・・・てーか鼻がもげそう。鼻で息するのが嫌だから口で息を吸うんだけど、そうすると口の中に臭いのが入って来るって事で〜・・・。ああ、冒険者って辛いよね〜。
 どっちで呼吸しようか迷いながら暗い下水道に降り立ち、ランタンを掲げる。
「げ、何だこりゃ?」
 後から来たエグバートが、汚水に顔を近づけた。エグバートがそう言うのも、汚水は一瞬血の色かと思うほど真っ赤だったからだ。下水道は水路の巾が3メートルあるかないかくらいの狭さになっていて、人が一人なんとか通れる通路がお情け程度についている。水路は汚水で膝が埋まる程度の深さで、その汚水がみるも鮮やかな真っ赤っか。
「血、じゃあねぇみたいだが・・・」
 ラハリトがその辺にあったゴミを、水面に向かってけ飛ばす。
「流れはあっちから来てるみてぇだな」
 ゴミが流れていくのを横目で見て、エグバートは降りてきた所から見て右側、方角的には東の方向にランタンを掲げた。
「この水の色。大鼠と関係あるんでしょうかね」
 呟いたサファネにキャスが肩を竦める。
「さあな。調べて見りゃわかるだろうよ」

 一行はオイラを先頭に、赤い水を追って先へ進むことに。
 直ぐに三叉路になっていたけど、ここは流れてくる赤の色の濃い方を選ぶ。
 曲がり角の先から顔を出して確認しているオイラに、直ぐ後ろを歩いているラハリトが声をかける。
「なんかいるか?」
「ん〜、いるようないないような、いないようないるような。そんなカンジ?」
 ぽかりと頭を叩かれる。
「真面目にやれ」
「痛いってばさ〜。なんかいる気配はあるけど、遠くてまだわかんないって〜」 
 仕方ないので、とりあえず注意を払いながら先に進む。
「なんだチビコロ。なんにもいないじゃ・・・!」
 隊列の真ん中を歩いていたラハリトが、急に横っ飛びに汚水の中に飛び込んだ。着地に失敗して膝をつく。そのラハリトのいた場所に、黒い物体が落ちてきた。
 それは1メートルはあるだろう、巨大なアリンコ。
 真っ黒でつやつやとしたアリンコは、触覚をちりちり動かし、今にも得物に飛びかかろうってな感じで体を前後に揺らしながら、何考えてるんだか判らない目でこっち、つまりオイラを探っている。
 ・・・ヤバいってばさ。もしかして、オイラ狙われてる?
 今にもオイラに食いつきそうなアリンコに、エグバートが腰を沈め、シャムシールを抜く手も見せずに、斬りかかった。いきなり背後を突かれたアリンコは体を仰け反らせて狭い通路で素早く反転すると、自分を斬りつけたエグバートに鋭い牙で襲いかかる。それをエグバートはバックステップでかわす。が、その背後にも天井から新たなアリンコが降ってきた。エグバートは舌打ちしながらも、二匹目の牙をすれすれでかわす。
「お前の相手はこっちだ!」
 キャス、サファネがそれぞれ剣に手をかけ、二匹目のアリンコに攻撃をかける。体を引き、次の攻撃に構えたアリンコの三節目に、キャスの一刀が横なぐりに斬り払った。嫌な音がして、切り裂かれたアリンコの体から体液が飛沫を上げる。その飛沫に足を取られサファネが体勢を崩した。そこに新たな3引き目のアリンコが落ちてくる。
「うわぁ!」
 サファネは体の上に押しかかるアリンコの、鋭い牙をダガーでかわしながら身をよじるが、アリンコの頼もしい足に押さえつけられなかなかに抜け出すことが出来ない。この体勢では精霊魔法を唱えることもままならない。そこにやっと、体勢を立て直したラハリトが、汚水の中からサファネに加勢する。
 上を見れば下水道の天井に横穴があいていた。どうやらこのアリンコ達そこから降ってきたらしいけど、なんとその穴から4匹目が頭を出し、辺りを探っていた。
 一体、あの穴にアリンコ何匹隠れてんだってばさ〜!

 アリの雨を斬っては捨て斬っては捨てを繰り返し、やっと一段落をしたときにはアリンコの死体は5匹にもなっていた。
「初っぱなから手荒い歓迎だな」
 キャスが額の汗を拭いながら、シャムシールを鞘に戻す。
 その横ではズボンから下を汚水につけちゃったラハリトのおいちゃんが、何とも言えない顔でブーツを逆さにし、中に溜まっていた汚水を流している。
「にしても、このままこの死骸を放置していたら、下水の流れがせき止められてしまいそうですが大丈夫でしょうか?」
 サファネの言葉に、あっさり応えたのはエグバート。
「それなら、バラバラにすれば流れていくだろ。おおっと、つべこべ言うな。これも仕事だ。俺はこっちからバラしていくからそっちのヤツをバラしてくれ」
 その言葉に余裕でふふ〜んと鼻を鳴らしたのはラハリト。
「俺はこんなんだからいいけど、お前ら大変だよな」
 気持ちはわかるけど、おっちゃんはいつも一言多い。
 
 アリンコを叩きのめし、アリンコを切り刻み、アリンコの体液にまみれてから、進むことしばらく。通路の壁側にあまり広くはない部屋が現れた。
 中を覗くと、これでもか!ってなくらいにゴミが散乱している。部屋の1/3くらいが元はなんだったのか見当もつかないっていうか、考えたくないっていうようなゴミに覆われ、部屋の中を淀んだ空気が漂よう。
「ラハリトのおいちゃん家みたいだってばさ♪」
 オイラが呟いた言葉にラハリトのおいちゃんが反応する。
「馬鹿言うな。俺の部屋だって最近はな・・・」
「おい、今はそんなことやってるときじゃないだろ?」
 思わず息巻くラハリトのおいちゃんに、キャスのもっともな言葉が飛んだ。
「鼠の巣、ですかね」
 そう言いながらサファネは、さてどうしましょう、と仲間の顔を見て廻す。
「ぱ〜っと派手に燃やしちゃえばいいじゃ〜ん♪ゴミも処理できるし、一石二鳥ってカンジ?」
 途端に、みんながオイラの顔を振り返った。
「・・・お前、たまには良いこと言うな」
 キャスにーちゃん、いくらオイラに対してだって、そりゃ、あんまりだってばさ。

《下水道の主》

 鼠の巣を油を撒いて燃やし、慌てて中から飛び出してきた3匹の大鼠をエグバート、キャス、ラハリトの三人で斬って捨て、先へ進む。
 いや〜、今回の仕事ってメンバーのうち3人が戦士だから、多少の敵にもびくともしない。それどころか、バターみたいに敵が斬られてくのはちょっと見物。たまにはひたすらこんな力押し〜な冒険もいいかもね〜。オイラが全くの役立たずってヤツになってるけど〜。
 そんなことを思いながらも、尚も下水道を先へ進む。
 途中でまた、大鼠に遭遇したけれど、戦士達にとってはたいした敵じゃないってカンジで、さくさくと更に先へ。
 いくつかの水路を経て、広いプールみたいな部屋に到着。ここがもっとも赤い水の濃いところ。
 ここへ水が注がれているのは、その隅にある巾1メートルくらいの下水管。さて、ここで問題が一つ。ここからは下水のなかに入って進まないと行けない。
 みんなが嫌そうな顔をした。違った、ただ一人ラハリトのおいちゃんだけが楽しそうな顔をしている。何故か、そりゃブーツの中に汚水を浸ける仲間が増えるからだしょ。
 でも、幾らぶつぶつ言っても、結果は同じ。みんなで仲良く、膝の下まで汚水に浸かる。
 半ば自棄になりながら、下水管に近づいたそのとき、エグバートがさっと左手を真横に挙げ、みんなを制した。「なんかいるな・・・」その言葉に、一同剣の柄に手をかける。
 みんなが息を詰めている中、下水管から、ゆっくり、ゆっくりと姿を表したのは、やたらとでかいナメクジ。汚水をかきわけながらゆっくりとこっちに近づいてくる。
「今度はナメクジかよ。塩でもありゃな」
 キャスにぼやきに、サファネは苦笑混じりで、
「これだけの大きさじゃ、かける塩で財産が飛びますよ」
 そう言いつつ、ナメクジに詰め寄る戦士達と間合いを取って離れる。
 最初に動いたのはキャス。飛び込みざまに、シャムシールが閃く。が、ナメクジは上半身(なの?)を上げ、飛び込んできたキャスをその巨体の下へ飲み込んだ。
「うわ〜キャスにーちゃんが喰われたってばさ〜!」
 騒ぐオイラの襟首をサファネが掴む。
「下敷きになっているだけです!それより下がって!」
 キャスが下敷きにされたのを見たエグバートとラハリトは、それぞれ剣を抜き左右から攻撃を掛けた。エグバートは柄に手をかけていたシャムシールを抜き打ち、ナメクジの左目(あの出っ張ってるヤツね?)から胴体(っていうの?)の方までざっくり斬って割る。右に回ったラハリトは脇に構えたブロードソードをなぎはらいナメクジの腹(なのか?)を切り裂いた。そこに真っ正面からサファネの放った光の精霊が、ナメクジの顔面に炸裂。
「とあっ!」
 かけ声ともに、背後に回ったエグバートの剛剣が、両側からの攻撃に身をよじっているナメクジに打ち落とされる。その一撃でひくひくと体を痙攣させてナメクジは動かなくなった。
 んで、その下から救出されたキャスにーちゃん。ナメクジのぬめぬめと汚水まみれは仕方ないとしても
、体中の擦過傷から汚水の毒が入ると危険だということで、ラハリトのおいちゃんに手当を受ける。
「色男が台無しだな。これじゃ」
 キャスはラハリトの言葉に口を開きかけたが、治療してもらっているてまえか、ぐっと堪えてた。
 
 やっとこナメクジを倒し、落ち着いてから下水管の先を調べたところ、下水管は先で更に細くなっていて、人が通り抜けることは出来なかった。
「クプ、この上はどこら辺になる?」
 エグバートに言われ、がさがさとあらかじめ用意した、下水道と地上の地図を重ねて描いた物をのぞき込む。
「ほにょ?あ〜っと・・・陽光通りだってばさ。ちょうど広場にぶつかる手前って辺り?」
 その通りの名前を聞くとエグバートが、ぴくりと眉を動かす。めざといサファネがそれを見て、
「どうかしましたか?」
 尋ねると、エグバートのおいちゃんは、髭だらけな顎を軽くなで、ひょいっと顔を上げ、
「ああ、思い出した!この上は、蔦屋じゃねーか」
 突然の大声に、側にいたキャスが顔を顰めた。
「この上、この水を流してるのは蔦屋だ。染め物屋なんだが以前そこの主から、用心棒の仕事を受けたことがあるんだ」
 エグバートの言葉に今度はラハリトが表情を変えた。
「蔦屋って言や、最近クラウン・レッドって名前の生地を売りに出してたな。これはその染料なのか・・・」
「ああ?クラウン・レッドだぁ?」
「ああ、今女達の間で流行っている。なんでもその深みのある赤が女の肌を白く見せるとかなんとか」
「へぇ、なんだか詳しいんだな」
 意味ありげに、にやつくエグバートを、ラハリトは鼻で笑い。
「はん、馬鹿言うな。こんなの、冒険者としての常識ってもんだ」
「って言うか、おいちゃんの場合、冒険者の常識じゃなくて女性の関心を買いたいだけだってばさ♪」
 すかさずオイラの頭にラハリトパンチが炸裂。人間って真実を突きつけられると凶暴なるんだってばさ。

《流行の代償》
  
 さてさて、そんなワケで、ひとまず下水道の探索終了〜。一端上に上がって、いまんところ一番怪しい蔦屋を調べることに。
 んで、その辺で聞いたところによると、クラウン・レッドを蔦屋が売り出したのが3ヶ月前、大鼠なんかの噂が立ちはじめたのが2ヶ月前。これはかなり黒に近いってカンジ?
 とりあえず探りを入れるために、サファネとオイラは蔦屋の前まで行くことにした。
 蔦屋は老舗じゃなくて、外の国から来た商人が1年ほど前から始めた店で、こざっぱりとした店構えに、その裏手に染め物を作る工場が建てられている。
 店の近くの路地から蔦屋を見ていると、確かにひっきりなしに女の人が店へとやってくる。あ、今にこにこしながら入ってたのってケイって名前の酒場によくいる神官ねーちゃんだってばさ。
「とりあえず行ってみましょうか」
 出て行こうとするサファネの袖を引っ張る。
「あ、待った。あれ見て。ほら今、蔦屋から出てきたのリュインねーちゃんだってばさ」 
 サファネと顔を見合わせ軽く頷くと、路地から出てリュインねーちゃんを追っかけた。
「リュインねーちゃん。ねーちゃんも蔦屋にお買い物?」
 にっこり笑って話しかけるオイラに、リュインが振り返る。
「え?あ、なんだクプか。買い物なんかじゃなくて仕事で行ってたんだよ」
「仕事って染め物屋で、ですか?」
 サファネが空かさず質問する。、
「うん。今、あの染め物屋すごい人気でしょ?この勢いを衰えさせないために新しい色を研究してるんだって」
「研究?それがリュインさんの仕事ですか?」
 リュインはサファネの問いにふるふる首を振って、
「ううん。研究ってね錬金術なの。錬金術って言っても新しい色を作るってやつでね、魔術をかじった人がやっていて、結構すごいんだ。僕はその人に頼まれて、材料を届けただけ」
 錬金術って言葉を聞いて、サファネが素早く目配せした。

 それからどうしたかってーと、キャスにーちゃんの提案で、ここまでの報告と共にあの赤い下水道の水をグレアムのおいちゃんのところに持っていき、魔術師に調べてもらうってことになった。
 んで、オイラは今その結果を聞くために、最初にグレアムのおいちゃんに仕事を振られた酒場にいる。
「そいで〜おいちゃん、どうだったんだってばさ?」
「ええ、当たりです。あなた方の持ってきた下水道の水を、魔術師ギルドで調べてもらった結果、動物の成長を急速に促進させる成分が入ってました」
「んじゃやっぱ、蔦屋の染色屋が流した今流行のクランウン・レッド。あれが原因だったんだってばさ♪」
 そこで、エールをちろっと舐めてから。
「オイラ達の仕事は原因究明までだっただしょ?後はおっちゃんたちで話し付けてくれればOK〜」
 グレアムのおいちゃんは軽く微笑みながら頷いている。
「ええ、お任せ下さい。・・・おや、この手は何でしょう?」
 おいちゃんは自分に向かって差し出したオイラの、可愛らしい手を見て首をかしげる。
「仕事終わったから、お金ちょ〜♪」
「おやおやおや、まだ仕事は終わってないじゃないですか」
 にっこりと微笑むグレアム。
「うにょ?」
「仕事は巨大生物の駆除までです。お話を聞いたところ噂に上がった、巨大百足や蜘蛛はまだ退治されてないようですが?」
 
 結局、ラーダ神殿から報酬をもらえたのはその5日後だった。

《おまけの6日目》

 酒場に入って来たキャスは人を避けるように、酒場の一番空いている奥の席へ。
「よう・・・」
 そこには昨日まで一緒に下水道で5日間を過ごしたラハリトとエグバートがいた。
「その顔からすると、あんたらも取れないのか」
 キャスの言葉にラハリトは怠そうに手を振り、
「風呂に入っても取れねぇ。肌に染みついちまったみたいだ」
 そう言って振っていた手の匂いを嗅ぎ、顔を顰める。その横でエグバートも口の端を上げ、
「傭兵時代に何日も風呂に入らなかったこともあったが、そんなもんの比じゃねーな」
 エグバートとラハリトが二人で軽く顔を合わせた後、手の中で緩くなった酒を一気に呷る。
「もう二度と下水道の仕事は受けねぇ・・・」
「チビコロに関わるとろくなコトがねえな・・・」




  


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