海面の人影 ( 2001/08/23 )
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作者
 
登場キャラクター
ディーネ ネラード



 僕はカゾフの街外れの砂浜でぼーっとしていた。
 すると沖の方に小さな影を見つけた。
 なんだろうと目を凝らしてみる。
 人だ!
「ネラード!あれ人だよ!」
「なんだって!?」
 ネラードは素っ頓狂な声を上げて、その人らしき影に視線を向ける。
「助けないと!」
「……あ……そうだね」
 僕はなんかかったるい。
 ネラードはすぐに漁師のおじさんを連れてくると、僕たちは小船で海に出た。
 そして、海面を漂うその人影みたいなのに近づく。
 男の子だ。
 男の子が板切れに引っかかる感じで漂っていた。
 でも僕たちは男の子に近づけなかった。
 男の子が浮かんでいる所は、潮が急に早くなっていて近づけないという。
 でもなんで男の子は流されず、あそこに浮かんでいるんだろう……
 僕はそんな疑問が一瞬浮かんだ。
 ……ま、いっか……僕がどうなるワケじゃないし……
 だけど、そんな僕の横では、ネラードとおじさんが苛立った顔をして、男の子を見ている。
 僕は船の端っこで、興味なさげにそのやり取りを見ていた。

”……他人事なのに……バッカみたい……”

 ――でも僕はその男の子の顔を見る事が出来なかった。

”――でも――”

 その時だった。

『……た……す……けて……』

 何の声か確認できなかったが、僕は思わず声がした方を振り向いた。

”あの男の子?”

 でも、その声は、ネラードたちには、聞こえてないような気がする。
 じゃ、精霊さん?
 僕は何かに取り付かれたように、海に落っこちるんじゃないかというくらい、前のめりになって男の子の顔をギョーシした。
 その顔は真っ青で唇も紫色。今にも死んでしまいそうな……いや、もう死んでしまっているんじゃないかという顔だった。
 カットー――

”……でも、他人事だよ。僕が死ぬんじゃない……でもでも……”

”助けなくちゃ……”

 僕は何かを振り払うかのように頭を振ると、後先考えずそのまま海に飛び込んだ。
 僕は村一番の泳ぎ手なんだ。
 あんな男の子の一人や二人すぐに助けられ…………うっ……しょっぱい!
 海の水ってこんなにしょっぱかったの!?
 目が痛くて前が見えない。
 僕は、目を瞑りながら頑張って男の子の所まで泳いだ。
「しっかりて!」
 返事はない。
 死んじゃってるの!?
 いや、死んでない。
 男の子の中の精霊さんが僕はまだ生きているよって、教えてくれている。
 僕は男の子を抱えて船に戻ろうとする。
 でも、なんかが引っかかっている感じがした。
 僕は、目が痛いのを我慢して、水の中に顔を突っ込んだ。
 すると男の子の足に、大きな海藻が絡まっていた。
 なるほど、これでこの子が流されなかったんだ。
 こんな時なのに、ヘンに納得。
 僕は太股に忍ばせていたダガーを取り出すと、その海藻を切り離した。
 さあ、船に戻るぞ。
 でも、服に水が絡みつくようで思うように泳げなかった。
 くそぅ……海の水がしょっぱくなかったら……もっと上手く泳げるのに……
 その時だった。
 僕の右足に激痛が走のは――
「いたっ!」

”足つった!”

 僕は悲鳴を上げると、一瞬、僕は男の子と一緒に海の中に沈みこんだ。
 僕は完全に溺れた。
 その後の僕は、海面から顔を出しては潜っての繰り返すだけ。
 苦しい!(海の)水が咽に入って、咽が痛いよ!
 ネラード助けてよ!
 咳をしているのか、息をしているのか僕ですらわからない。
 あっぷあっぷと、口をあけて空気が入っているコトだけはわかるといった感じ。
 船の上からネラードが僕に叫んでいる。
 なに!?聞こえないよ。
 僕は必死にもがいた。
 もがいてもがいてもがきまくった。
 でも、僕は次第に意識が遠のいていった。
 でもはっきり覚えている。
 ネラードも海に飛び込んだ姿だけは……



 目が覚めると、僕はベッドの上だった。
 ネラードが助けてくれたんだとすぐにわかった。
 僕はまだ少しぼーっとした頭でベッドから起き上がる。
「目が覚めたようですね」
 ネラードがノックもせずに部屋に入ってきた。
 僕は黙ってネラードの顔を見る。
 ネラードも僕の顔を見る。
 なんだか少しほっとした気がした。
 僕はとりあえずネラードにお礼を言って、それから、ちょっとおしゃべりをした。 
 ネラードは僕を心配して、顔を見せにきたらしい。
 あの男の子は無事らしい。
 よかったよかった……
 僕はカッコよかった?
 ……あれ?
 ネラードの口元が緩んだ気がした。
 笑ったな。
 でも、ヘンなんだ。ネラードと喋っていると、今までより落ち着くんだ。けど、落ち着かないところも……
 あと、よくは説明できないけど、前よりネラードが大きく感じる。
 なんでだろう……
 そんな違和感を感じながら僕はネラードに一言声を掛けた。
「遺跡行く前にどっか遊びいこ。奢るからさ」
 ネラードは優しく微笑んで、一回頷いた。




  


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