石畳の街の語り 手( 2001/09/07)
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作者
霧牙
登場キャラクター
アーカイル




母なる森を出て男は歩 む

人里への道を 独り果てしなく

男は森の妖精 気高きエルフの者

故郷を発ち 人の街へと

右手には美麗な杖 左手には使い古した竪琴

優雅に 厳かに 静かに道を行く

己の記憶を伝えるために

己の記憶を繋げるために

時には高き声で紡ぎ

時にはハープの調に乗せて

男は語り部 エルフの語り部

男の口から紡がれる 世の伝承 世の歴史

全てを語り伝えて次へと移る
時には郷愁を感じ 森へと帰る

男は語る
ある時は草木香る公園で
ある時は潮風漂う海岸で
ある時は人の喧騒の中で

エルフの男は今日も紡ぐ
生命尽きるその日まで・・・・



語り終え、エルフの男は杖とハープを取って立ち上がった。
聴衆から渡される銀貨を拒否して、静かに歩き出した。
優雅な足取りで、人込みを見極めているように、人込みの合間を縫って歩く。
そして、樹木が茂る公園でエルフは立ち止まる。
奥へ奥へと進み、具合のいい木を見つけて、太い枝へと腰をおろす。
(・・・・私は、本当にそれだけの理由で森を出たのだろうか・・・)
エルフは木に手を当て、精霊の息吹を感じながら心中で呟く。
(・・・・・私は人間界で何をしたい・・・?記憶を繋ぐ・・・それは自分を言い聞かせる理由に過ぎないのだろうか・・・)
木に頭を預け、目を堅く閉じる。
微々足る物だが、木の精霊の力を感じる。
(・・・・・・森ほどでは無いな・・・。・・・森には森の、街には街の精霊か・・・)
しばらくそうしていたエルフは、枝から飛び降り、堅い地面に着地した。
石畳の道が、大地の精霊の息吹を封じている。
(・・・・・・・・)
無言のまま目を閉じ、杖のリングを鳴らしながらエルフ――アーカイルは何処へと歩み去る。







  


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