5年前…( 2001/09/14)
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作者
高迫 由汰
登場キャラクター
ルギー、メリエル




最近、ルギエルが剣を習い始 めた。


きっかけは些細な事、メリエルの弟子になって六年、自分ももう16。
そろそろ吟遊詩人として、彼女と共に世界を旅したいと親に話した。
「旅に出たいだと!戦えもしないのに何考えてる。大体冒険者なんてまともな職にもつかん奴らがやっているような事だ。そんなふらふらした生活は見とめない ぞ!」
言うと思った・・そんな顔をしながら、うんざりとルギエルは父親の言葉を聞いていた。
「学院に言っても魔術師にはならない。せめて賢者として立派になってくれるのかと思えば、吟遊詩人になるだと!?」
「それくらいの予想は付いて、俺が師匠の所に弟子入りしたのを見とめたんだろうが」
「ファトランも趣味で絵を描いていた。あの女が金はいらないというし、歌がおまえの気休めになるのならそれも良いと思ったのだ。それを、我々の期待を裏切 りおって!」
怒りと呆れが混ざったような、なんとも言えない表情を、ルギエルは冷静に見つめる。
「吟遊詩人なんてばかげた夢は捨てろ」
「断る」
「私たちはお前をそんな風に育てた憶えはないぞ!」
「そんな憶えあってたまるかよ、俺をファトラン兄貴と同じくするのに必死だったあんたにな!」
この言葉は、意外にも父親には想到キタらしい。
何も言えなくなったのか、唇を噛みながら自分を睨んでくる父親。
これ以上の口論は無駄だと思って、ルギエルは両親に背中を向けた。
「何処へ行くつもりだ」
「学院」
それだけ言うと、部屋を出ていく。
外に出ようとしたとき、玄関においてある鏡を見て、ルギエルは舌打ちをした。
このころ、ルギエルは自分の顔から姿から、全てが嫌いだった。
死んだファトランに、瓜二つに成長したからだ。違うのは、伸ばされた髪くらい…。
そして最近、母親は更に自分と兄を混同するようになっていった。


来年、自分は兄が死んだ年齢と同じ歳になる。


「荒れてるわね」
「そう?普通だけど」
「声に苛立ちが出てるわ、こう見えても六年間あんたの師匠やってるのよ」
どう?と言わんばかりのメリエルの表情に、ルギエルはかなわないと思い、つい苦笑した。
学院からの帰り道にメリエルの所に寄って、日が暮れるまで歌と楽器の練習をするのが、この六年間のルギエルの日課だった。
そして今日は、朝に会った事を話した。
「そう…やっぱり反対されたの」
「まぁ、反対されるの、目に見えていたしな」
と、微笑して言ってきた。
「どうするの、あんたが16になったら旅に出ようかとは、確かに話していたけど…」
「これに関しては、ちゃんと親の承諾が無かったら、師匠がうるさそうだからなぁ」
と、苦笑する自分の唯一の弟子を見て…






  


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