貴族屋敷の怪音 をたて!〜とびきり最高の最低な初仕事〜
( 2001/09/02)
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作者
SSS(TRIes)
登場キャラクター
デリュージャン、ルギー、ダーヴィッツ
「じゃまするぜ〜」約束の時 間に行きつけの酒場「気ままに亭」の入り口をくぐる。といっても昼間から酒を飲む為じゃあない。仕事の為だ。さ〜て、ルギーの奴は用意して・・・るのか?
「よう、ルギー」とりあえず、挨拶からはいって様子をうかがうことにする。
「ん?デリューか?はやいじゃねえか。どういうきまぐれだよ?」早くでたからに決まっている。それより・・・
「・・・なにをしているんだ?」先ほどからの疑問を済ませておこう。
「みりゃわかるだろ?カミを編んでんだよ」・・・なぜ!?なぜ三つ編み!?しかも手慣れてる!
「・・・ファッションか?」肯定的に述べてやろう。
「ま、儀式みてえなもんさ。それにじゃまだからな」わかってるなら切れ。ついでに顔半分覆う前髪もな。
「あの・・デリュージャンさん?」ん?だれだ?黒くて・・・なんだかすてきな髪型だな、おい。三つ編みのお化けか?
「こいつにさんずけなんて不要だぜ」それに関しては否定はしない。
「僕はダーヴィッツ・・・え〜と、いろいろできるので。よろしく」若いな。うらやましいぜ。格好からすると盗賊か?背中に小楯をしょってるが・・武器は 持ってないようだ。だが、そのすてきな笑顔はいらねえぞ。女なら別だがな・・・。
「おれは、デリュージャン。そこの長髪野郎の言うとおりさん付けはいらねえ。よろしくな」
どうやら一人増えたらしいな。
「・・・どうやら行き先のベルネイア家にはガキが3人ほどいるらしいんだ。色々うろつかれると面倒だろ?子守にちょうどいいぜ・・。それに・・」
「まあ、こいつも冒険者なんだ、きっと力になるって」・・・まあ、なにがいるのかわからん以上、戦力になる奴が増えるのなら歓迎だが・・。ルギーの言葉も 自分の独断を正当化するためだけではないだろう。
「・・・それはわかった。・・・が今度おごれよ」静かにしかし力強く要求しておく。まったく、一言前日までに報告しろっての。
「・・ああ・・わかった」・・・嫌に素直だな。まあいい。とりあえず、出発だな。
秋とはいえ、日差しはまぶしい。オランの市街を俺達は歩いている。目的の屋敷を目指して。
「なんだよ?まだおこってんのかよ?」いいや、怒ってない。最初からな。ただ普段より目つきが悪くて無口なだけだ「・・・・・・・・・・」ダーヴィッツも 黙っている。飛び入り参加の冒険者・・・らしい。
どうやら、自分の参加を俺が快く思っていないと感じているのだろう。重ねて言うが俺は怒ってなどいない。ただいつもより無口で目つきが悪くて、ついでに近 寄りがたい雰囲気を醸し出しているだけだ。断じて怒ってはいない!
最近酒量が増えた気がしたので、控えているだけだ・・・。あ〜酒が恋しいぜ・・。この仕事が終わったらたっぷりとたからせてもらおう。覚悟しておきたま え、ルギー君。うひひひひ・・・・
「・・・あの、あの人急ににやにやしてるけど・・・・」ダーヴィッツがつぶやくのが聞こえる。天下の往来で気持ち悪い奴もいるもんだ。
「・・・ 気にしなくていいよ。あいつならそれくらい普通だから・・・」なんだ、ルギーの知り合いか。こんな町中で出会うとは偶然もあるものだ。しかし、あいつが誰 だかしらんが、ああはなりたくないもんだ。回りを見渡してどんな面をしているのかみてみるかって、誰もいないじゃないか・・。白昼夢でも見たのかぁ?ふた りそろって不気味なやつらだ。
ん?ルギーすら黙ってしまった。・・・・まあ、いい。目指す屋敷はすぐそこのはずだ。謎の物体駆逐・・・胸がなるぜ!いや、胸が躍るぜ、か腕が鳴るぜ!だ な。
お?みえたな。あの屋敷だろう。ふぅ〜働く前から歩き疲れたぜ・・。なんだよ、この、無意味になげえ壁はよぉ?まったく金持ちってやつは、わからんぜ。
ん?ダーヴィッツ?表情険しいな、おい?そんなに歩くのが嫌か?
「・・どうして・・・不公平だ・・」ん?・・・ま、こいつなりにこの世の不条理って奴を痛感してるのか?
「どうした?」ルギーにも聞こえたか・・。
「え?うん、なんでもないよ」笑顔に戻ったか・・が、かなしい笑顔・・に見えるのは、気のせい・・じゃねえな。ガキとはいえ、こいつなりに必死に生きてる みたいだな・・・。
「ようこそおいでくださいました」当主だか執事だかわからん奴が慇懃に礼をした。ここは目的の貴族屋敷だ。たしかモロヘイヤ家だったか?
「ようこそ、わがベルネイア家へお越しくださいました。」・・・家の名前が違うなど些細なことだ。
「あなたがルギー様でございますか?」おお、このおっさん初対面でルギーを見抜くとは・・。長髪の優男といえば、この中じゃ奴ぐらいだが。
「ええ、そうです。あなたは?」ルギーが答える・・・いつもそれぐらい気を使ってりゃ、女運が下がることもねえだろうに・・。おっと、人のことはいえねえ が。
「申し遅れました。私は当家の執事、カーマンでございます。」なかなか礼儀正しい男のようだ。服装も乱れていない。髭もきちんと整ってる。この家は、なか なか、裕福なようだ・・。しかもめちゃくちゃ綺麗な共通語だな、おい。
「このたびは当家の怪音の正体を突き止め、場合によってはそのもとを駆除していただく、と言うことでございますが、よろしゅうございますか?」なにをいっ てやがるこのおっさんは。よろしいにきまっとるだろうが。
「ええ、そのつもりです。異存はありません」ルギーが答える。
「報酬に関しても同様でございますね?」話より人数が増えてるからな。ま、当然の確認だな。
「は い、異存はありません」威勢良くこたえているが・・・一人増えた分はおまえの取り分から引かせてもらうからな。それがいやならこの場で交渉でもしておく れ。って異存なしかよ。太っ腹だな。ちなみに、仲良く3等分しようぜ♪なんていったらどたまかちわってあげるからね、ルギー君。
「おまえもいいだろ?デリュー?」おっと今度はデリューに話をふったか。なるほど、一人なら独断だが二人なら合意だもんな。
さあ、どうするデリュージャン?
「・・・・・・・」おっ!かんがえてるな。うん、こいつは重要だからな。・・・いや、まて、デリューは俺だろうが・・。
ちっ!ここでごねるのも、みっともねえしな。だいたい、ルギーのために、なんでおれが交渉なんぞしてやらねばならんのだ。
「ああ、異存はねえよ」俺の取り分に関してはな♪
「それでは、早速依頼を遂行していただきたいのですが、かまいませんね?」無論だ
「はい。案内していただけますか」さて、いよいよか。
「かしこまりました、こちらへどうぞ」そういって執事は俺達を案内しはじめた。
「こちらでございます」執事がそういって案内した先は意外にも屋敷内だった。倉庫と聞いてたからてっきり離れとおもってたのだが・・。なるほど、屋敷内の 地下倉庫なわけね。・・・ふ〜ん、結構広いな、いや、相当広いぞ・・・。
「おいおい、ずいぶん広くないか?」おなじくルギーが小声で言ってきた。どうやらダーヴィッツをつれてきたのは正解か?
ここを二人で探すなんざ、正気の沙汰じゃねーもんな。おっと、ダーヴィッツをつれてきたことはみとめたけど、それと報酬はべつだからね、ルギー君。
「・・・まさか、地下2階とか3階とかあるんじゃねーだろうな・・」執事に聞こえるようにさりげなくつぶやく。
「まさか・・・そんなことはないだろ・・」おまえには聞いていない。
「そんな・・・ことは・・ないんじゃないかな・・」悪いが君にも聞いていない。
「どうおもいます?」執事が聞いてきた。おまえが質問してどーする!
「地下一階だけとおもうがね」とりあえず楽観的希望論を述べておこう。
「・・・何故そのようにおもわれますかな?」しつこいな、楽観的希望論などに根拠があってたまるか、認めたくない現実から逃避しているだけに決まってるだ ろうが!などとは言うわけにはいかない。
「ここの辺は下水が流れてるからじゃないかな?だからそんなに地下深くまで倉庫を拡張できない・・・とおもうなぁ」俺が言う前にダーヴィッツが答えた。
「さすが、森の子羊亭のマスターの紹介ですね。その通りでございます。」執事がうれしそうに答える。そんなにうれしいのか、おい。
ちなみに、俺も今それを言おうとしていたところだ・・・・。すまん、嘘だ・・。しかし、この少年、鋭い洞察力だな。子守をさせるには惜しいが、さっきから ガキどもがあたりをうろついてやがる。3人いるらしいが・・・二人しか見えねえな。
「カーマンあかりを用意しました。」不意に声がする。ん?うしろか。なんだ、こいつが3人目か。ランタンを持ってるな。
「これはこれは、お嬢様、わざわざ・・。しかし冒険者という者はあかりくらいは常に用意しているものなのですよ」勝手に決めるな、おい。いや、そうなんだ ろうけど・・。
「え?そうなのですか?せっかく昨日から磨いて用意してたのに」言い心がけだな。しかし、この間の仮面の剣士に勝とも劣らねえ金髪だな。いかにも貴族の嬢 ちゃんてかんじだ。
「・・・デリュー・・明かり用意してきた?」
「もちろん」力一杯答えてやる。うそじゃない。「明かり」の魔法があるからな。
「あの、もし・・よかったら使ってくださいませんか」く〜、初々しくいわれると断る理由はないな、うん。あと3年もしたらいい女になるんだろうな〜。
「あ、大丈夫。僕が用意したから」・・・おい・・・。ダーヴィッツ、君も、あと3年もしたらいい冒険者になれるだろう・・
「そうですか、いいえ、おきになさらずに。」うむ、よい笑顔だ。その先がダーヴィッツでなく俺ならもっといいのだが。
「・・・最後に一つ。ここは地下倉庫ですが、中には燃えやすいものが残っています。決してして「火球」のような呪文はお使いになりませぬよう」執事のやつ わざとか・・?んなもんつかえるわけねだえろうが。
「きいたか、デリュー?くれぐれも気をつけてな」ルギー・・てめえは確信犯だな・・。
「了解した。火球の呪文は使わないでおこう」さも使えるように答えておいてやろう。
「まあ、術士様は火球の呪文が使えるのですか?」
「デリューさん・・すごいや・・」
・・・あ〜〜君たち、そこら辺は聞き流すように・・。
「さ・さあ・・いこうぜ!」さっさとすませちまうか。
「おっと、そのまえに・・ダーヴィッツ?」ルギーが思い出したように声をかける。
「はい?」
「・・わるいけど君は子供達が、倉庫内に入ってこないように見張っててくれないかな?もしはいってきたら、大変なことになるかもしれない。わかるだろ?」 ルギーの言うことは正論だが・・・ここを二人で探すってのかぁ?勘弁してほしいぜ。
「・・え?僕は留守番?」ちょっと違うがこの場合同義語か?
「たのむよ。報酬はちゃんと出すから。大事なことなんだ」う〜む、小声とはいえ、早めに切り上げてくれ。聞かれたらやっかいだ。特に子供に。いくなと言わ れりゃ行きたくなるもんだからな。
「・・・うん、わかったよ・・」渋々納得したようだ。ま、しょうがないか。普段はしまってる倉庫も、俺達が入る以上、鍵かけるわけにはいかねえしな。
・・・しかし・・・下水がこの下を流れてる上に・・・カミラムだっけか?あの女の言葉「兄さんは鉄の鎧はつけないみたいだしねぇ」
・・・鉄の鎧ね・・・。まさかあいつかぁ?・・・だとすると・・ちょっとだけ面倒だな。
「・・・なぁ」ん?ルギー?前を歩いてるので、うざい長髪が揺れてさらにうざい。しかもポニーテールをみつあみだとぉ!あ〜ランタンだったら燃やしてる ね、きっと。明かりの魔法に感謝しておけ。
「・・・おいって・・」おっと、そういや呼ばれてたな。
「ん〜?」うざそうに答える。
「この明かりの魔法ってどれくらい持つんだ?」
「一晩はもったぜ、たしか」
「・・・ならいいけど」
「おいおい、一晩中ここにいる気かぁ?仕事熱心もここまでくるとただの馬鹿だぜ?」いや、大馬鹿だな。
「・・・てめえにいわれたくはねえな・・」いいや、馬鹿はおまえだ。
「子守はどうなったよ?ま、あのねえちゃんがいりゃ、必要もねえか」ダーヴィッツに尋ねる
「うん。かくれんぼしてるんだ。それでさがしてるところ。」なるほど。いい根性してるな、おい?うえで隠れてる子供にすりゃ、たまらんだろうが。
「あ〜、この辺にかくれてないかな〜」思い出したようにかくれんぼの鬼を再開する姿が涙を誘う・・。いや、わかったから・・。もういいって。しかし、捜索 人数が増えるのは助かるぜ。
「しかし・・ほんとなにがいるんだろうな」ルギー・・・君はカミラムから直接話を聞いた張本人ではなかったかね??
「なにがいるのかわからないってのもあるけど・・・なんだか臭くない・・・」たしかにくさい・・。下水が近いんだから当然と言えば当然だが。
「見当はついてるんだがな・・」多分あいつだろう。下水が近くに通ってるとわかってりゃ、用意もしたのにな。
「ほんとか?なんなんだ?」いいつつもその目は疑ってる目つきだな、おい。
「自信ないけど、ブロブじゃないかなぁ?」そう、ブロブ・・ってしってんのかよ?ダーヴィッツ
「羊亭のマスターに聞いたんだ。オランの下水にたまにいるって」なるほど。
「デリュー?おまえの意見は?」
「おなじく、ブロブ・・・とおもうね」あとから言うとなんだかおれ、知ったか便乗野郎みてえだな。
「ブロブ・・か。なら、こいつでなんとかなるかな・・」そういって小剣を構える。淡い光を放つその剣は一見魔剣にも見える。いや、魔法がかかっちゃいるけ ども・・。明かりの魔法がかかった魔剣・・なんてさまにならねえな。
「・・・ブロブに剣ってきくの??」ダーヴィッツが当然の疑問を口にする。
「きかねえことはねえだろ」とりあえず、講釈たれておくか。
「わかりきったことだが、ブロブってな粘液上の黒い物体だ。おまけに体全体が強い酸みてえなやつで、そいつにふれたら武器はだめになるとおもいな。銀か魔 法の武器ならいいんだが、んな高価なもんもってるわけないしな。ま、でたら魔力を込めてやる。」
「・・・黒くて粘液状か・・・」ルギーがつぶやく。
「おれもみたことあるわけじゃあ、ないがね」ま、ブロブと決まったわけじゃねえが・・。
「黒くて、粘液状・・・・」ダーヴィッツも何か考えてるようだ、脅しがすぎたか?
薄暗い地下倉庫の中で黒い物体をさがさんにゃならんとは、泣けてくるぜ。
「・・・こっち側もないな・・」無意味に広いぜ。なにを保管しようってんだぁ?
「ネズミの死骸でもひっさげて帰るかぁ?」楽観的希望論その2を披露。
「本気じゃねえだろうな・・?」失礼な。半分だけだ。
「ネズミすらみないような・・」そういえば、そうだ。ネズミ一匹いないってのはたしかに妙だ。やっぱり何かいるな・・。
あ〜やだやだ。
「ちょっとまって・・」ダーヴィッツが不意に足を止めた。
「どうした?」俺達も自然歩みを止める。
「ここ・・・壁に裂け目が・・」くらくてわかりづらいが・・・本当だ。よくわかったな。
「しかも、臭いな・・」ルギーが顔をしかめる。
「下水に通じてる見てえだな。こりゃ、いよいよビンゴか?」そういつつもあたりをみわたす。
「ブロブってなこんなとこにすんでんのかよ?」ん?そういや、説明してなかったか?
「ほんと、気が知れないよ・・・」ダーヴィッツもか?どれ、いっちょ賢者らしいところも披露してやらねばな。
「すんでるというより、すてられたんだよ。つくったやつにな。ブロブってな古代王国の術士どもが生んだ人工生命のなれの果てさ・・」師匠のくだらねえ蘊蓄 も役に立つこともあるもんだ。
「へ〜そうなんだ」ダーヴィッツが感心している。
「術士がつくったのか。じゃあ、おまえが責任もって駆逐しないとな」ルギー・・うれしそうだな・・。いや、それ以前に顔も名前もしらん古代の変人の尻拭い を、おれがしてやる必要性はない。
「おまえも術士として自分の立場が悪くなるのは避けたいだろうし」無理矢理な理屈だな。
「大丈夫だ。いざとなったら賢者、それでだめなら棒術使い、さらにだめなら遊び人とでもいうことにするぜ」
「遊び人って・・どんなの・・?」ダーヴィッツの疑問は予測の範囲内だ。
「エレミアでルギーがしていたことさ、な!」さて、これはルギーの予測の範囲かな?
「なっ・・・てめえ・・俺は関係ねえだろ!」ふっ、まだまだ甘いね、ルギー君。
「しかも・・なんだよ、その余裕の面はよぉ!」おっと、顔にでちまったか。
「・・・なんだかしらないけど・・聞かないでおくよ・・」いや、ここは追求するとこだぞ、ダーヴィッツ。
「・・・ああ・・そうしてくれ・・」運のいい奴め。
そのとき何かがうごめいた。黒い水たまりのようななにかが・・・
「いた!」
「いたぞ!」
「あれだ!」
3人同時に叫び構える。どうやら向こうも逃げる気はないらしい。ま、ブロブなら当然か。さて、さっさとかたづけるとしようか!
「よし!武器を出せ!」おれは魔力を付与するために呪文の詠唱を始める。
「よし、頼む!」・・・とりあえずルギーの小剣に魔力を・・・ん?ダーヴィッツの奴右袖からダガーを・・!渋いじゃねーかよ。しかも左利きとは。背中に あった盾は右手か・・。いや、どうでもいいけど。
よし、二人同時にかけてやる!あ〜、しんどいぜぇ〜。
黒い物体はずるとずると地面を張っている。見た目どうりのろそうだ。
不意にルギーへと襲いかかる。
「うわっ!」む、おしい、いや、あぶない・・。とはいえ、見た目どうり緩慢な攻撃だな。ジャンプするとは意外だったが。
「よし、いけ!」二人分の魔力をつかってちょっとやばい・・。
「こいつ!」ルギーの剣がうなる。ヒットしたみたいだが・・・きいてるのか!?
「だぁぁ!」同じくダーヴィッツもヒットさせているが・・。見た目どうり、剣はききにくいようだ。
「くそっ!きいてるのかよ!」ルギーの声も少し同様が感じられる。
「でもすこし小さくなってるような・・!」ダーヴィッツの言うとおりだ。たしかに、肉片(?)が飛び散って小さくなってる。よし、その調子だ。
「!!デリュー!後ろだぁ!」ん?うしろ?おれの?
「!!!っっ!」いってぇええ!くそ、もう1個・・・ってもう2個かよ!ち、背中が焼けるようだな。ルギーの声がなけりゃ、やばかった。喜べ、感謝してや る。
「デリューさん!」さん付けはいらねえといっただろうが。にしてもこの馬糞もどきがぁ!俺は俺をおそった一個に「光の矢」を見舞うべく呪文を唱える。 ちぃ・・いてえじゃねえかよぉ〜〜!!
「く・・このぉ!」・・ほぉ・・ルギーの奴やりやがった。ルギーの一閃は馬糞を鹿の糞くらいに細切れに四散させてる。
「いまそっちに・・!」ダーヴィッツがこちらへ向かう。と同時にくらいに「光の矢」が飛ぶ!これなら文句ネエだろ!カーマン!
「やった!?」いいや、ダーヴィッツ、アレくらいでは馬糞が犬の糞になったくらいで、鹿の糞にはほど遠い。
「デリュー大丈夫か!?」いいからさっさと奴らを消してくれ
「ああ・・・なんとかな・・」ちっ・・キズより魔力がつきかけてるのがきついぜ・・。
「こっちもいかせてもらうぜ!」本日最後の魔法だ・・。くそ、魔晶石てにいれときゃよかったぜ。
「く・・そぉ!」ダーヴィッツも当ててはいるが・・・。
「ちぃっ・・」ルギーも喰らったか!?浅い見てえだが・・。
「おおぉっっし!」魔法完了、自分の杖に「魔力付与」をかけておれも殴り合いにむかう。
「デリュー!?おまえが前にでてどーするンだよ!」やかましぃ!これ以上魔法がつかえねえんだ、ほかになにがあるってんだ?
「おくれるなよぉ、剣士様よぉ!?」とりあえず葉っぱをかけておくか。
「喧嘩してる場合じゃ・・」安心しろダーヴィッツ、ごくごく日常の光景だ。
「くっ!まけるかよぉ!」そうそう、その息だ。おれも負けてられねえな!
「うわ、!デリューさん、こんなとこで振り回したら・・・!」大丈夫、おまえならかわせる!俺は信じているぞ!
「てめえ!気をつけろ!」大丈夫、おまえなら当たってもこれくらいは平気だろう?!俺は信じてるぞ!
数10分後俺達は倉庫内に座り込んでいた。みな疲れ切っている・・。もちろん俺もな・・。
「結局、何個倒したよ?」3個目までは覚えてるんだが・・。
「・・・5体・・?かな」
「6匹じゃねーか?」
単位が違うのは愛嬌か?なんか5体でも6匹でもどーでもいいな。
「2体とか1体とかばらばらででてきてよかった・・」ダーヴィッツが荒い息の下からつぶやく。
「おまえ、大したもんだよ。きっと将来は有望だな・・・」本心だぞ。俺が男をほめるのはよほどのことだ。よろこべ。
「ほんと、驚いたよ、おれも。」ルギーもそう思ったようだ。
「え?そう・・かな?でもこの間も尾行とか失敗して・・・いや、それはそれでよかったんだけど・・」よくわからんが照れてるのか?
「びしびし当たってたぜ?ほんとすごいと思うぜ。」ルギー・・。てめえも見直しといてやる。
「なんだ?デリュー・・」おっと、目があったか・・。
「いやいや、剣士様のすさまじい奮闘ぶりに感謝してるのさ。」剣の才能はこいつの方があるかもな・・・。
「へへん?ど〜よ。ま、ちょっとは見直してくれよ。暴れん坊な術士様」前言撤回。
「ああ、見直しといてやる、女大好きの剣士様」
「て・・てめえ・・いい加減なことをいってんじゃ・・!」事実だろ?ルギー君。
「もう・・・。上にいかない?」おっと、それもそうだ。
「ダーヴィッツ」とりあえず、つっこんでおくか。
「え?なに・・」
「かくれんぼはおわったのか?」
「え?あ〜・・ここにかくれてるかな〜?」いや、さがさなくていいから・・・。
「おつかれさまでした」執事が恭しく礼をする。なんかもうどうでもいいぞ。さっさと金をくれ。
「おそらく、すべて片づいたはずです」おそらくとか言うな。
「下水付近の穴はふさいでおきます。本当にありがとうございました。」
「ええ、そうした方がいいでしょう」いや、もうどうでもいいって。
「術士様も約束通り、「火球」はお使いになられなかったようで・・。おかげでずいぶんと苦労をかけてしまったようですね。」
そりゃな。じまんじゃねーが、俺達のなりはひどいもんだからな。あちこち破れて、穴が空いた服来て、しかも、ルギーに至っては剣まで朽ちてるし・・。ちな みにあれは呪文の効果時間内に倒せなかったおまえが悪いんだぞ。
「いいえ、どうせ使えないんですから、気にしないでください」ルギー・・最後の最後でそれをいうかね?まあいいけど。
「ええ、存じておりますとも。おきになさらず」崩れ落ちそうになる俺をダーヴィッツが支えてくれた。
「おや?だいじょうぶですか?」ああ・・なんとかな。ったく、からかってんじゃねーよ。
「そうですか。ではこちらが報酬でございます。お受け取りください」執事が差し出す袋をルギーが受け取る。
ん?あれはあのときのねーちゃんじゃねーか。
「おかえりですか?今日はありがとうございます。」いいねえ、若い娘の感謝の言葉は。
「弟たちもよくなついておりましたのに・・。何かございましたら、またお願いいたしますね。」よかったね、ダーヴィッツ。
「ええ!?はい・・あの・・それじゃ・・・」今日のヒーローはおまえさんみてえだな、はぁ〜。
帰り道。俺達はならんで歩いている。あ〜つかれたぜ・・。しかし、癒しの呪歌ってな便利なもんだな、おい。自分に聞かないってのが不便だが俺には関係ない しな。傷は治ったが、日も暮れたか。
「さて、報酬をいただこうか?」お楽しみタ〜イム!
「ああ・・え〜と・・ん?」どうした?
「ふえてる・・・みたいだ」ほんとかよ?
「ああ・・こりゃ・・多分2000以上あるぜ?」人数増えた分増やしたのか?あの執事。
「得した・・かな?」そうだな。おまえさんはな。おれは当初の予定分いただければ文句はネエ。
「ひとり750ってとこかな?」
「へえ・・そんなに」ダーヴィッツがおどろく。
「さて、んじゃさっさとよこしな」もうすぐ分かれ道だ。急がないとな。
「がっつくなよ・・え〜と・・」ルギーが金を取り出して俺の袋に移す。夜の往来でこんなことしてると、分け前をもらう泥棒みてえだな・・。
「さて、これにて任務完了!諸君よい夜をな!」ちょうど分かれ道だな。
「ん?おまえあっちか?んじゃな」ルギーが手を振る
「あ・・それじゃ・・」ダーヴィッツがさらに言葉を紡ぐ
「また・・よろしく!」・・また?だと・・。
「・・・ああ・・またな!」なぜか自然と笑みがこぼれた。さんざんな目にあったが・・・楽しかったのか。
「おれもわすれるなよ!」ルギー・・・
「安心しろ、おごってもらうまではわすれやしねえさ!」
「おいおい、それでおれは用無しかよ?」用無し?まさか。
「これからもせいぜい利用させてもらうよ」さて、奴はどううけとることやら。
「そりゃ、こっちの台詞だ!」ふん、口のへらねえやつだ。
「なんで、なかよくできないかなぁ?」ダーヴィッツ、君にもわかる日が・・・くるかな・・。
「〜〜〜!!〜!」なんかいってるな・。ま、もういい。続きは気ままに亭だな。せいぜい酒の肴にさせてもらうとしよう。
あ〜、これでようやく酒が飲めるぜ。星も月もでてねえが、きっとうまいだろうな。
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