はぢらい( 2002/01/31)
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作者
あつし
登場キャラクター
ロエティシア



風花亭にロエティシアという吟遊詩人がいる。何人もの詩人を抱え る風花亭の中でも、ロエティシAは人気のある方の詩人だった。
ロエティシアはエルフだった。
風花亭にきた頃は、物珍しさで人気があるだけ、すぐに客は離れる、といった妬みの声もあったが、ロエティシアの実力が判るとその声も無くなった。そのうち に他の詩人達とも打ち解けあい、歌談議に花を咲かせたり、一緒に練習したり、ワインの飲み交わしたりと充実した生活をおくっていた。

そのロエティシアの詩人仲間に、一人変わった詩人がいた。
彼女の歌は独特で、初めて聴いたときはロエティシアも歌かどうか判断に迷った。(というか今もまだ判断がついていない。)
彼女は買い物好きだった。
彼女は散歩途中のロエティシアを見つけては半ば強引に買い物につき合わせたと思えば、ロエティシアをほっぽりだして店主と値切り交渉を始めたりした。それ が始まると長いことを知っているロエティシアはその間、店の品を手に取ったり、通りを行く人々を眺めたりした。
ロエティシアはよく彼女に、欲しい物は値切ってあげるよ、と言われたがなんとなく気が引けたのでいつも断っていた。そしてコロコロ変わる彼女の表情を見て ちょっぴり申し訳無く思った。

そんなある日。
いつものように買い物に付き合わされたロエティシアはいつものように通りで行き交う人々を眺めながら彼女の買い物を待った。店内では弦ニ本10ガメルか三 本14ガメルの戦いが続いている。
ふと、ロエティシアが店の横手をみると女の子が犬と一緒に遊んでいる。この店の女の子だ。ロエティシアは店の常連だったので見覚えがあった。
ロエティシアと女の子の眼が合った。

「あ、こんにちは。」
「今日は」

女の子もロエティシアのことを見覚えていたのだろう。でもちょっとぎこちない挨拶だった。

「その犬はお前の飼っている犬か?」
「あ、はい。チョビっていうんです。」
「そうか。さっきお手をしてたようだが、芸ができるのだな。」
「あ、はい。あと、伏せとか。」
「もう一度見せてもらえないか?」
「あ、はい。チョビ。」

その後、女の子はチョビのお手と伏せをロエティシアに見せた。

「驚いたな。ちゃんと言う事を聞くんだな。」
「あ、でもこの二つしかできないんです。」
「いや、二つでも凄いよ。」

その後もロエティシアと女の子はニ、三言、言葉を交したが、ロエティシアはなんだか邪魔してしまったような気になったので、女の子に礼を言うと、角を曲 がって女の子から見えない位置で友人の彼女を待つことにした。

しばらくして。
小脇に荷物を持った彼女が店から出てきた。その表情から目的の値段で買えたことが分かる。
ロエティシアが彼女に声をかけようとしたとき、

「チョビ、チンチン!」

・・・・・・・・。

「どうしたの?」
ロエティシアの顔を見て彼女が言った。
「いや、やはり、恥じらいは、美徳だな、と思ってな。」
含み笑いが止まないロエティシアを見ながら彼女は不思議そうな顔をするしかなかった。



  


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