◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「………ラス。いい加減にしろよ?」
げ。やべ。
「あ、いや……ちょっと考え事を…」
「何なんだ、さっきから。野郎の顔ばかりじっと見て何か面白いのか? だいたい、その考え事とやらは何だ?」
……考え事。考えてるってよりも、思い出してるってほうが近いんだけどな。そして、キアとの会話を思い出して、あらためて思う。……意外とわかりやすい
よな、こいつ。だいたい、顔から表情がなくなることに気づかないほど我慢するくらいなら、いっそ表に出しちまえばいいのに。
それでも、キアに怖いと思われるほど、俺の怪我の件を聞いて余裕をなくしてたのか。なんだ、わかりやすいし…しかも、可愛いとこあるじゃん。
「おまえ………意外と可愛いよな、と」
「………考え事…が、それか?」
「そう」
頷いた俺を、一瞬じっと見て、カレンが溜息をつく。ワインの杯をゆっくりとカウンターに戻して立ち上がった。そしてそのまま、俺の額に手を伸ばしてく
る。……何やってんだ?
「熱はないようだが…ああ、でもさっきも食欲なさそうだったし……もう夜中近いな。でも、トレルなら開けてくれるだろう。怒られるかもしれないけど……」
「……………は?」
「ラス。おまえきっと病気だ。とりあえず、治療院に行こう」
……いや、真顔で言われても。
───俺、何か言い方間違えた?