終の庵<後編> ( 2002/08/24 )
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作者
登場キャラクター
アルファーンズ ギグス グレアム フィアット ライニッツ レイシア



◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 玄関ホールへと続く扉の上に、四角く突き出た部分があった。ちょうど水晶球が嵌る大きさである。そして、底の部分は丸く凹んでいる。
 ごとり、とギグスは水晶球をそこへ嵌め込んだ。中心が鈍い色に濁ったままの水晶球を。
「何が起こるのかしら…」
「……っていうか、乗せちゃってよかったの?」
「いや、これでいいはずだ! 俺様も含めて賢者3人の意見が一致してんだぞ!」
「まぁ、乗せちまったもんはしょうがねえしな」
「でもまだ、月の光で作動すると決まったわけではないですし」
「月の光で動かなかったら、明日の朝陽で試しましょうねぇ〜」
 月が、昇る。
 少し前から中庭は闇に閉ざされていた。グレアムとレイシアが持つランタンがあたりに弱々しい光を投げかけている。
 藍色に染まった天に月がゆっくりと昇り始めた。東から…やや南東寄りの位置から。
 中庭に立つ6人には見えなかったが、まず寝室の窓に月の光が射し込む。そして、月が上へと移動するにつれて、光はその角度を変え、廊下側の窓へと届く。更に月は昇る。最後の、中庭への窓を通り抜けた月の光が、6人の頭の上を越えて正面の水晶球へと辿り着いた。
「……あ。レイシアさん、レイシアさん。ランタンのシェードを下げていただけますぅ〜?」
 自分が持つランタンも同じようにしつつ、グレアムが振り返る。火を完全に消してしまってはいざというときに困るため、外側についている覆いをおろすだけだ。
 彼らの手元から明かりが失われる。
 その代わりに、中庭が光に満たされた。
 水晶球に光が射し込んだ瞬間、鈍く濁っていたその中心が、靄のように動き始めた。動きつつ色を変え、それでも決して水晶球の中から出ることはなく、靄が月光に反応する。そして、幾つもの小さな乱反射を生んだ。
 きらきらと乱反射する月光が中庭に満ちる。その中でもひときわ大きな反射があった。8本の光となったそれは、中庭に立つ柱へと吸い込まれる。
 ごぅん…、と地下で音がした。
「……おっちゃん、地下室の図面って…」
「……残念ながらないんですよぉ〜」
「多分、入り口はそこよ。地下室なのかどうかは知らないけどね。扉くらいの大きさで、開きそうな場所が…」
 フィアットが説明しようとしたその瞬間に、8本の石柱が同時に動いた。
 ずず、ごり…、と、重い石がこすれるような音がする。通路を広げるかのように、柱がそれぞれ外側へと動く。歩幅で2つ分ほど動いたあと、石柱は動きを止めた。そして、次の瞬間には、フィアットが指さしていた場所がぱっくりと口を開いた。
「意外と静かに開いたわね。もっと仰々しいのかと……」
 素直な感想を口に仕掛けたレイシアの言葉が止まる。
「おい、どした、レイシア」
「………いやな匂いがするわ」
 それを聞いて、くん、と鼻を鳴らしたのはライニッツだ。
「私には特に感じられませんが……」
「違うの。これは……負の生命力の匂い。この下に不死の化け物がいるのよ!」
 タイルで描かれた船の舳先部分が、四角く切り取られている。本来あるべき女人像の代わりに。
 そしてそこから漂う、不死の匂い。それをいち早く感じ取ったレイシアの言葉で、残りの5人の間にも緊張が走った。武器を構え、それぞれの位置につく。
 床に置いたきりだったランタンのシェードを上げるが、十分な光量とは言えない。
 水晶球から反射する月の光は、穏やかな青白い光だ。それがなければ、中庭はとっくに闇に満たされていただろう。
 その中でも、まるで闇を凝縮したかのような地下への入り口。そこへ足を踏み入れるかどうかを6人が迷う。だが、結論が出るよりも先に、フィアットが口もとに指を立てた。
「…しっ! …………足音がするわ」
「……地下からですか」
 ライニッツが問いかけながら剣を構える。正確に言えばそれは問いかけではない。今、この場所で足音が響くのなら、冒険者たち以外の足音だ。そしてそんな者が現れる場所は地下からしかあり得ない。だから、分かり切っていることを確認するだけの言葉。
<…我が祈りの邪魔をした者どもはおまえたちか。汚らわしい蛮族どもが。我が宝を奪いにきたか。水の守りに宿った水の乙女の魂を。それとも、水の乙女が宿った水の守りを。ああ、そうだとも。どちらも同じだ。我が神に捧げる供物。そして我自身が至高の存在へと近づくためにも必要なもの>
 届いた声は古代語だ。声と共に現れた姿は、ぼろぼろのローブをまとった初老の男だった。もとは高価な織物だったのだろうローブもすでに色褪せて、本来の美しさはない。どこといって特徴のない初老の男だが、その顔色は異様に青白い。中庭に満ちる月の光よりも。
<我が罪を浄め、死の慈悲を。我は全てを神に捧げる。死によって全てが浄められ癒され許され導かれる。生きることは穢れに満ちている。死を拒絶した水の乙女は、生による苦痛の中で狂ってしまった。だから我はそれを浄めるのだ。長い長い祈りによって。それをおまえたちは邪魔するのか。我が楽園を…死の楽園を、薄汚く生き続けるその体で汚すのか!?>
 地下から続く階段を上りきって、その男はそう叫んだ。白く濁った眼球で、冒険者たちを睨め付ける。


◇   ◆   ◇   ◆   ◇

「ああ…ありましたよ。あの不死者は、シンというものらしいですね」
 翌日。出航準備中の船の甲板で、ライニッツが文献を広げた。それを残りの5人が覗きこむ。
「おい、なんて書いてんだ? 読んでくれよ」
 書き連ねられた古代語に顔をしかめてギグスが言う。それに応えてライニッツが説明した。
「えぇと…多くは、何かを独占したがったり偏執していたりという人物が、そのまま死にきれずに不死者となるようですね。あとは……そうそう、一緒に現れた粉っぽい化け物ですが、アッシュという、これも不死者ですね。おそらくは、カーリアス・クレイが死ぬ前に…いえ、正確には、シンと成り果てる前に魔法で作り出していたのでしょう。生ある者が近づけば実体化するとありますから、我々が踏み込むまでは影も形もなかったというのも頷けます」
「それにしても…惜しかったと思わない?」
 呟いたフィアットに、レイシアが問い返す。
「……ああ、あの宝石のこと?」
「ええ、そうよ。あの化け物のオジサンが我が“黒き輝き”とか呼んでたけど。形はさ、ごつごつしてて無粋だけど、中心から放射状に広がる黒い模様はとても綺麗だったと思うんだけどなぁ。………でもやっぱりちょっと禍々しいっていうか…嫌な感じはするけどね」
「そうねぇ。うっすらと青くって透明で…でも中心は真っ黒で…………あ、しまった」
 ふと、レイシアが自分の口を塞ぐ。その素振りを見て、フィアットもあらためて気が付く。
「……あ。そっか。この話をすると…………」
 同時に振り向く2人の女性。その視線の先で中年神官が、持っていた設計図が皺になるのも構わずそれを握りしめている。
「…………………………あれが………あれがアクアマリンだったんですよぉ〜〜〜っ! ああ……何と言うことでしょうっ! あれほどのアクアマリンでしたら、本来の色と輝きを保っていればもっともっと…あんな禍々しい闇の色に染められてさえいなければ……」
「っつーか、砕けちまったんだからしょうがねえだろ」
 あっさりというギグスに反論したのは、嘆く中年神官ではなく金髪の少年だった。
「何を言う、ギグス! 確かに砕けちまったけど、俺はおっちゃんの哀しみはわかるぜ!」
「そうでしょう!? そうでしょう〜〜!? ああ、アルファーンズさん、私のこの嘆きの意味がおわかりで……」
「もとがアクアマリンだか水晶だかは知らんが! あれは魔法が付与されてたんだぞっ!? 魂を封じ込める魔法がな! おまえ、知ってるか、シールストーンの値段をっ!? 学院に持っていって交渉すりゃ、幾らになるのか知ってるのか!? ああもう! ライニッツ! この筋肉馬鹿に教えてやってくれっ!」
「……………推定ですが、40万から50万ガメル。付与した魔術師の資料が揃っていて、しかも中に古代王国期の人間の魂が封じ込められたままですから、やはりそれなりの値段は……」
 ぽそ、と呟いた黒髪の魔術師の言葉を聞いて、ギグスが固まる。レイシアとフィアットも動きを止めた。
「ああ〜〜〜…そうじゃないんですぅ〜〜! あの美しいアクアマリンが、シールストーンなどという邪悪で無粋な物に変じてしまっていたとは……ああ〜…わたくし、ミルリーフ信者を憎みますとも! ええ、心の底からっ!」
「いや、だからそうじゃねえだろ、おっちゃん! 俺は今、あの石の値段を問題にしてんだ!」
「そうですね。アクアマリンに封じられていたのが、アクエィリアさんの魂で。我々に追いつめられたもと魔術師のシンが、最後の最後で悔し紛れに砕いてしまわなければ、今頃は40万ガメルの財宝が我々の手にあったと…そう、アルファーンズさんは言いたいわけですよね」
 先刻まで開いていた文献をぱたりと閉じて、ライニッツが呟く。
「そうとも! いいか、あの石ひとつあれば、ものすげぇ財産なんだぞ!? 俺はミトゥに大儲けして帰ってくるって約束したんだ!」
 約束…というよりは賭け。出発前の売り言葉に買い言葉でアルファーンズは、相棒の女性剣士ミトゥと賭けをしたのだ。大儲けして帰ってくればアルファーンズの勝ち。儲け無し、もしくは大怪我して帰ってくればミトゥの勝ち。
 どの筋から聞いたか、そのあたりの事情を何故か知っているライニッツが溜息をついた。
「……いえ、私は別に赤字でも構わないんですよ。私はどなたとも賭け……いえ、約束はしてませんし。未盗掘の遺跡を見られるだけでも嬉しいものですから。無事に帰ってこられましたしね。……ただ、やはり惜しいのはあのアクアマリンで」
「ああ! ライニッツさんは私の嘆きをぉ〜〜…」
「死霊魔術を専門としながらも、付与魔術も嗜んでいたカーリアス・クレイ。本来は水晶に付与するはずの、魂を封じる魔法をアクアマリンにどう付与したのか、そして対象とする石の種類を変えることでどういう影響があるのか……調べたかったですよ……」
「ああ〜〜…やはりわかっていただけないようですぅ〜〜…」
「ええい! がたがたうるせぇぞ、賢者ども! もっと違う問題があるだろ!?」
 延々と続きそうな賢者たちの会話を止めたのはギグスだ。その声で、ふと我に返ったかフィアットも、うんうんと頷く。
「そうよ! 40万ガメルだったですってぇ!? それをあのゾンビもどきが壊したっていうの!? 確かに追いつめたのはあたしたちだったけど、しょうがないじゃないの! 追いつめなきゃ追いつめられるんだから! 40万よ!? 6で割っても、1人頭6万ガメル以上なのよっ!?」
「……うーん、でもさ。やりかたはともかくとして…それに、確かにかなり異常な雰囲気はするけどさ。あの魔術師は、アクエィリアっていう女の人のことはすごく好きだったんだろうね。ほら、ライニッツお兄さんが通訳してくれたじゃない? 愛してたから自分は彼女の魂を石に封じ込めたって言ってたんでしょ? 自分はミルリーフ信者だから、死ぬことに憧れてる。だから、自分が幸せだと思う道を彼女と行きたかった。でも、彼女はミルリーフを恐れて、死にたくないって言って…だから、じゃあせめて一緒にいたい…それに、彼女の魂の汚れを払うために、自分は祈るから…だから魂を封じたとか何とか。アクアマリンのことも、すごくすごく大事にしてたみたいじゃない。そんなに大事な石だから、大事な彼女を封じるのにふさわしいと思ったんでしょ?」
 そう言ったレイシアに、あらそうかしら、とフィアットが反論する。
「だけど、自分勝手じゃない。死にたくないなんて思うのは普通なのに。それに、馬鹿みたいよね、アクアマリンと、その中のアクエィリアに執着したあげく、当の自分が死にきれずにシンになっちゃったんだから。死ぬことに憧れてたんなら、すっぱり死んどけばよかったのに。執着しすぎて結局不自然な形でこの世界にしがみつくことになっちゃって。……あげくに、他人にとられるくらいなら彼女の魂と一緒にとかほざいて、アクアマリン砕くし。…40万よ、40万っ!」
「ああもう! そっちもうるせぇぞ、女ども! だから違う問題があるんだってばよ!」
 そして、またしても止めるギグス。
 じゃあ何が問題なのかと、賢者3人と女性2人がギグスを見つめる。5人の視線を受けたギグスが溜息をついて空を見上げる。
 空は晴れていた。まだ夏の盛りとも言える空は、突き抜けるような青さだ。


 あの時。灯台から移動させることで、仕掛けを動かした大きな水晶は、冒険者たちが不死者を打ち破ると同時に砕け散った。その直後、不死者たちが出てきた扉の奥──つまり地下から、一瞬だけ大きな震動が響いたのだ。
 その震動の意味は、わからなかった。少なくともその時は。
 カーリアス・クレイの成れの果てと、アッシュが4体。それらを倒して冒険者たちは消耗していた。だが、それでもまだ危険が残っている以上は油断がならない。精一杯、体勢を整えて地下へと探索の手を伸ばした。そして彼らの視界に映ったのは、巨大な祭壇と巨大な魔法装置。それは、ミルリーフに捧げる祭壇と、生け贄を運ぶための魔法装置だった。
 それは推測に過ぎない。詳しく調べようと動き始めた矢先に、その直前の震動の意味がわかったのだ。おそらくは、水晶球と連動していたのだろう。魔法装置が自壊し始めたのだ。そして、それに巻き込まれるように祭壇も崩れていった。
 慌てて地上へと戻った冒険者たちを、今度は別の震動が襲った。冷静に考えれば、それはさして不思議でもないのかもしれない。水晶球がもともとあった場所は灯台だ。冒険者たちが見守る中で、灯台も音を立てて倒壊していった。
 地下にあったのは、海流を狂わせるための魔法装置。そして、灯台はその海流へと船を導く光を放つための装置。どちらも、同じ水晶球を鍵として使用していたのだろう…と。冷静に推測が成り立ったのは、館から海岸まで逃げ戻り、そして夜が白々と明け始めた頃だった。
 そして夜が完全に明けた頃、船で待っていたはずの水夫たちが彼らのもとにやってきた。水夫たちが報告するところによると、島の少し沖で、狂ったように乱れていたはずの海流が突然穏やかになったと言う。それは、水晶球が…そして、魔法装置が壊れた瞬間とほぼ同時刻だったと。
 地下の祭壇へと続く扉を開けた、あの水晶球がクレイにとっては、マスターキーのようなものだったのだろう。今となっては、それぞれの装置がどんな仕組みで動いていたのか、推測すら難しい。だが、自分が死んでから先は、何も残したくはないとクレイが望んだことだけはわかった。だからこそ、自分の寝室以外の部屋を焼き払ったし、自分が消滅すると同時に全ての装置が闇に帰すようにと仕組んだ。そして、自分が消滅する寸前に、自らの手でアクアマリンを砕いた。愛する者の魂を封じ込めた石を。それは、独占。執着。偏執。妄執。そして、それほどの想い。


「……だからな」
 ほう、ともう一度溜息をついてギグスは口を開いた。
「俺たちは船で来たわけだ」
「ええ、そうよね。来る時には大変だったあの海流がおさまってるってことは、帰りは楽ね。それだけでも良しとしなきゃいけないのかしらね」
 ふぅ、とギグスと同じような溜息をついてレイシアが頷く。
「ああ、まぁそうだけどよ。それはいいんだけどよ。………船を借りるのもタダじゃねえんだよ」
 ギグスのその言葉で、全員が動きを止める。その先は言わなくてもわかる、とでも言うような表情の5人に、ギグスが追い打ちをかける。
「さて。船代の借金はどうする?」
 それを聞いて、視線をかわしあう5人。
 その中で、フィアットが一番先にギグスに向き直った。おずおずと、自分の懐に手を入れる。
「えと……これっぱかしじゃ足しにならないかもしれないけど…ほら、寝室って焼けてなかったじゃない? ライニッツやアルが本を解読してる間に、机からちょろまかしたのがあったんだけど……」
 握った拳を開く。そこから出てきたのは、小さな護符だった。
「………なんだ、そりゃ」
 拍子抜けしたような声のギグスに、フィアットも首を傾げる。
「……わかんない。持ってこようと思って持ってきたんじゃなくて、何だろコレと思って見てた時に、ちょうど『ほら行くぞ』って声かけられたから、ついポケットに入れちゃっただけ。……何なのかしらね。実は今まで持ってることすら忘れてたんだけど」
「ちょっと…見せていただけますか?」
 覗きこむライニッツに、フィアットが護符を手渡す。アルファーンズとグレアムもその護符を覗きこんだ。
「これは……」
「ひょっとして……」
「……間違いないようですぅ〜」
 そして、3人揃って溜息。
「何よ。……何なのよ! わかってるわよ。どうせ、安っちいもんだって言うんでしょ? しょうがないじゃない、そんな古ぼけたもんくらいしか残ってなかったんだから!」
 弁解するかのようなフィアットの袖をレイシアが引く。
「……ねぇ、お嬢。何か…そういうのとは違うような顔してるわよ、3人とも」
「……え?」
「なんだ、わかったのか、その護符の正体が?」
 ギグスの問いに、3人の賢者が頷く。そして、微妙な…としか表現できない表情でうっすらと微笑んだ。
「もっと早く出しててくれりゃあな…」
「ええ、確かに。これがあるとわかっていれば…」
「わたくしのとろくさい“死霊退散”の奇跡ももう少しは効果があったでしょうかねぇ〜…」
「だから何なのよ!?」
 痺れを切らしたフィアットに、ライニッツが告げる。
「……対不死者の護符です。そうですね、死霊魔術を専門にしていた魔術師ですから、このようなものが残っていても不思議じゃないですね…。これがあるとわかっていれば、自身が不死者になってしまっていた魔術師相手には有効だったと思いますが……」
「あ、なるほど。宝の持ち腐れだったんだね、お嬢!」
 あはは、とレイシアが笑う。悪気が全く感じられないだけに…そして、事実であるだけにフィアットも怒るに怒れない。
「……で。それ、幾らくらいの品物なのよ?」
 とりあえず、それだけを聞き返すフィアット。答えるアルファーンズ。
「はっきりは言えねーけど…そうだな、5000から6000ってとこかな」
「ねぇ、ギグスお兄さん、船代って幾らだったっけ」
 レイシアの問いに、ギグスは拳を握った。そして、それを空へと突き出す。
「3860ガメル。…よっしゃ! 船代は払えるぜっ!! 喜べ、みんな! 問題は全て解決した! オランへ帰るぞ!」
 出航を告げる声が、冒険者たちのもとへ届いた。

(了)




  


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