よく見る風景。 ( 2002/09/04 )
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作者
しろねこ
登場キャラクター
旅人。 そして…



砂塵舞踊りし路行く旅人が二人。
荷を乗せた馬を牽き、行くは大陸の大動脈「自由人たちの街道」。

フードを目深に被った一人がふと、何かを見つけたかのように足を止める。
つられて瓜二つの旅装をした相方も何事かと足を止める。
その先には倒れ臥した人影。
街道から少し離れた荒地に無造作に放置され、身に纏ったボロボロの衣服が風に弄られている。
遠目にも一目で事切れていることがわかる。そんな姿もこの街道では珍しくは無い。
道なき道を行くよりは幾分安全かと思われるが、逆に多くの旅人が通る街道を狙った盗賊も少なくない。
そして、命まで奪われることも日常茶飯事が如く……


二人の旅人は地に楔を打ち、馬を留めると苦心して穴を掘り、遺体を収めた。
大地母神へ祈りを捧げ、散らばった、遺品と思しき品々も同様に収める。
中身の殆ど無い背嚢、弦など一本も残っていない竪琴……
竪琴には名前らしい文字が刻まれていたが、旅人たちには馴染みのない文字で読む事は適わなかった。
ふと、思い直したように竪琴を拾い上げる。
そしてもう一度祈りを捧げ、土饅頭を作り上げる。
近くの枯れた潅木から折り取った幹を刺し、仕上げに竪琴をそれを掛け墓標とした。


旅人達が立ち去ってしばらくして……悪戯な風に煽られて再び地に転がった竪琴に刻まれた文字は見るものが見れば解る森の妖精の文字……

その文字が表すは一つ。 


「フェリアーナ」


街道で死せし者の墓標に名が刻まれる事はない……。



  


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