続・穴熊の貴公子(自称)が語る華麗なる冒険譚 ( 2002/09/28 )
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作者
穴熊の貴公子(自称)のPL
登場キャラクター
穴熊の貴公子(自称)



ヤホゥ! なんだ、なんだ、テメェら、その表情(かお)は今日も俺様の武勇談が聞きたいってツラだな?
おーっと、皆まで、皆まで言うなよ、エブリバディ。照れちまうだろ? 俺様、ホッペまで真っ赤っ赤になっちまうぜ。

オーケィ。テメェらの熱意にゃ流石の俺様もミスター・コウ────降参だ。
今夜もタップリ語ってやろうじゃねーの、聞かせてやろうじゃねーの、この俺様、穴熊の貴公子様が織り成す感動巨編を、その耳に! その脳に! その魂に! 確と刻み込みやがれ! イィヤホゥ!


前回は俺様の下僕(仲間の意)のひとり、ドワーフのヒゲが呪われたところまで話した筈だったな。
そう、実は、恐るべき事に、あの呪術師の呪いは本物だったのさ。俺様も奴の事を多少なりと侮っていたんだが、街に、酒場に戻ってみて吃驚のオーマイガッだったわけだ。

あれは、いま、思い出してもブルっちまう光景だぜ。
……そう、ヒゲの野郎が……ジョッキにたっぷりと注いだ大好物のミルクを……一口飲むごとに……白く! 一口飲むごとに! 口元の髭が! 白くなっていきやがる! 戦慄の光景! 間違いネェ! 老化だ! あの呪詛は老化の呪いだったんだ! ヒゲの命が! 寿命が刻一刻と! 吸われてやがりますよ!
その兆候に気がついていたのは俺様だけだったのさ。ヒョロも、チビも、当のヒゲ本人も、誰ひとりとして気づいてネェ! 最早、ヒゲの余命が幾許も残されていない、残酷過ぎる現実にな!

確かに、ヒゲの野郎は無能で俺様の引き立て役になる以外には価値がネェ、だが、奴とは同じ杯の酒を奪い合った仲だ。見殺しにすれば俺様の侠気(おとこぎ)が廃るってもんだぜ。ゥォィェ!

噂に聞くに、徳の高い神官は如何なる呪詛をも祓うって話じゃネェか。なら、そいつにチョチョイと頼めば済む話だが、神殿の坊主どもは布施と称して高い礼金をせしめる事でも有名だ。
自慢じゃネェが、当時の俺様は現在の俺様に比べるとチョイとばかし貧しかった。具体的に言うと、所持金額のアタマに横棒を一本付け足さないのと、付け足してる分だけ違ったのさ。
すなわち! 貧乏どん底というより、底無し沼、いやむしろ、借金雪だるま状態! 自由に使える金はビタイチガメルなかったんですよ!

だからと言って、無知の幸福に浸ってる奴等に過酷な、絶望的現実を教えて巻き込む事もない。世の中には知らない方が幸せって事もあるからな。
故に、俺様は単身でヒゲを救う為の資金稼ぎを決意したのさ。なァに、これも俺様がグレイト過ぎる宿命だ、いわゆる天才の苦悩! テメェら凡人には一生理解できないだろうが嘆く必要はネェぜ? 単に俺様が凄すぎるだけなんだからよォ! イィヤァハッ!


そんな俺様が選んだ仕事はバウンティハンター、賞金稼ぎ。懸賞金のかかった野郎をとっ捕まえて衛視局に渡すだけでタンマリと稼げる美味しい稼業なんだが、この仕事のネックは浪漫がネェことだ。
なんてったって、やっぱり、俺様は穴熊の貴公子だからな! 遺跡に潜り、一時代に栄華を極めた奴等を相手に、体力と知恵と技倆と勇気の勝負を、時間(とき)を越えて挑む、賭けるのは生命のコインを一枚だけ、これが穴熊の醍醐味ってもんだろ、イィヤホゥ!

さて、不幸にも俺様のターゲットになったのはテリィとかいう野郎。罪状は覗きから出歯亀まで、実に多彩な犯罪歴を持つ奴だが斡旋所のオヤジの話によると、格段に強いわけでも魔法が使えるわけでもなく、やたら口が巧くて逃げ足が速いだけだが、それだけを武器に今まで逃げ延びて来たから要注意、ですとよ。
笑止! 口先三寸オンリーでこの俺様を烟(けむ)に巻けると思ったら大間違いなのさ!

ヘイ、そこ、うるせーぜ。俺様の話の腰を折るんじゃ……なに? 口先じゃなくて舌先だろ、だと?

…………シャラップ! そんなことは百も承知だ!
ちょっとしたケアレスなミステイクですよ!
ひょっとしたらテメェらを試そうとしただけなのかもしれませんよ!?

兎に角! 俺様はそのテリィの隠れ場所の情報を掴み、奴が潜んでいるスラムの一角まで足を運んだのさ。
だが、余所者の介入を嫌うのがスラムの常。俺様が気がついた時には周囲をストリートチャイルドどもが二重、三重に取り囲んでいやがったんだ。万年貧乏三昧な奴等の狙いはズバリ! 俺様の財産、これですよ。
だが、そんな奴等の運命は、グレイトたるこの俺様を敵に回したときに既に決していたのさ! ゥォィェ!

無謀にも実力行使に及んできたガキども。
歴戦の勇者たる俺様は余裕の態で迎え撃ち、華麗なフットワークから黄金の拳を次々と繰り出す。すると、笑っちゃうぐらい地面に這いつくばっていく。
彼我の差は歴然! まさに圧倒的! 一分の隙も無いパーフェクトな決着だったぜ。

だが、そこは寛大なる俺様、不遇な環境にあるガキどもに世間ってモノを教えてやっただけに留まらず、手持ちの金を財布ごと、更に! 身につけていた装飾品、剣、鎧、衣服に至るまで、ありとあらゆる全てのモノを俺様は惜しむ事なく提供してやり、一言、渋く呟いたのさ。

『テメェらが悪いんじゃネェ、貧しさの所為なんだろ?』

素晴らしき哉、俺様の慈悲!
崇めよ、敬え、俺様の侠(おとこ)っぷり! イィヤホゥ!

…………ヘイ、そこのテメェ! ユゥ! そう、ユゥだ! いま、

『それってばガキどもに負けて身包み剥がされただけなんじゃねーの?』

って表情をしやがったな!?
否! 断じて否だぜ! そんな不埒な事実を的中させちゃう奴はゴートゥヘル! 黄金の拳で昇天させちまうぜ? ゥォィェ!



って、店主よ、今、何と言いましたか? 言いやがりましたか?
なにィィィィィ? 閉店ですと!? ジャスタモーメン! まだ俺様の話は終わってねーぜ? これを聞かずして秋の夜長が払暁を迎える事は有り得ませんよ?
俺様の活躍を! 感動巨編の続きを! テリィとの死闘を! ヒゲの運命の行く先を! 聞きたくないって言うのかよ!?

なんですと!? 俺様の冒険譚とテメェの睡眠、どっちが大事だと思っ…………ノォォォォォ、だーかーら、いつも、包丁は、反則だって、言ってる、だろォォォォォ!



  


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