続・続・穴熊の貴公子(自称)が語る華麗なる冒険譚
( 2002/10/06 )
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作者
穴熊の貴公子(自称)のPL
登場キャラクター
穴熊の貴公子(自称)
てなわけで、テメェら、先日の続きですよ。
オイオイ、遠慮なんてするもんじゃねー。素直は最大の美徳だぜ? テメェら、揃いも揃って、一日千秋の思いで待って、待って、待ち焦がれてたって顔してるじゃねェのさ。
ドンウォーリィ。安心しな。残りの千春夏冬の分まできっちりと堪能させてやるからよ!
いきなりだが、俺様はテリィの野郎を袋小路に追いつめたのさ。
奴め、貧民窟の路地で俺様の姿を目撃すると一目散に遁げだしやがったんだ。
おそらくは俺様の天才っぷりを一目で見抜き、恐れをなしたに違いネェ。剣の腕は三流って話だったが、ま、一流を見抜くだけの目はありやがったんだなと誉めておいてやろうか。
バーット、だがしかし、俺様の逃げ足……否、健脚っぷりを侮ったのが奴の運の尽きよ。
貴公子ダッシュで追いかけ、アッという間に追いつき、そして追い抜き、いやそれじゃ駄目だろと慌てて反転を試みるも、足を滑らせて転倒、思わずバナナの皮が落ちてないか探してみたり、気がつけば目標消失、闇雲に走っている内に道に迷ったりもしたけれど、曲がり角でバッタリ遭遇、フリダシに戻って、何度目かの猛追を経て、難なく、俺様は奴を行き止まりに追い込んだのさ。
すべては計画通り! すべては逃走経路予測の賜物! ヤホゥ!
背後の壁に凭れかかり、恐怖に表情(かお)を強ばらせながら頭を振るテリィ。
両腕を広げ、足を開き、慎重に間合いを詰めていく俺様こと穴熊の貴公子。
まさにチェックメイト状態。
そんな水も漏らさぬパーフェクトな包囲に遂に観念しやがったのか、奴め、俺様の名を聞いてきやがった。おそらくは、めいどの土産のつもりに違いネェ──おっと、めいどの土産って言っても、
『旦那様、只今戻りました。これ、つまらないものですが郷里の名産品でございます。ご賞味くださいませ』
なんて、使用人のベイベー(美女の意)が三つ指ついてお土産くれちゃう事じゃネェぜ?
愚民どもに新たな叡智を授けてやったところで話を戻すぜ。
俺様は侠気溢れる寛大なナイスガイ。ならば、死に逝く者への餞を惜しむなかれ。勿論、惜しみませんよ。
……ところが、だ。
奴め、俺様の名を聞いた途端に笑いだすわ、呆れるわ、怒り出すわ、憐れむわの喜怒哀楽百変化状態。
おまけに、妙に安堵感タップリの態で俺様の名を声に出して反芻しては笑ってやがる。腹を抱えて爆笑してるのですよ。いまにもヘソで茶を沸かしかねない勢いで!
挙げ句、腰の小剣を抜いて俺様を威嚇の威圧の脅迫してきやがったんですよ。
フッ。哀れなり。遂に狂乱しちゃいましたか。
テメェは確かに俺様の天才っぷりを一目で見抜く眼力を備えてやがったかもしれネェ。
だが、だがな、ですがよ、テリィ、その眼力をもってしても、それと実戦が別物だって事までは見抜けなかったようだな? 自分自身の技倆を把握できてなかったようだな?
ならば、俺様が身をもってそれを教示してやろうじゃネェのさ。ゥォィェ!
悠然と腰の愛剣に手を伸ばす俺様。
燦燦たる戦歴を支え続けてきた我が愛剣、幾多もの勝利を共にしてきた最良のパートナー、その血と汗と涙の染み込んだグリップに俺様の流麗な指が触れ……触れ……触れ………………あれ?
なにィィィィィ! 我が愛剣ちゃんがないザマスよ!?
ていうかね、いま気がついたんですけど、俺様ってばいわゆる全裸──つまりは、スッポンポンですぜ!?
ひょっとして? 先刻、ガキどもに装備一式全てを奪わ……否、提供してやるときに隙を突いて脱出したんだが、その後、ずーっと、そのままの格好で貧民窟を全力疾走してたのですか?
そしたら、思いもかけずにテリィらしき人相の野郎を発見したので、夢中で追撃モードに入っちゃってましたか?
……………………。
これも結社の陰謀かよ!? 絶世の美男子たる俺様を妬む醜男たちの策謀かも!?
いまの俺様ってば丸腰? 否、丸腰以下ですか!? 生まれたままの姿なだけに、正しく、赤子の手を捻るようだぜ!な対象にまで落ちぶれちゃってますか!?
ノォォォォォォォォォォ!! やり直しを要求するゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
……ハッ、いや待て、落ち着け、餅つけよ、俺様。
そうだ、冷静に考えてみろ。俺様は穴熊の貴公子と呼ばれる天才、こんな、如何にも弱っちそうな三下の賞金首ごとき、丸腰でも? ひょっとして? 余裕でポイの? 楽勝ですか?
その通りだ、そうに違いネェ! 否! そうであるべきだ!
何せ俺様は天才! 思い出せ、誰もが俺様を畏怖しているではないか!
『いやぁ、こないだの嵐には参ったよ、農作物が全滅さね。まったく、テンサイには叶わねぇよな』
そうだ! 俺様に不可能はナッシング! 嵐を! 嵐を起こせよ! 自信を! 自信を持てよ! ビリーヴミー! 天才万歳!
形勢は一気に逆転した。
俺様が放つ、やれるものならやってみなオーラに奴は完全に気圧されやがったのさ。
一変した空気に怯えるテリィ。余裕の態で接近していく俺様。
だがしかし! 刹那、何人たりとて予測不可能なアクシデントが俺様に襲いかかりやがったんですよ!
間合いを詰めるべく踏み出した俺様の足に激痛が走る!
なんですか!? こ、この、スゲェ痛みは!? 路面だ、路面に何か、何かがあったんだ! 罠!? 巧妙なブービートラップ!? これこそが奴の狙いだったのか!?
悶絶する俺様の足の裏にはなんと! 先端の尖った小石が刺さってやがった! 恐るべし、小石! 小石のくせに素足で踏むとこんなにも痛いのか!? じゃあ、小剣が刺さろうものなら小剣が刺さったぐらいに痛いってことですかよ!?
形勢は一気に逆転した。
俺様が放つ、痛いのは嫌だぜオイなオーラに奴は完全に呆気に取られやがったのさ。
一変した空気に戸惑うテリィ。半ベソで後退していく俺様。
だがしかし! 最早、撤退するしか術がないと思われていた俺様の足元に何かが落ちている事に気がついた!
これは……一本の……藁?
すると、途端、テリィの奴が絶望的な悲鳴をあげやがったんですよ。
『嗚呼、そ、それはオレが秘蔵していた筈の、不可能を可能にする伝説のマジックアイテム、"溺れる者は藁をも掴む"ではないか! それさえあれば如何なる不利的状況も一瞬にして打破できるという! 何故!? どうして!? ここにそれが!? なんたる運命の悪戯! 嗚呼、神は我を見放し給うたのか!? い、いや、大丈夫だ、言い伝えによるとあれは持ち主を選ぶという。マジックアイテムを所有するに相応しい、天才でなければ、その効力を発揮できないというではないか!』
……フッ、テメェは余程の馬鹿野郎だな、テリィよ?
テメェの眼前にいる俺様を誰だと思ってやがるよ、思ってやがりますよ?
天才の名を欲しいままにする俺様だぜ? マジックアイテムごときに選ばれぬ筈がなかろう、否! 選ばれて当然、こいつは俺様に出会う為に悠久の刻を過ごしてきたこと疑いナッシングってもんだぜ! ヤホゥ!
だが、だ。だが、ですよ。
いざ、藁を手に取ってはみたものの使い方がサッパリ分からネェ。ていうか、これって本当にマジックアイテムなのか? ひょっとして? もしかして? 俺様は選ばれなかったのか? それとも、実は奴に騙されてるだけなんじゃ……
『オオォォォォォ、遂に、遂に手にされてしまったぁ! しかも! 藁が、藁の色が微妙に、色覚では察知ではない程度に変色していくではないかー。あ、あれは、まさか、そんな馬鹿な! 信じられぬ! 持ち主に、マスターとして認めたというのか、アイツを!? もう駄目だァァァァァ。オレが逃れられる術はない、逃げ切れる可能性はゼロに等しい! 何故ならば、あのアイテムはその時、その瞬間にマスターが望む効力を発揮するからだ。ただし、それは藁の形状の似たものでなければならないという。そう、例えば魔剣とか! 魔剣とか! 魔剣とか!!』
……フッ、テメェは余程の大馬鹿野郎だな、テリィよ?
テメェは眼前にいる俺様に塩を贈ったんだぜ? プレゼントソルトだぜ?
安心しろ、その間抜けさに免じて痛みを感じることもなくスッキリとバッサリと逝かせてやる、それが俺様の侠気!
待ってろよ、ヒゲ。もうすぐ、テメェの若さを取り戻してやるからな!
行くぜ、新たなる我が愛剣! ウィッシュストロースウォードよ!
唸れ! 吼えろ! 切り裂け! ウィッシュストロースウォードよ!
チェストォォォォォォォォォォ!!
『……なァ、ヒゲよ。テメェは俺様に比べて長命な種族だ……だから、少しぐらい、その、構わネェよな? いや、俺様も最善を尽くし……って、ゥォィ! 黒々と若返ってやがるじゃネェか!? あれ? いつのまに? 解呪? え? なんで? ……ハッ! そうか、そうだったのか! 俺様もいま気がついたぜ、呪詛を祓うグッドアイディーアに! ズバリ! イカスミスパゲティを食べやがったな!? そうだろ?』
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