いつもの事 ( 2002/11/11 )
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作者
登場キャラクター
バリオネス



新王国暦514年10月真ん中の日、夕方のきままに亭。

店内の片隅でひそひそ話をする男、その数4人。
バリオネスと愉快な仲間たち・・・もとい、『元』愉快な仲間たちである。
と、言っても愉快かどうかなどは関係ないことである。
3人共ごく普通の一般人のような格好をしているが、それは世を忍ぶ仮の姿。
何を隠そう、彼ら3人は泣く子も黙る極悪非道、冷酷無比で名を轟かせている仮面野盗団の創立以来の団員なのだ。
念のため言っておくが、その3人の中にバリオネスは入っていない。
なぜならバリオネスは、仮面野盗団の創始者(?)初代団長として野盗団の育成に力をそそいだ人なのだ。
野盗の3人が小声で喋り始めた。
「ブライアンのやり方にはついていけません。」
ブライアンは悪徳商人ソスト・クレランスの片腕として、護衛から辻斬りまで主に裏の仕事を任されていた。
この時バリオネスはシャウエルと名乗っており、ソストの用心棒として雇われていた。
2人はこのころからの知り合いである。
その後ソストはドーマーという麻薬を取扱ったことで捕まっているが、ブライアンは難を逃れ姿をくらました。
それからしばらくなりを潜めていたものの、退屈な毎日を送っていた。
バリオネスから野盗団乗っ取り計画を持ち掛けられ力を貸す事になる。
ブライアンの驚異的強さとバリオネスの姑息さによって乗っ取りは成功する事となる。
バリオネスがいたころの野盗団は『ばりおねすと愉快な野盗達』と言うような雰囲気がにじみ出ていた。
しかし、ブライアンが後を継いでからは、急激に極悪性を増していった。
「おかしらの代わりが、あのデブって事もなっとくいかねぇ!」
バリオネスが去った後、ブライアンはバリオネスの代わりをすぐさま用意した。そうしなければ、自動的にブライアンが野盗団の団長となり、街から手配されてしまうからだ。
表に出るのはあくまでもバリオネスであり、ブライアンはそれを影から操る事となった。
バリオネスの名を騙るデブはたいした実力も無いのに、ブライアンの威を借り威張り散らしているとの事。
しかし、ブライアンがオーガーなみに強い為、誰1人として逆らう事が出来ないとの事。
それでいて野盗団の行いは、全てバリオネスのせいになるという事。
だが、バリオネスも負けてはいない。知り合いの盗賊を使い、情報戦を展開した。
自分に恨みを持つものが自分の名を騙り、悪行を繰り返しているという情報を流した。
それによってかなりの額を盗賊ギルトに支払う・・・・もとい、寄付する事となったが。
創始者もそのデブという事にして、全ての罪を押し付けた。
それによって現在では、創始者も悪行を繰り返しているのもデブという事でまとまっている。
「おかしら、もう一度戻ってきて下せぇ」
その言葉にバリオネスは首を横に振る。
3人がどんな言葉を並べても、バリオネスは縦に首を振らなかった。
なぜならバリオネスの頭の中は、麻薬におぼれてしまったカーナのことでいっぱいだったからだ。
なんとか救ってやりたいと言う気持ちと、全てを投げて逃げ出したいと言う気持ち。
それにプライドが入り交じりて泥沼となり、完全にはまり込んでしまっている。
結局、首を横に振り続けるバリオネスに根負けし、3人は帰っていった。

夕飯がすむとバリオネスはきままに亭を後にした。
使い魔のカラスはカーナを探し、街中飛び回っている。
しかし日が暮れると鳥目のカラスは役に立たなくなるので、バリオネスが入れ替わるように探しにでかける。
しばらく歩いた先で路地に入ると、数人の男達に周りを取り囲まれた。
「衛視隊だ、貴様を逮捕する。おとなしく縛につけ!」
容疑は仮面野盗団の元首領ということで強盗殺人。
バリオネスは情報戦の効果に絶対の自信を持っていた。
そんな状況で取り乱すのは得策ではないと考えたバリオネスは、おとなしく捕まり詰め所に連れて行かれた。
衛視の詰め所で取り調べを受けるも、横柄な態度で知らぬ存ぜぬを突き通していた。
しかし、それも1人の男の出現で状況は一変した。
奥の扉から現われた男は、野盗団の1人であった。
「すまねえ。つい言っちまった。」
その男は苦笑いしながらそういった。
別件で捕まった彼は衛視の言葉巧みな尋問にひっかかり、バリオネスの罪を証言する事になってしまった。
バリオネスも口元を引きつらせつつ笑みを浮かべていたが、その目はどこか遠くを見つめていた。
衛視が勢いよく机を叩く音によって、バリオネスの放心の時間は終わりを告げた。
その後のバリオネスは、衛視の質問に丁寧に、かつ正直に答えていった。
だが、横柄な態度は変わる事がなかった。


新王国暦514年11月冷たい風が吹き始めた日

オランより船で2日行った所にある孤島の鉱山にバリオネスはいた。
知らない所でなにかあったらしく、死刑の所を終身刑と言い渡され、坑夫として穴掘りに従事していた。
しかし、悪条件下での重労働。それに落盤、粉塵など・・・命の危険は多い。そして罪の重い者ほど、危険な場所で使われる現状。
これは事実上死刑に等しい判決だった。



  


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