紡がれる糸 ( 2002/11/24 )
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作者
原案:宇都宮振一朗/執筆:松川彰
登場キャラクター
A.カレン



「……と、まぁ、だから結局、信仰するという心は……」
 ぼそぼそと低い声で話しながら、ふとカレンは気が付いた。先刻から相づちがない。その代わりに聞こえてくるのは、規則正しい寝息。
「………………ラス?」
「…………」
「……寝てやがる」
 苦笑が漏れた。
 ラスの家の居間である。酒を飲みながらの雑談が、いつの間にか信仰がどうのという話になった。きっかけは覚えていない。
「全く。この不信心者め」
 金髪の隙間に覗く、先の尖った耳を引っ張ってやろうかとも思う。が、やめた。もともと、これが初めてではない。組んでから8年になるが、何度となくこういう話題にはなった。ラスのほうから聞いてくることもあれば、今日のように別の話をしていて、なんとなく……ということもある。その時の気分にもよるのだろうが、宗教めいた話……とくに、教義云々の話になれば、眠り込まないまでも欠伸を漏らすことは珍しくない。
(知識として知りたくはあっても、信仰そのものに感情がついていかないってことか……)
 森で育ったという相棒の、色の薄い髪を軽く引っ張る。
 ふと、思いだした。
(ああ……あいつもそうだったっけ)
 くす、とかすかな笑みを漏らして、カレンが思い浮かべたのはベルダインに住む弟の顔だった。
(いや、違うな。あいつは熱心に聞いていた。ただ、教義に熱心というよりも、あれは……)
 どちらにしろ、自分がぽつぽつと話す教義が、右から左へすり抜けていたことに変わりはない。
 思い出す。自分とは正反対の、金色の髪と青い瞳を。柔らかな色白の頬を。アベル、というのが弟の名だ。血は繋がっていない。それを言うなら、カレンは家族の誰とも血は繋がっていない。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 新王国歴485年、冬。一人の女性が、ベルダインの街角でうずくまっていた。臨月も間近い身重の女性である。それを、商談帰りの画商が見つけ、家に連れ帰った。彼自身、自宅には身重の妻がいる。とても他人事とは思えなかった。
 浅黒い肌、黒い髪と瞳を持ったその女性は、リタと名乗った。ガルガライスで娼婦をしていたと、小さな声で告白した。娼婦が子供を孕んでは仕事にならない。
「それでも……あたしはこの子を殺したくなかった」
 だから、始末させようとする娼館から逃げて、手近なキャラバンに紛れ込んでここまで来たのだと。
 その言葉を聞いて画商は、子供を無事に出産するまで、彼女を家で世話することに決めた。その画商がカレンの、後の養父となる。
「おまえを生んだ母は、強い女性だったよ。おまえの父親のことは語らなかったけれど、おまえを殺したくない一心で、身重の体でガルガライスからベルダインへ旅をしてきたんだ」
 養父はそう語った。
 カレンを無事に出産して、その数日後。リタは産後の肥立ちが悪く、息を引き取った。生まれて間もない赤ん坊だったカレンは実の母親を知らない。覚えているのは、そのひと月後に同じように子供を出産した養母のことだけだ。
 頬を撫でる温かな手も。自分を抱きしめる柔らかな胸も。それは全て、リタのものではなく養母のものだ。だが、この命は紛れもなく、リタが生み出した。
「おまえをアーサーと名付けたのも、おまえのお母さんだよ。弱った体で、それでもおまえを抱き上げておまえに名前を付けた。……おまえのお母さんは、とても嬉しそうだった。肉親の縁が薄く、娼婦に堕ちるしかなかった自分だけれど、それでも自分にとって唯一の肉親を、自分が生み出せたことを誇りに思っていた。私たちが、おまえを引き取って……確かに、今の両親は私たちだ。それは誤解しないで欲しい。けれど……けれどね、アーサー。おまえのお母さんのことを、おまえにはちゃんと知っていて欲しい」
 アーサー。それは英雄の名だ。子供の頃の御伽噺によく出てきた。悪魔に敢然と挑み、そしてそれを退けた騎士の名。誇り高く、気高く強く。そんな英雄の名前を与えられたことが気恥ずかしくて、その名前を名乗るのはあまり気が進まなかった。だが、名前そのものを嫌っているわけではない。生みの母親がつけた名前というのなら尚更だ。
「アーサー。おまえと私たちは、確かに血は繋がっていない。だが、そんなものが何だと言うのだ。おまえは紛れもなく、私たちの家族だ。そしてアベルの兄だ。これもチャ・ザ様の結ぶご縁だろう」
 ひと月後に生まれた“弟”はアベルと名付けられた。金色の巻き毛と青い瞳を持つ、正真正銘のカレン家の長男だ。だが、公式な書類にも、長男がアーサー、そして次男がアベルと届け出がされている。
 母に良く似た、浅黒い肌と黒い髪、黒い瞳。その家に住む家族とは全く違う色合いだ。だが、養父は実の息子と区別することなく、平等に育てた。
 カレンの実の親のことを、両親は包み隠さず話していた。物心つく頃から少しずつ。そのことは、かえって良かったと今のカレンは思っている。誰がどう見ても、他の家族とは似ても似つかない。様々な中傷を受けたり、何も知らないままにいきなり全てを突きつけられるよりは、いろいろと覚悟が出来る。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

(そういえば……こいつ、半妖精なんだよな……)
 先刻、自分が引っ張ろうと思った耳の先を見てふと思う。それを口に出すと、相棒はいつも、また忘れてたのかと笑う。可笑しそうに。そして少しだけ嬉しそうに。
 実際、いつだって自分にとってこの相棒はラスであって、半妖精ではない。時々、それを思い知らされることもあるが、それはいつだってくだらないことが原因だったりするから、またすぐに忘れてしまう。例えば、旅の途中で泊まろうとした宿の店主が人間主義者だったり。街でエルフとすれ違って、眉を顰められたり。
 いつだったか、どうして自分と組む気になったのかと聞いてみたことがある。おまえこそ、と笑ってはぐらかされたが、その後でかすかに呟いた。おまえは種族を見ないから、と。
 種族を……見てないわけじゃないだろうと思う。時折忘れそうになるが、それでも自分はラスが半妖精であることを知っている。ただ、そこで差別という言葉に繋がらないだけだ。エルフだけじゃなく、グラスランナーもドワーフも。そしてハーフエルフも人間も。どんな種族であれ、同じ場所で生きて、同じ言葉を話しているなら、どう違うというのか。そこに区別はあっても、差別はない。差別が生まれるほどの違いなどありはしない。いや、あってはいけない。
 そう思うのは……おそらくは自分の生い立ちのせいかもしれないと思う。
 カレンが育った家は、ベルダインで画商を営んでいた。新市街の一画である。旧市街の雑然とした雰囲気とは一線を画している。中流以上の家族が住む街だ。犯罪は少ないし、暴力沙汰もあまりない。だからといって、住んでいる者たちが、全て心の綺麗な者たちであるとは限らない。
(子供ってのは……ある意味、残酷だよな)
 森に移る前は、タイデルの街で過ごしたという相棒がどうして西方語を覚えていないのか。その理由は聞いたことがない。聞かなくてもわかるからだ。
 子供は、自分と違うものに敏感だ。そして、排除しようとする。子供らしい無邪気な残酷さで。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

「知ってんだぞぉ。おまえのかぁちゃん、売女だろ!?」
「バイタってなにさ?」
「良くは知らないけど、うちの母さんが言ってたんだよ。ろくな女じゃないってさ!」
 近所の子供達がよくそうやって囃し立てていた。肌の色が多少目立つことはあったが、原因はそれだけではない。もしも肌がもっと濃い色をしていたとしても、家族の血のつながりで納得できる色ならば誰もいじめることはない。
「おまえらぁっ! アーサーを馬鹿にするなぁっ!!」
 そう。こうやって、いつだって割って入ってくる弟。その弟とも、養父とも養母とも似ても似つかない容貌をしていることが原因なのだ。だがそれも仕方のないことだと、幼い頃のカレンは諦めていた。自分が両親に聞いて知っている通り、そしてそれは弟も知っている通り、自分は家族の中の異分子なのだから。
 ……なのに。
 なのにどうして。
 どうしてこの弟は、いつだって自分を守ろうとするのか。自分を兄と呼んではばからないのか。どうして……こうやって、自分の腕を掴む指先が震えるほどに、自分のために怒るのか。
 そして両親もだ。どこの家の子供が何を言ったか……弟は時折それを母親に説明した。喧嘩沙汰になって、相手の家が抗議してくると説明させられるからだ。それ以外は、喧嘩をしたことは兄弟だけの秘密だったのだが。
「全く。うちの子供に文句つけてくるなんて、100年早いわよ」
 養母はそう言って笑った。養父も同じだった。
「ああ、全くだ。おい、アーサー、アベル、ちゃんとやり返してやったんだろうな?」
 母は、陰ではこっそり泣いていた。けれど、それを表に出すことはほとんどなかった。自分が悲しめば、それはアーサーの負担になるから、と。
 せめて、喧嘩にならないように……母へとそれが知られないように、やり返すことを諦めて、全て呑み込むことしか出来なかった。
 ……どうして。
 どうして、この家族たちはこうもあからさまに自分を家族だと言ってはばからないのか。それが不思議だった。自分は血のつながりはないはずだ。なのに……どうして。
 重荷だとは思わない。カレン本人にとっても、3人は大切な家族だった。この家族のもとに連れてきてくれた実の母親は、顔も覚えていない。生んでくれた母親に感謝はあるが、それより彼女に感謝したいのは、ここに連れてきてくれたことかもしれない。
 そう、感謝している。幸せだとも思う。実の母の顔は知らないけれど、自分には養父母がいる。母を助けてくれたのが養父だったこと。この家で自分が無事に産まれたこと。そしてこの家で暮らせていること。全てが幸運だと思う。
 なのに、どこか思い切れない自分がいる。
 時折、家族とともにチャ・ザ神殿を訪れることがあった。養父が信者だったからだ。チャ・ザの教義を養父から教わった。人々が出会い、交流し、そこから生まれるものは自らを育てると。人々の出会いが幸いであるように。出会いから導かれ、蒔かれた種から咲く花が美しくあるように。
 養父と、生みの母が出会ったのは幸運だったろう。母親がガルガライスから逃げざるを得なかったのは不運だったとしても、それでも彼女はベルダインまで辿り着いた。そしてこの家族に出会った。……ああ、それならば、自分はチャ・ザの導く出会いの果てに生を受けたのだ。
 この幸いを、ただ受け取るだけで良いのだろうか。もちろん、この家族にとっては、自分が幸せに暮らすことが、何よりの幸いだということはわかっている。ただ、自分の側はそれで良いのか。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

(ああ……ちょうどその頃だったっけ。神の声を聞いたのは)
 以前に、相棒がそれを尋ねてきたことを思い出す。カミサマは何て言ったんだ、と。
(『自ら求めよ。さすれば得られん』。そう言ったら……こいつ笑ったっけ)
 苦笑と共に、その時の会話を思い出す。目の前で安らかな寝息を立てている半妖精は、『カミサマってのは意外と当たり前のことを言うんだな』と笑った。
 そう。当たり前のことだ。ラス自身もそのあとで呟いたように、突拍子もないことを言うわけもない。
 ──当たり前のこと。
 なのに、あの頃の自分にはそれが出来なかった。
『当たり前のことほど難しいけど。それでも、自分から求めないでいるものが与えられるほど、世の中ってのは気前いいもんじゃねえ』
 そう言って笑ったラス。潔いと思った。
 どうして組んだのかと聞いて、おまえこそと聞き返されて。その時に言おうとしてやめた理由のひとつがそれだ。この相棒はいつだって、奇妙に潔い。何の作為もなく、さらりと自分の欲しい言葉を言ってくれる。最初の仕事の時がそうだった。『奇跡が使えない神官がいてもいい』と言ったのだ。潔く。作為も衒(てら)いもなく。同じパーティにいる者として、同じ仕事を受けて。それでも、神官でもある自分に向かって、『癒してくれりゃありがたいけど、それはこっちの都合だし』と笑った。
 義務じゃないんだ、と……そう思えた瞬間、どこかが楽になった。
 ベルダインにいた頃に、同じ言葉を言ってくれる者がいたなら。……いや、いた。少なくとも家族はそう言った。なのに、自分がそれを素直に受け入れなかった。
 素直じゃない、と思う。いつだって。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 神の声を聞いたのは、チャ・ザ神殿の聖堂だった。家族で礼拝に行っていた時だった。頭髪の薄くなった高司祭が長々と説法をしていたのを覚えている。
 突然に聞こえてきた声。高司祭の嗄れた声にかぶさるように。けれどそれは耳から入る声ではなく、頭のなかに直接に響く声。
 まだ幼かった。10才になるかならぬかの頃だった。驚いてあたりを見回しても、周りの信者も自分の家族も、ただ説法を聞いている。ということは自分にしか聞こえない声だと思った。……途端に、怖くなった。
(……幽霊の、声?)
 奇跡を行使する神官たちが居並ぶ中。そこは聖なる場所であるべきだ。そんな場所で、どうしてそんな発想が出たのかはわからない。けれど、聞こえてきた声が、人ならぬ者の声であることは直感的にわかった。それならば、幽霊の声なのではないかと思ってしまった。
 震える指先に一番先に気が付いたのは、隣で欠伸をしていた弟だった。
「……アーサー? どうしたの?」
「……ゆう……れい。幽霊だよ。幽霊がいるよ、アベル。ね、お母さん、お父さん!」
 涙ぐむ子供に当惑したように、両親がその肩を抱く。どうしたのか、と問う声に、ただ、幽霊の声が聞こえたと呟き続けた。
 子供の他愛もない嘘だとか、説法を聞きながら居眠りをして夢でも見たのだろうとか。そう非難されても仕方のない状況だっただろう。だが、両親はそれをしなかった。血が繋がらない自分の子供を信じた。
 説法が終わってから相談しにいった先で、カレンは問われた。どんな声がどんな風に聞こえてきたのかと。
 説明するカレンの言葉に頷いて、司祭は養父母に向かって言った。息子さんは神の声を聞いたと思われます、と。
 自分を囲んで、どんな話がされているのか、カレンには分からなかった。ただ、どうやら先刻聞いた声がどうも問題らしいと気づく。自分はそんなにいけないものを聞いてしまったのかと、心が騒いだ。
「……アーサー……」
 そっと指先を握る小さな手。弟、アベルのものだった。不安げに自分を見上げる青い瞳を見返して、カレンは笑った。
「大丈夫だよ、アベル。誰もおまえを怒っていやしないから」
「でも、アーサーが怒られてる……?」
「僕も怒られてないよ、大丈夫」
 そう、怒られているわけではないらしい。それはわかった。ただ、驚愕する両親と、熱心に言葉を重ねる司祭とが、不思議だった。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

(あの後から…か。全く、嫌になる。心の狭さ…とでも言うか。いや、狭量だと言うなら、自分も狭量だったろう。ただ、それでもあそこまで掌を返せるものかとある意味感心したのは事実だったな)
 いつのまにか、すっかり熟睡してる相棒を叩き起こして寝台に行かせたほうがいいだろうかと思う。同時に、尋常じゃない寝起きの悪さを考えて、いっそ起こさずに自分が運んだほうがまだ楽かとも思う。だが、軽いとは言え、相手は男だ。必要もないのに男を抱きかかえて寝台に連れていくなんて考えたくもない。
(寝起きの悪さは似てる……かな)
 髪の色と瞳の色は似ている。ラスとアベルは。だが、アベルの髪はふわふわとした巻き毛だった。それに、淡い薔薇色の頬。人形のような……と思いかけてふと気が付く。自分が覚えているのは、まだ成人前の、子供のアベルだ。今はもう自分と同じ、28才になっている。
 あの屈託のない瞳は鋭くなっただろうか。
 ふっくらとした頬は精悍になっただろうか。
 父を手伝って、画商の仕事をしているのなら、チャ・ザへの信仰もきっとそのままだろう。まさかまだ、教義を聞いて退屈そうに欠伸などは……。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 神の声を聞いた、という子供をそのまま放置するわけにはいかない。カレンはチャ・ザ神殿へと足繁く通うことになった。教義を教えられ、聖典を暗記させられ、神聖語を教えられる。
 何年もしないうちに、奇跡を行使出来るようになった。神聖魔法は、他の魔法とは少々違う。神の声を聞いているかどうか……神の意志をその身で感じられるかどうかが鍵だ。精霊魔法は純粋に才だと聞く。精霊の存在を感じられるかどうか。だとすれば、古代語魔法はマナの魔力を引き出せるかどうかなのだろう。それに加えて膨大な知識と、それを滞りなく辿れる技術。それに比べて、神聖魔法は……いや、ある意味、才なのかもしれないとも思う。神の声を聞くということが才のひとつだと言えるのならば。
 神の声を聞き、神の意志をその身に感じて、更には神聖語を覚える。そうなれば、奇跡を行使することは出来るのだ。

 以前もよく神殿には通っていた。商売をやっている養父が、熱心なチャ・ザ信者だったからだ。説法がある日には、家族で礼拝にきた。だが、今、カレンが通っている場所は礼拝堂ではなく、神官が詰める勉強室だ。
 子供のうちから神の声を聞くというのは、そんなに珍しいことではない。だが、よくあることでもない。何年も神殿で修行して……それでも声を聞けない神官も多い。自然、注目の的になる。いろいろな視線があった。激励であったり、年齢にそぐわぬ尊敬であったり。そしてそれよりも多いのが……そして痛いのが、別の視線だ。それは嫉視である。
 妬みと嫉みの視線を注ぎながら、それでも相手は神の奇跡を行使出来る。周りの複雑な心境がそのまま視線の温度に反映されていた。
 今まで、カレンのことを囃し立て、いじめていた子供たちは、それが出来なくなった。ただし、おおっぴらには、というだけである。子供たちはいつだって素直だ。拾われっ子──それは微妙に間違った表現なのだが──という異分子から、神の声を聞いた子供という異分子へ。所詮は、“自分たちと違うもの”である。路地裏で、子供たちに囲まれて、それに腕ずくで反抗する術を覚え、母のために我慢することを覚え、やがてそれを無視するという術も覚えた。反抗をしようがしまいが、結果は何も変わりはしない。

 だが、子供たちの素直さよりも醜悪なのは、大人たちの反応だった。それまでも、どこの馬の骨とも知れない女が生んだ子供、それでもベルダインではそこそこ名が通った画商が実子として育てている子供……ということで、微妙に底意を含んだ視線を向けられていた。それに加えて、更に、“奇跡が使える子供”となる。ある者は奇跡を求めて媚びへつらい、ある者は奇跡の力に怯えて目を逸らし。
 生まれが不運であることを種にして、カレンを軽んじていた者たちが、カレンが神の声を聞いたというただそれだけで、なんと幸運な子供なのかと遠巻きにする。何故、あのような子供にそんな奇跡が下されるのだと妬む。
 ……違う、と思った。
 神の声を聞いたことは事実だ。だがそれは幸運とか奇跡とか……そういった類のものではない。おそらくは偶然なのだろうと思う。奇跡というならば、神の奇跡は誰にでも平等だ。神聖魔法だけが、神の奇跡ではない。人が生まれ、生きること。誰かと出会い、また別れること。それら全てが神の織りなす奇跡。そう考えるならば、神聖魔法の行使など何ほどのことか。日々、奇跡によって人は生かされている。自分自身が生きていることが、何よりもその証明だ。あの日、養父が母親と行き会わなければ今の自分はない。なのに、どうして人は目に見える奇跡だけを求めるのか。

 それでも、期待されるならば応えなくてはならない。神聖魔法を行使できる以上、神殿で奉仕をするのは当然のことだとも思う。だから、“奇跡”を行使する。チャ・ザの使徒として。
 ──感じる視線の温度は変わらない。
 そして、迷う。神の声を聞けば迷いは消える、と高司祭は言った。だが、カレンは違った。神の声を聞いて、そして周りの視線の温度を感じて迷う。自分は不運なのか幸運なのか。いや、それよりも何故、神は自分に声をかけてきたのか。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 運、というものを考えることがある。幸運と不運。それは偶然だろうか。少なくとも、人の世に生きる者の恣意でない以上は、偶然と呼んでも差し支えはないのだろう。それを自在に操れるのは神の指だけだ。
 以前、相棒が言ったことがある。自分が精霊の存在を感じられたのが偶然だというのなら、それは最大の幸運だったと。では、自分はどうだろう。カレンは考えた。
 神の声を聞いたのが偶然だというのなら、それは幸運か。
 小さく首を振った。幸運も不運もない。運は運だ。それを幸いとするか否とするか。それを決めるのは神ではなく自分だ。どんな運も、幸運へと転じる種を含んでいる。ならば、その種を枯らさずに実らせるのが、受け取った者の義務だろう。
 金で買える奇跡ではなく。
 金貨の量で量れる信仰の深さではなく。
 自分が何を持って生きるのか、何に対して感謝するのか。
 相棒が眠り込む前に、言おうとしていた言葉のひとつをそこで思い出した。そして、もう一つ別のことも。それを思い出すきっかけとなったのは、ラスの胸元に薄く残る傷跡だ。
(こいつは……確かに運がいい。俺の不確かな奇跡で何度も助かりやがる)

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

「どうしてっ!?」
 悲痛な声がその口もとから漏れた。隣に立つ神官見習いが彼女を宥めている。30代の半ばと思われるその女性が腕に抱えているのは、出血によってすっかり青ざめた顔をしている少年だ。
「奥さん、大丈夫ですよ。彼は子供と言えども、奇跡を行使できる神官なのですから。それに、他の神官は今、ちょうど他の患者を……」
「私はちゃんとお金を払ったわよ。この子を……息子を癒してくれる奇跡の代価を! 応急手当だけで待たされて、やっと出てきたと思ったら、神官がこの子ですって!? 駄目よ、この子は、いつもうちの息子と喧嘩をしているの! フィリップのことが嫌いなのよ! 駄目、ああ……駄目よ、この子は、必ず奇跡を失敗するわ! フィリップを助けてなんかくれやしない!」
 金切り声に近いその声を聞きながら、カレンは息をついた。奇跡が使えるようになって1年は経つ。神殿での奉仕のなかで、癒しの奇跡を信者に施す奉仕が一番、カレンは嫌いだった。奇跡の代価、と口に出す患者が多いからだ。
 それでも、そんな思いを振り切って患者を診る。事前に聞いた話によると、工事中の建物の傍で、積み上げた建材が崩れ、その下敷きになったらしい。折れた骨までは癒せないが、幾つかの傷と、おそらくは内臓に及んでる出血を止めることは出来る。
「……お静かに」
 神官見習い──とは言え、彼はカレンよりも10才は年上だが──が、母親の肩に手を添える。
「慈悲深きチャ・ザよ……」
 カレンは、奇跡を請う祈りを始めた。もちろん、相手のフィリップという子供には、幾つもの思いがある。彼の母親が言うように、喧嘩ばかり……というよりも、有り体に言えば、路地裏の目立たない場所でカレンをよくいじめているグループのリーダー格なのだ。いつか仕返ししたいという気持ちはあった。だが、奇跡を願う気持ちに嘘はなかった。自分の立場を考えれば……いや、それ以前に、神の奇跡を行使するというのは、そのような気持ちから離れた部分であるべきなのだから。
 いつもなら、短い祈りを終えると同時に、淡い光が宿り、神の奇跡によって傷は癒されてゆく。その過程は何度も見てきた。
 だが、その光はいつまで経っても現れない。
「……え?」
 思わず漏らした声に、先に反応したのは母親だ。
「ちょっと……どういうことよ!? フィリップ!? ねぇ、フィリップっ!? あなた……わざとね!? わざとでしょう! この子が憎くて……それでわざと失敗したんでしょうっ!?」
「そんなことは……! いえ、今はそれよりも……すみません、ジュディスさんを呼んできていただけますか。僕では……」
 自分より年かさの神官の名前を挙げて、カレンは見習いの男にそう頼んだ。
 わざとではない。それは確かだ。あの瞬間、迷いはなかった。ただ、ごく稀に奇跡が効果を現さないことはある。それがフィリップの時にそうなっただけのことだ。

 ──少しして、母親を刺激しないようにと控え室で待っていたカレンのもとに先刻の神官見習いがやってきた。そして、ことの次第を告げる。
「ジュディス神官の癒しによって、あの少年は助かりました。今は、母親と共に施療院のほうへ……」
 言いにくそうに、低い声で呟く見習いに、カレンは年齢に似合わぬ苦笑を向けて頭を下げる。
「ありがとうございます」
 彼が告げなかったことをカレンは知っている。控え室まで母親の声は届いていたからだ。
『あの、アーサーって子供はわざと失敗したのよ。フィリップへの仕返しなのよ! だって、他の神官さんなら治ったじゃないの! 神の奇跡を行使する子供ですって? とんだお笑いだわ。傷ひとつ治せないんじゃない。私情で、奇跡を授ける相手を選ぶ神官なんて最低よ! 奇跡の代価を払った私たちには、下されて当然の奇跡だったはずなのに! あなた、見習いさん? そうね、今のこと言っておいてよ、あのアーサーって子にね!』
 ……わざとじゃない。だが、それは確かだと思う心が揺らいだのも事実だ。漏れ聞こえた母親の甲高い声を聞いているうちに。
「私は、まだ奇跡を行使出来ぬ身ですが……どうかお気になさらず。奇跡がいつでももたらされるとは限りません。ごく稀に効果を現さぬこともあると聞きました。あの時は……そう、運が悪かったのでしょう」
 母親の言葉を伝える代わりに、そう告げた神官見習いに、カレンはもう一度深々と頭を下げた。

 運、という言葉は便利だと思った。自分の力でどうしようもなくなると、運の良し悪しで片を付ける。そしてそれは、同時に言い訳にもなる。
 運が悪かった……それは事実だろうと思う。ただ、一瞬でも何かがよぎらなかったと言えるのか。カレンは自問した。神に奇跡を願うあの瞬間、それ以外のことがよぎらなかったと言えるかと。……いや、恣意はなかった。なのに、あの母親に言い返す言葉が見付からない。運が悪いという以外に。
 そして、その母親が、彼女にとっては『遠慮がちに』その出来事を吹聴してまわるのにさほどの日数は必要としなかった。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

(……人間同士でさえ、幾つもの差別がある。ましてや種族が違うなら……と想像するのは、逆に失礼ってもんか)
 小さく苦笑を漏らす。家の主が寝ている間に、卓の上を片づけ、勝手に茶を淹れた。
(周りと違う。そのことは、周りから排除されることに繋がる。……そうだな。俺はそれを知ってる。だからあの頃はいつだって、遠くに行くことを望んでいた。どこか違う場所へ……ああ、思いだした。あの塔だ……)
 自分が今も、船旅に浮かれてしまうのはあの頃の影響かとも思う。ここで寝てる相棒が船に弱くさえなければ、もっと船旅を楽しめるのに、と少々恨みがましくも。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 ベルダインの新市街の中央に、“世界の塔”と呼ばれる塔が建っている。展望台もあり、そこには観光客も多く訪れる。
 カレンは、入り口に立つ、天才建築家の像も、再建王と呼ばれる王の像も興味はなかった。ただ、展望台から見下ろすベルダインの全景と、その先に広がる海を眺めていた。
 周りの大人たちの視線から逃れ、カレンはその塔によく足を運んだ。逃げたいとはっきり思ったわけではないだろう。自分の帰る場所が、あの画商の家族のもとだということはわかっている。けれど、それでも海に憧れた。その先に広がる自由な世界に憧れた。
(誰も知らない場所なら……誰も僕をあんな目で見ないだろうか)
 周りの観光客は、神官衣を着た子供をちらりと見ることもあるが、それきり視線を逸らす。それは、他の大人たちのように、注ぐ視線の種類に迷ったあげくに逸らされる視線ではなく、ごく自然に、興味をなくす逸らしかただ。それが不思議と心地よかった。
 神の声を聞く前も、周りの子供たちの声と視線に疲れるとよくここへ来た。そして神殿で修行をするようになってからはそれが頻繁になった。いつも感じている息苦しさが、海を見ると解消されるような気がして。

「アーサー!」
 呼ばれて振り向く。金色の巻き毛が目の前で揺れた。
「アベル。どうしてここに?」
「うん、神殿に行ったらもう帰ったって言われて……なら、ここかなと思って」
 用事は特にないけど、と笑う弟の顔を見ると、自然に頬が緩む。
「アベル、また逃げてきたんじゃないのか? 今日は確か、数学の授業がある日だ」
「うわ、ばれてる。でも、逃げてきたんじゃないよ。ちゃんと終わらせてきた。だから、神殿に行くのが遅くなったんだ」
 言い訳のように、それでも、宿題はあるんだけれど、と笑って、アベルは兄が見ていた海を見つめた。
「おまえは、将来、画商を継ぐんだろう? 勉強は大事だよ」
「…………どうしてさ」
「どうしてって……商売をやる人間が無学だったら……」
「そうじゃないよ。アーサーが兄貴だろう? 普通は、兄のほうが家を継ぐじゃないか」
 ふてくされたように言う弟に、カレンが苦笑する。
「アベル……おまえも知ってるだろう」
「何が」
「僕は……」
「だからどうだって言うんだよ。僕とアーサーが血が繋がっていないのが、そんなに重要? だって僕たちは兄弟だろ? たまたま同い年だけど、アーサーのほうが兄だよ。なんか……最近のアーサーは変に遠慮してるみたいで……」
 拗ねた口調。そして、何故遠慮などするのだと問いつめる。カレンは言葉に詰まった。遠慮をしているわけではない。ただ、自分が家族と血が繋がっていないのは事実なのだ。譲るとか譲らないとかではなく、アベルが父の跡を継ぐのが筋だろうと思う。
「……遠慮なんかしてないよ。僕の家族はおまえたちだけだ」
「本当だね? でも、それならどうして、お父さんの跡を継ぐのが僕なのさ」
「僕は、神官だから。神殿で生きるよ。神の声を聞いて、神の意志を奇跡として具現する。それが僕の義務だ。それに、僕は商売に向いていない」
 そう言ってカレンは笑った。神官として生きる道を与えられたことに、いつも以上に感謝したくなった。チャ・ザの紡ぐ縁の糸はこんなにも上手く出来ている。このまま、自分があの家にいれば、いつかは家督のことで弟と争うことになるのだろう。それは欲に絡んだ話ではない。互いに互いを大事に思うからこそ、互いに、相手こそが継ぐのにふさわしいと思うのだ。
「…………そう。本当だね?」
「ああ、本当だ」
「…………それならいいけど。でも、アーサーはいつもここに来てる。ここから海を見てる。……どこか、遠くに行きたいの?」
 正直に答えたら、弟は傷つくだろうか、と思う。

 遠くに……行きたいと思う。どこか、もっと自由な場所で息がしたいと思う。時々……そう、ほんの時々ではあるが、神の奇跡を負担に感じるのだ。底意のある視線に晒されて、それでも求められる奇跡の行使。信仰と言うのは、奇跡を求めるだけのことなのかとまで思ってしまう。そして、そんな信者たちを快く思っていない自分が、神の力を行使して許されるのかと。
 ……息が詰まる。奇跡など行使したくないと思う瞬間もある。そんな時には決まって、いつもよりも気力を消耗した。
 そのことを、アベルには話したことはない。それでも、幾つかのことは養父母には伝わっているのか……それとも、カレンの様子を見てそこから感じ取っていたのか。以前、父が言ったことがある。
『奇跡を行使するだけが神官じゃないよ。……私はただの信者であって、司祭でも神官でもないから偉そうなことは言えないけれど。それでも、神は自らの使徒にそこまでの負担を強いるものではないと、それだけはわかる。アーサー、おまえはもっと……思うままに生きてもいいんだよ』
 わかってる。……わかってる、わかってる。
 けれど、自分は存在を認められたい。周りが求める自分で居られるなら、きっと存在を認めてもらえる。あの視線たちから、嫌な温度は消える。
 そう思い続けていた。そうして、ここで海を見ていると別のことを思うのだ。……いっそ、誰も自分を求めないなら、と。
 誰にも期待されずに、誰も、こうあるべきだと自分に求めないなら。それなら、養父の言うように、思うままに生きられるのではないかと。
「ねぇ。行きたいの?」
 行きたいの、と。その言葉が、生きたいの、と聞こえたのは錯覚か。
「……ああ。そうだな。船に乗って旅がしてみたいと思わないか? きっと、船の上で受ける潮風は気持ちいい」
 はぐらかした。
 嘘はつけない。もしも嘘をついたとしてもこの同い年の弟はそれをすぐに見破るだろう。そして、本当のことをあからさまに言ってしまっては、きっと弟は傷つく。

 カレンは、神の声を思いだしていた。
『自ら求めよ。さすれば得られん』
 ──神よ。求めても……良いのですか。
 この家族のもとで育った幸いを。
 実の母親がここに辿り着けた幸いを。
 幾重にも重なった幸いの果てに生まれつき、こうして育った自分が。
 これ以上のものを求めても……許されますか。
 弟がいて、養父母がいて。
 少ないながらも、神殿には理解ある司祭たちがいて。
 それでも、違う場所へ行きたいと、ここから逃げ出したいと……望んでも、許されますか。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

(あのすぐ後だったな……。13才の頃か)
 年数を数えて、思い出す。カレンを直接指導していた司祭の一人が、もともと冒険者たちに縁のある人間だった。そして窮屈そうなカレンを見かねて、神殿から連れ出した。冒険、というほどのものではない。何しろ、奇跡を行使出来るとは言え、まだ成人していない子供だ。見聞を広める旅と称して、実際はカレンの息抜きになれば、と考えたのだろう。
(あの司祭には幾ら感謝しても足りないくらいだ)
 おそらく、あのままベルダインにいれば自分は駄目になってしまっただろう。今だって、全てから解放されたとは言えない。それでも、あの街に居続けるよりもよほどマシだ。他の道があることを教えてくれた司祭。塔から眺めるばかりだった海へ、実際に連れ出してくれた司祭。
(別れるとき、アベルは泣いたっけ……)
 苦笑する。チャ・ザの説法などあまり好きではなかったはずの弟が、それでも熱心に自分に話をせがんだのは、それをねだれば、兄は断れないと思ったからなのだろう。話の内容はどうでもいい、ただカレンと時間を共有することを望んだ弟。自分がとつとつと語る教義を、瞳を輝かせて聞いてくれた弟。求められてるのは教義ではなく、自分と共有する空気だ。
 そんな風にまっすぐに向けられる愛情が気恥ずかしくて、嬉しくて。カレンのことを、自分の兄だと誰にでも屈託なく告げる言葉が嬉しくて。尊敬と親愛の情が込められた青い瞳が眩しくて。
 背を向けたかったわけではない。ただ、あそこでは息が出来なかった。息が出来るのは家の中だけだった。それでは……駄目だと思った。
 自分は、求めたのだろうと思う。あの時の神の言葉通りに。だからこそ、得ることが出来たものがある。
 司祭に、行きたいかと問われ、13才のカレンは頷いたのだ。迷いもあった。躊躇いもあった。けれど、最終的には頷いた。そして、よろしくお願いしますと頭を下げた。優しい家族を捨てたわけではない。父は笑って見送ってくれた。母は泣いていたけれど。それでも、おまえがおまえらしく生きられる場所へ行けるならと見送ってくれた。

 おそらく、いつかは帰る時が来るのだろう。いつになるのかはわからないけれど、自分が自分として生きられる時が来たら。俺はおまえの兄だと、アベルに胸を張れる時が来たら。
(それまでは……しばらくこいつの相棒でいるか。それにしても……同じ色合いでこうも違う。こいつの可愛げのなさといったら……いや、年を考えれば可愛げがあるほうがおかしいか)
 そこまで考えた時。
「…………ん? へ…っくしょんっっ!」
 かすかな身震いとくしゃみと共に、ラスが目を覚ました。
「……起きたか」
「あー……俺、寝てた? っていうか、起こしてくれよ。風邪ひくだろ」
「んー……まぁ、考え事してたら起こしそびれて」
「考え事? 何? 俺の寝顔見ながら考えることなんてあんのかよ」
「いや……おまえ、可愛くないよな、と」
「…………はぁ?」
 盛大に顔をしかめる相棒を見て、ああ、また省略してしまったかと心の中で呟く。
(それに、命を預ける相手に、可愛げがあるかないか、そんなことはたいして重要でもないか。どっちにしろ、組んだ理由はそんなものじゃない。これこそ……言わなくてもいいことだけど)
 寝るなら寝台で寝ろよ、と言い残して、客用寝室のほうへ向かう。


 寝台へと入る前に、カレンは祈る。自分を導く神に。
 ──チャ・ザの指が紡ぐ縁の糸。その幸運で生きる自分の、心からの感謝を。




  


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