使い魔は一日にして成らず ( 2003/01/19 )
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作者
登場キャラクター
バリオネス ミニアス



新王国暦513年9月10日
明けたばかりの陽光が部屋の窓から差し込んでくる。
バリオネスは今日から3日間、仕事の依頼も知人との約束も何もいれずに、ある儀式に専念しようとしていた。
黒に近い紫色のローブを着込み、儀式に必要なものを所定の位置に配置していく。
昨夜は十分な睡眠が取れたので、心身ともにすこぶる調子がよい。
準備が整い、心を落ち着けいざ儀式をはじめようとしたそのとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
雑貨屋に取り寄せてもらっていた品が届いたので、わざわざ届けに来てくれたのだった。
気を取り直して使い魔召喚の儀式をはじめる。
しばらくするとまた来客があったが、居留守を使う事で儀式を中断する事はなかった。
こういう日に限って来客の数は多く、飲み代のツケを取り立てに来た者がいたので使い魔召喚の儀式を中断した。

誰にも邪魔をされない場所を、頭の中で検索しながら昼飯を頬張る。
店の中を見まわすと、見知った顔が掲示板の前に居るのを見つけた。
「ようミニアス、何してるんだ?」
私がミニアスに声をかけると、彼女はまるで腐った魚を見るような表情で振り向いた。
「お前には関係ない。」
冷たく言い放つミニアス。
だが、そんな事言われると余計に知りたくなる。
席を立ちミニアスにしつこくまとわりついて、何をしているのか聞き出そうとする。
さすがにうっとうしかった様で、程無くして自分の目的を私に教えてくれた。
なんでも、ある情報によればこの近くに闇司祭がいるのでそれを探しているのだと言う。
「確かに私には関係の無い話だ、邪魔したな。」
積極的に闇司祭とは関わらないと、とうの昔に決めていた私には、確かに関係の無い話しである。
しかし闇司祭と聞いて私はある物語を思い出した。
魔術に精通した闇司祭と戦う冒険者の話しである。
新王国歴156年から始まる物語で、幻術によって隠された祭壇をめぐる攻防戦を描いている絵本である。
実際は50年程前の出来事で、それらしき祭壇を昔偶然にも発見した事があった。
「その手があったか・・・」
私はそう呟くと、早速移動の準備に取り掛かった。



  


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