挑戦 ( 2003/01/27 )
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作者
しろねこ
登場キャラクター



「うぅ…」
私は重苦しい頭を難儀してカビ臭い机から引き剥がした。
ツン、とインクの匂いが鼻につく。

くそったれ。

知らず目玉に砂をぶち込まれていたらしい。
圧迫されていた所為でぼやけている眼で状況を確認する。
ランタンの灯も消えているし、当然、手繰り寄せた30分の砂時計など落ちきっている。おまけにクソッタレの雨の所為でここ、図書館の木窓も閉めきられている。

クソ。

正確にどれだけの時間を無駄にしたのかはわからないが、頭のボケ具合からすると1時間かそこらというところだろう。
そう、時間、時間がない。
導師昇格のレポートの提出まであと幾許の時間も無い。
多少書き足して、推敲するのが関の山だろう。

“上位古代語の方言に関する考察”

我ながらバカバカしいテーマだとは思うが、15年目のレポートともなるとベーシックなテーマは粗方書き尽くしてしまっている。
それに、言語関係は担当導師の好むテーマだ。
15年目ともなると、そういう傾向も考慮した打算的なものになる。
ようやく、薄暗くて明瞭ではないにしろ視界が戻ってきた。


「クソッタレ」


私は今度こそ悪態を口から吐き出した。

目が覚めるほどインク臭いのも道理だ。
私の15年目の挑戦は、ぶちまけられたソレによって文字通り黒く塗りつぶされていた。



  


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