姉 妹の帰り( 2003/02/22)
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作者
Maki
登場キャラクター
ユーニス(精霊使い)、バウマー(魔術師)




「ミーシャっ、リーネっ……。リーネっ、リーネっ!!」
 お父さんが二人を揺り起こそうとします。でも、二人とも起きようとしません。二人の体はすっかり冷え切っていました。お父さんはリーネに何度も呼びかけ ます。リーネが息をしていないからです。

 お父さんがミーシャとリーネを捜し出したのは、真夜中のとても寒い時間でした。
 お父さんは涙をこぼしながらリーネを抱きしめます。ミーシャは叔父さんが抱き上げています。ミーシャも様子が変です。全然目を開けようとはしません。
「お父さん、お姉さんの方も危険です。早く連れて帰りましょう」
 精霊使いのお姉さんが言いました。ミーシャとリーネを見つけてくれたのは、このお姉さんと、真っ黒な服を着た魔術師のお兄さんのお陰です。大好きな曾婆 ちゃんが、いなくなった二人を心配して、通りかかった冒険者に捜索をお願いしたのです。

 お父さんはリーネを抱いて立ち上がると、家に向けて歩き出しました。誰も口を開きませんでした。

 家に帰ると、すぐにミーシャをお風呂に入れて温めます。耳と手が寒さで赤紫色になりかけています。転んだときの怪我もたくさんありました。
 お父さんもお母さんもミーシャにつきっきりです。お爺ちゃんもお婆ちゃんも、曾お爺ちゃんも曾お婆ちゃんも手を合わせて祈っています。みんなが神様にお 願いしていました。

「神様どうか、ミーシャを助けてやってください。私は十分に生きました。生きすぎました。もう私の命はもういりませんから、この子を救ってください。お願 いします」
 一番なついていた曾婆ちゃんが一心に祈ります。リーネが死んでしまい、身の切れるような思いをしているのに、ミーシャまで失うことは考えられなかったの です。
「神官様を呼んできなさい」
 お爺ちゃんが弟の叔父さんに言います。叔父さんはすぐさま家を飛び出すと、馬に乗って街に向かいました。街には奇跡を起こすことができる神官様がいるの です。

 夜が明けてからてから、神官様はやってきました。ミーシャの具合はまだよくありません。精霊使いの人が応急処置を施しましたが、回復していないのです。
 神官様は、神様にお祈りします。
「どうかこの娘の怪我をお治しください」
 神官様の手が淡く輝き、その光がミーシャに移ります。
 これで、ミーシャは助かる。だれもがそう思いました。神官様もそう思いました。
 けれど、ミーシャの顔色は悪いままです。耳や手の紫色はきれいになくなっていました。おかしいです。元気になりません。神官は驚きます。そして気がつき ました。

「こ、これは。私の力の及ぶところではありません」
 徳の高い、偉い司祭様でないと、治せないと言うのです。お父さんもお母さんもびっくりです。精霊使いの人たちも驚きました。
 いよいよもって、ミーシャの容態が悪くなりました。なんとか生きながらえてほしいです。精霊使いのお姉さんは生命の精霊に働きかけ、その命の炎を消さぬ ようお願いします。何度も何度もお願いします。

 お姉さんの願いが届いたのか、ミーシャはうっすらと目を開けました。生命の精霊が元気になってきたのです。
 お父さんとお母さんがミーシャをのぞき込んでいます。その顔を見て、ミーシャは口元だけ笑いました。

「……ただいま」

 ミーシャは帰宅の挨拶を言いました。ミーシャは家に帰ってきたのです。帰ってこられたのです。お父さんもお母さんも喜んで「うんうん、お帰り」と涙目で 答えました。
 でも、ミーシャはすぐに目を閉じてしまいます。
 お姉さんが慌てます。精霊に呼びかける言葉で何か叫んでいます。様子が変です。

 その異変を感じ取ったお父さんとお母さんが、ミーシャを容態を確認します。ミーシャが息をしていません。心臓の音も聞こえません。
 お父さんとお母さんは泣き出しました。お爺ちゃんもお婆ちゃんも曾爺ちゃんも曾婆ちゃんも泣きました。親族みんなで泣きました。ミーシャは最後の言葉を 告げると、死んでしまったのです。

 泣いても泣いても涙が止まりません。
 どうしてミーシャは死んでしまったのでしょうか? 何故リーネは死ななければならなかったのでしょうか?
 愛する娘たちを失ったお父さんたちは、目の前の現実を受け止められません。何度も何度も神様に問いかけます。答えはありません。
 その日は一日中泣いて過ごしました。

 次の日、西の山の麓にミーシャとリーネの墓が作られました。
 二人がいつまでも一緒で遊べるように、大好きな山で駆け回れるようにと。





  


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