後 日談
( 2003/02/26)
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作者
Maki
登場キャラクター
バウマー他
バウマーが河原の土手を登ると、その先にラスがいた。
「若手の指導とは熱心だな、先生さん」
皮肉めいた口調で声を投げかけてきた。
バウマーはザッシュとのやりとりを見られていたことに気がつき、悪態をつく。しばし逡巡したのち口を開く。
「ふん、ああしておけば、そのうち俺様の前衛を任せられるやもしれんでな」
ちらりとザッシュの方を振り返り、更に続ける。
「先行投資だ。貴様のようにいろはを教えに骨折る気はねぇよ」
ラスの目を見て口の端を上げて笑う。そして用件は済んだとばかり、ラスの脇をすり抜けて向こうへと歩き出す。
「待てよコラっ」
「用事があるんでまた今度にしておけや」
ラスの制止にバウマーは無警戒に背を見せたまま手を挙げひらひらとさせる。
「何が用事だ、笑わせる。指導している暇あんじゃねぇかっと……」
用事の言葉で思い出す。彼もまた用事を抱えていたのだ。目的の方向はバウマーと逆だ。ラスの存在など気にする様子もなく歩き去ったバウマーの背をもう一 度見てから、彼も歩き出した。
バウマーが買い物に着いた先は、精選香草堂本舗と看板がけられた店である。店番をするのは草原妖精で、彼の来店に特に目立った対応をすることもなくい る。
あれこれと必要な薬草や、魔法薬を訪ね代価を払う。彼の言う難解な専門用語にも的確に答え、バウマーを苛立たせることはなかった。
品物を受け取ったあと、奥から一人の女性がしゃなりと出てきた。
アーヴィディアであった。彼女とは酒場で一度言葉を交わしたことがある。そのとき店を構えていることを話題にし、「必要な物を提供できるかもしれないわ ね」と答えられたような気がする。言葉を正確に覚えてはいなかったが、半妖精ということと「uniqueね」と言われたことで印象づいていた。まさかその 店に自分が買いに来るとは夢にも思わなかったのである。
学院のような大きな組織を何かと気嫌うバウマーは薬の類を調達する場所を欲していた。馴染みとなりつつある店で聞いたところ、ここを紹介されたのだ。ど こか聞き覚えのあるような店の名だとは思ってはいたが、特に記憶を掘り起こすような手間はかけず、こうして買いに来てみたのだが……。
アーヴィディアと目が合い、一目散でその場を去る。彼女に笑われた気がしたからだ。もちろんそんなことはなく、バウマーの思いこみなのだが一人で勝手に 屈辱的な気分に陥っていた。
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