知 者と愚者(3)〜阿呆の盗賊〜
(2004/07/18)
|
MENU
|
HOME
|
作者
うゆま
登場キャラクター
ワーレン、アル
「平和だよなぁ」
とワーレンが言えば、
「そうですねぇ」
とアルが答える。
午後の日差しもやや凌ぎ易くなっただろうか。
橋の下に吹き込む風は、川の湿り気を適度に吸い爽やかさを齎す。
「これは、あれだな」
とワーレンが言えば、
「そうですね。あれですね」
とアルが答える。
かくして、恒例となりつつある、謎かけが始まった。
・・・
今日は簡潔にいこうと思う。
ある日、盗難事件の容疑者を尋問していた時の話さ。心証としては、容疑者の二人は限りなく黒かった。巣穴の存在も知らないような悪ガキだが、それだけにノ リでカッパライの一つや二つやりそうな連中だったのさ。
だが、そいつ等は、犯行時間に乗合馬車に乗っていたと言うんだ。しかも、その馬車の車輪が外れちまって、えらく難儀したってな。時間も余計にかかったし、 犯行時間に現場にいられるはずがないってさ。
調べてみると確かにその時間に乗り合い馬車の車輪脱落事故が発生していた。ただ、御者も車輪脱落現場の近くに居住する人々も客として、そいつらがいたかど うかは分からないって言うんだな、これが。
んで、仲間たちは、現場不在証明もあるし、初犯の軽犯罪だし、御咎め無しの無罪放免でも仕方ねぇって雰囲気になりだした。
仕方なく俺は、二人を別々に尋問して犯行を自供させたのさ。
・・・
問題:俺の尋問とは?
******************************************************************
回答
まあ、今回のは、ちょっと簡単だったか。
だが、いつも不正解じゃあ、やる気も無くすだろうからな。
ああ。サービス問題ってとこさ。
正解:外れた車輪の位置は?
・・・
「で、二人は、なんて答えたんです?」
とアルが言えば、
「右前輪と左の後輪さ」
とワーレンが答える。
「あははは、真逆ですね。仕入れた情報をきちんと活用するには、自分たちに役立つよう咀嚼しとかないといけないって教訓でしょうか」
「まあ、そういうこった。奴らも車輪脱落事故の話題を仕入れた時にはラッキーだと思ったんだろうがな」
「チャ・ザ神は盗みを禁じておいでですからねぇ。そんな人に幸運を齎したりは、しないでしょう」
アルが苦笑しながら言う。その台詞を受けてワーレンは“にんまり”と続けた。
「チャ・ザ神と言えば、小耳に挿んだんだが……最近、その神官戦士にご執心だとかって噂だな、アル?」
「えっ……」
なんのことはない。サービス問題などと言いつつ、結局、その話題を振る為の前振りだったのである。
オランは今日も平和だった。
(C) 2004
グ ループSNE
. All Rights Reserved.
(C) 2004 きままに亭運営委員会. All Rights Reserved.