きままに亭　エピソード

知者と愚者(４)～果て無き力自慢～(2004/07/18)

作者

U-1

登場キャラクター

ワーレン、アル

「平和だよなぁ」
　と衛視が言うと、
「そうですねぇ」
　と楽師が答える。
　衛視の名前はワーレン。衛視としては珍しく穴熊の技能を併せ持つ男だ。
　楽師の名前はアル。まだ若い……ということも無いが、優秀な……かどうかも定かではない。
　ともかく、そんな二人が晴れた午後にいつものように橋の下で平和を謳歌していた。

「ふと気になったんだがな、アル」
　と衛視が言うと、
「奇遇ですね、ワーレンさん。実はボクも気になってる事があるんです」
　と楽師が答える。
「「いつ仕事をしてる」」「んだ？」
　　　　　　　　　　　　　　「んです？」
　二人は揃って顔を見合わせる。
「馬鹿なことを聞くなよ！俺は今だって仕事中だ！橋から身投げするような人間がいないかとか、死体が川を流れてこないかとか、そういう警戒をしてるに決まってるだろう！」
「ボクだって仕事してますよ。いえね。今は師の奥さんのお食事時なんです。ええ。ですから、いつもいつも御馳走になってばかりじゃ悪いんで、その間、時間を潰してるんですよ」

「・・・」
「・・・」
「へ、平和だよなぁ」
「そ、そうですねぇ」
　教訓：コボルトの巣穴の銀は腐ってる（余計な事を追求しても徒労に終わるだけ）

・・・

まあ、なんだ。先輩冒険者として後輩の成長を確かめるのも立派な仕事さ。
じゃなきゃ、こないだの事件みたいに結局、衛視が出張ることにもつながるしな。
というわけで、問題だ。

先に言っておくぞ。今回の問題は、かなり奥が深いからな。覚悟しろよ。
ちなみに言うとだ。今回の問題は最初に行った通り、先輩冒険者としてのもんだ。衛視って事や街中で起こる人同士の揉め事は一旦忘れろ。まあ、本質的には同じ事なんで、参考にはなるだろうがな。

問題：次の魔物たちが、敵わない魔物を４文字で答えよ。それぞれの正解は別の魔物だが、言葉にすると同じになるようにな。

１.ドラゴン
２.デーモン
３.巨人

さて、アル。お前さんに解けるかな？

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回答

やっぱり、お前さんには、難し過ぎたようだな。
いや、こいつは知識というより経験の問題だからなぁ。
さてと解答だ。

正解：「同族の雌」

・・・

「ワーレンさん……それって……えっと、何かあったんですか？」
　と楽師が言うと
「いや、まあ、なんだ。人生って色々大変だってことさ」
　と衛視が答える。無論、遠くを見ながら。

……あえて多くは語るまい。オランは今日も平和なのだから……。