警告 |
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バスティアン(バス) [ 2001/09/25 2:49:05 ] |
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| 混雑した店の中を、空いているテーブルを捜してうろついていると、 15歳くらいの少女が手招きしていた。 ありがたくご招待されようと足を踏み出すと、するりと肉感的な女性が側に寄って来た。
…この女の人は、確か…娼館で見かけた事がある。 カミラムと言ったかな…、娼館の主人と何か話していた人だ。
するともう一人、長く艶やかな髭を蓄えた初老の戦士も席に付き、 暫くは他愛も無い雑談をしていたのだが、いつしか静かにカミラムがその身の毒を滲ませて来た。
……なるほど、この女性はギルドの…。
先日前、娼館の女主人ディローズから聞いた事が思い出された。 その時に聞いた情報とカミラムの態度が一つの答えを導き出した。
…つまりカミラムの方の派閥と別の方の派閥が歓楽街の覇権争いをしている。 そして、私が下町で媚薬を捌いている事がカミラムの方の派閥は気に食わないらしい。
「…あんたの繋ぎが消えた訳をよく考えるこったね」 そういって消えて行ったカミラム。 ひしひしと身の危険を感じるが、何故か心は冷静だった。 相手に優しい視線を送る余裕すらあった。
…どうにかして折り合いをつけないと、いけないな。 鞍替えするなら、カミラムの派閥に上納金を払ってもいい…が、今はまだ情報が足りない。 もう少し様子を見て行動するにこした事はなさそうだ。
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娼婦エイミー |
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バスティアン(バス) [ 2001/09/27 0:52:40 ] |
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| 顧客先(娼館)での情報集めも、だんだんと意味のない事の様に思えてきた。 …まったく相手が掴めない。 カミラムの背後にいる人物どころか、カミラム自身の情報すらあやふやだった。 以前、カミラムと話していた館の主も詳しい事は分からないの一点張り。 まあ、裏にギルドがいるわけだから、うかつな事は話せないのは分かるんだけどねぇ…。
こんな時、盗賊仲間がいてくれると手っ取り早いのだけど、 …目下の所、心を許せる様な仲間はいない。
「行き詰まったなぁ…、一人で出来る事にはやはり限界が…」 諦めるかと思った、その時、一人の人物の存在が閃いた。 蘭花の館の娼婦、エイミー。 カミラムとの雑談の中で、ポロリと話しにのぼった女。 話の中ではカミラムのおもちゃといった印象があったが、 …女同士の関係は奥が深いものである。
「当たってみるか…」 どんな娼婦でも虜にする媚薬を数種類、懐に忍ばせ、 蘭花の館に向かって歩き始めた。
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裏にいた人物 |
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バスティアン(バス) [ 2001/09/27 1:34:37 ] |
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| シーツの上に小さな身体を丸めて震えている少女、エイミーに 私は優しく語りかけた。 「ねぇ、聞こえるかい?、かわいいエイミー、…私を助けて欲しい」 カタカタと震える少女は私の方を向くと、カクカクと頷いた。 この少女には先ほど、集種類の即効性の媚薬をブレンドして飲ませている。 媚薬が持つ、魅了の精霊魔法に近い効果が、この少女の意思と身体の自由を奪っていた。 「寒いのかいエイミー、さぁ、暖めてあげる、…落ち着いたかい?」 腕の中の少女は震えながらも、うっとりと、しなだれかかり頬を胸に寄せてきた。 「…じゃあ、話してくれないか、かわいいエイミー、 …君はカミラムという女性を知っているだろう…?」
「……なんて事だ、カラミムの裏にいたのはディローズさんか!」 彼女から得られた情報は微々たる物だったが、 その中から得られた唯一の収穫だった。 エイミーの額に軽くくちづけし、媚薬を中和させる気付けを飲ませて眠らせると、 私はベッドに腰を下ろして考え込む事になった。 カミラムがディローズさんの使いだとすると、その後ろにいるのは、 彼女の愛人であるギルド幹部、…つまり私がせっせと上納金を納めている相手だ。 何が彼の気に触ったかは分からないが…、 問答無用で殺されないですんだのは良かった。 金だけ戴いて殺すのは彼の矜持に反するのかも知れない。 …それでこんな回りくどい事をしたのか。
「とにかく、今は従うしか手は無いみたいだ…」
その夜、カミラムに会う為に気ままに亭へと足を運んだ。 |
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陰霞 |
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カミラム [ 2001/09/27 10:30:53 ] |
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| (とある一室の壁にもたれ、腕を組みつつ思案) エイミー、悪いねぇ。あんたは可愛い娘だけど、ちょいとばかり意思ってもんが弱かったんさぁ。 そう、こうして盗み聞きされる程度には信用がないってことよなぁ。
・・・・バスティアン・マルゾ、か。(耳はそばだてつつ、手元の羊皮紙を見据える) 魔術師・・・・学院と繋がりのある人間は厄介よぉ・・・な。だけどさすがにこの所業は困ったものさぁ。 警告もあまり役に立っていないようだしねぇ。好奇心が猫を殺すと分かっているだろうに。
さて、どうするね”虹色の薔薇”? アタシよりも、この件はアンタの領分さぁ。 ・・・・あん? ああ、確かにエイミーは可愛いさね。だが、こいつは公私の「公」だろう?(にや) アタシは只の浮き草よぉ。月の夜に只一度だけ咲く華をつけた、ねぇ。
そうかい、分かったよ。それじゃ、少し尾けさせてもらうさね。 (隣の扉が開く音を聞きつけ、静かに部屋を出る) |
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魂の簒奪者 |
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バスティアン(バス) [ 2001/09/28 2:44:52 ] |
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| 命を狙われると涙を流すエイミーを寝かしつけ(魔法によって)、 今日も気ままに亭でカミラムを待つ。
ノインという男と話し始めた時、カミラムが現れた。 込み入った話になってノインが席を離れる。 カミラムは既にこちらの情報は調べ尽くしている様だった。 以前の余裕など無い、猫が弄ぶ様に私を笑う。
こちらの手札が無くなった時、相手が用件を言った。 媚薬を流す事を止めること。 こちらの好奇心からエイミーの身の危険を案じていたが、元から殺す気は無かった様だった。
そして彼女はコインを取り出した。 私の命をこれで決めるつもりだった。 私は表にかけた、しかしコインは落ちなかった。 カミラムが空中で受けとめたからだ。
…結果として、目の前の妖艶な美女に私の魂は奪われた。
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